ドイツでの新しいカーシェアリングサービス
フリードリッヒスハーフェンとボーデン湖(筆者撮影) |
ツェッペリン博物館で展示されている飛行船の模型(筆者撮影) |
ヨーロッパで港町と言えば、ヴェネツィアやハンブルクなどの地中海や大きな河川に面したところが多くて内陸にあるようなイメージはなかなか思い浮かばないが、ちょっとした「穴場」のような港町がある。
ドイツ南部にボーデン湖を挟んでオーストリアおよびスイスと国境を接する人口約6万人のFriedrichshafen(フリードリッヒスハーフェン)という小さな港町がある。この地名は英語では“Frederick's harbor”という意味で、ヴュルテンベルク国王・フリードリヒ1世の名を冠して発足し、今年でちょうど200周年を迎えているそうだ。
ここは開けた地理条件を活かして飛行船発祥の地となり、ドイツ軍の重要な拠点となった。そのため、第二次世界大戦で連合軍の標的に遭い甚大な被害を受けたが、今ではサマーシーズンにヨットを楽しむ人たちが多く集まるリゾートな港町となっている。
この町で、ドイツテレコムが“T-City”という名称でICTを使って新しいサービスの実験を行っている。2007年から医療、教育、行政、交通、観光、ビジネスの分野で約30件ものプロジェクトが進められている。
ドイツも自動車大国であり、自動車とICTの融合による新しいサービスにも力が入っている。その一つにカーシェアリングがある。日本では、利用者が予約をして駐車場からクルマに乗って外回りをして戻り、その後に次の利用者が利用するという、レンタカーの短時間貸しのようなサービスが始まっている。
ドイツで取り組んでいるのは、市民タクシーのような、いわゆる「相乗り」サービスだ。クルマには通信機能付きのカーナビがインストールされており、乗客はGPS付きのスマートフォンを持っている。このクルマと乗客をつなぐシステムが、交通状況をリアルタイムで分析して、乗客の希望ルートに合いそうなクルマを紹介する。それぞれのクルマの乗車単価(1kmいくら)も表示されているので、乗客は料金を比べてクルマを選ぶことができる。ドライバーにとっても、目的地に行く途中で「相乗り」する人が見つかれば、少々ガソリン代が戻ってくる感じだ。
このようなサービスの普及が進めば、交通渋滞の緩和、CO2排出量の削減、交通費の節約などのメリットがもたらされ、自動車社会でのコミュニケーションも豊かになるのではないだろうか。
2011/6/30 09:00