広辞苑収録でこの価格はオトクすぎる? シャープの電子辞書


シャープの電子辞書「PW-AM700」。2009年8月に発売、現在は1万円台前半で購入できる

 齢70を越える筆者の母親がラジオショッピングに影響され、電子辞書を買いたいと言いだした。筆者も品定めを頼まれ、店頭で色々比較検討した結果、シャープの「PW-AM700」を購入した。

 量販店などの電子辞書コーナーを一度でも見たことがある人ならご存じだろうが、それはそれは、製品のバリエーションが多い。最近は3~4万円前後のカラー液晶・手書き入力パネル搭載モデルの販売に各社とも注力しているようだが、ケータイのショートメール機能をギリギリ使えるくらいの母親にとっては、あきらかにオーバースペック。特に根拠はないのだが、「そもそもモノクロ液晶で十分だし、できればコストを1万円前後に抑えたい」と考え、PW-AM700の購入に至ったわけだ。

 この条件を満たす製品となると、機種はかなり絞り込まれる。PW-AM700を最終的にチョイスする上で重要視したのは、オーソドックスな外観、単4電池2本で約120時間動作するといったあたり。また、母親自身がケータイのテンキー入力に次ぐ習熟ステップとしてQWERTY配列に興味を示していたので、50音キーボードのPW-AM500は除外した。

 価格の面では、嬉しい誤算もあった。PW-AM700は結果的に1万1800円(10%ポイント還元)で購入したのだが、この価格でも、きちんと広辞苑の最新版(2008年発売の第六版)が収録されているのだ。紙版の広辞苑は8400円、DVD-ROM版にいたっては1万500円だ。さらにPW-AM700には英和・和英辞書やトラベル会話集なども入っている。紙と液晶画面の製品を比較するのは筋違いかもしれないが、それでもコストパフォーマンスは高いといえるだろう。

 ただ、調べてみると、広辞苑はどんな価格帯の電子辞書でもほぼ当たり前のように収録されているようだ。実際には筆者が購入したモデルよりもっと安価なモデルもある。今までは「なぜみんな電子辞書を買うの? ケータイかスマホでネット検索すればいいじゃない」と思っていたが、なるほどこの価格なら買うわけだと素直に納得してしまった。

QWERTY配列のキーボード。キートップは、カラーリングされているもの含めてすべてゴム素材メイン画面。広辞苑、ジーニアス英和辞典など30種類のコンテンツを収録

 

 辞書の機能については、必要にして十分。複数辞書の串刺し検索に対応しているし、説明文の中にある単語を範囲選択してさらに検索する機能もある。辞書の追加こそサポートされていないが、個人的にはこのシンプルさがちょうどいい。

 このほか、音声の再生にも対応。英和辞書、トラベル英会話集などでは発音の確認ができる。動物の鳴き声、クラシック音楽の印象的なフレーズなども楽しめる。本体にはスピーカーが内蔵され、パッケージに付属のイヤホンで聞くことも可能だ。電源をオフにする直前の画面に復帰できるレジューム機能や、オートパワーオフといった電子機器ならではのオプションもきちんとある。

検索履歴、図版の表示、音声再生など一通りの機能を搭載スピーカーに加え、イヤホン端子も備えている

 

 一方で、漢字入力(変換)という概念が、そもそもない点にはちょっと驚いた。漢字の表示は当然行われているわけだが、キーボードから入力するのは基本的にひらがな(読み仮名)、アルファベット、数字だけ。しかも検索語の入力欄にあわせて、ひらがなとアルファベットどちらが入力されるか自動で切り替わるので、入力モードを変更する必要すらない。

 こういう影響もあってか、PW-AM700にはスケジューラーやメモ帳、住所録的な機能は搭載されていない。まさに電子辞書専用設計となっている。PCやケータイを使いこんでいない人にとって、この割り切りはむしろ親切なはずだ。ちなみに、電卓機能は内蔵されている。

 PW-AM700は発売から1年半以上経過した製品ではあるが、その分価格も手ごろ。時節柄、母の日、父の日の進物に良さそうだ。PCに抵抗感を持っている中高年層がキーボード配列に慣れるための教材としても使えるだろう。辞書を買いたくても分厚さゆえに収納場所がないというPC上級者にもおすすめしたい。

 

製品名製造元購入価格
PW-AM700シャープ1万1800円

 

 




(森田 秀一)

2011/5/11 06:00