スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

手書き入力がイケてるREGZA Tablet AT703

手書き入力がイケてるREGZA Tablet AT703

 2013年の6月下旬に発売された「デジタルペン対応Androidタブレット」こと東芝「REGZA Tablet AT703」(以下、AT703)。手書き入力でイロイロできるらしいとのことで興味津々だったので、メーカーから実機を借りて試してみた。

東芝の「REGZA Tablet AT703」。Android 4.2搭載タブレットで、付属のデジタルペンによる手書き入力に対応する。デジタルペンは1024段階の筆圧感知が可能。本体カバーにもなるいBluetoothキーボードが不属する。実勢価格は8万円前後

 デジタルペンで手書きできる端末は何台か使っているが、マイクロソフトの「Surface Pro」を使って「やっぱり大きめの画面に手書きできると楽しいなあ」と再認識。AT703は10.1型ディスプレイを搭載し、かつ、デジタルペン対応(デジタイザ内蔵)。「これもきっとイイ感じで使える端末なんだろうな~」てな興味で借りてみたのであった。

 以降、AT703の手書き関連機能および使用感をレポートしてみたいが、俺的結論から言えば「かなりイケてる手書き入力対応端末」だと感じた。専用アプリによる手書き文字のメモ書きが快適で、さらにその手書き文字を認識してテキスト化したり、手書き文字を検索タグに使えたり、手書き文字でウェブ検索を行えたり。どの機能もなかなかキてるのであり、仕事に使えそう。「コレかなりいいな、買っちゃおうかな」みたいな。「でも高いんスよね~」的に迷い中と言えよう。

AT703はこんなタブレット

 まずはAT703の概要から。前述のとおりAndroid 4.2搭載の10.1型タブレットで、画面の解像度はWQXGA(2560×1600ドット)。タブレットとしてはGoogleの「Nexus 10」と肩を並べる解像度の高さがある。

AT703の画面解像度は2560×1600ドット。細かな文字も精細に表示される。右はスクリーンショットのドットバイドット表示
この解像度の高さはウェブサイト閲覧のときにとくに威力を発揮する。文字などが滑らかで読みやすいのだ。右はドットバイドット表示

 AT703の本体サイズは、約幅260.7×奥行き178.9×厚み10.5mmで、重量は約671g。このサイズのタブレットとしては若干重めで厚めな感じ。立ったまま片手で使うってのはちょっと難しい質量で、基本的には腰を落ち着けて使う端末ですな。

 また、前述のとおり、カバーにもなるBluetoothキーボードが付属する。そしてキーボードと合体したときは、サイズが約幅264.7×奥行き184.3×厚み19.8mmで、質量は約1200gっていうか約1.2kgとなる。わりと嵩張りがちで重い端末になってしまう。

 ただ、タブレット端末としてはまずまずゴージャスな仕様で、CPUにクアッドコアのTegra 4(1.8GHz駆動)を搭載し、メモリは2GB、内蔵ストレージは32GBある。実際触れてみると、全体的にとてもサクサク動いて快適だ。microSDカードスロットも備えているので、大容量ファイルの携帯&利用も現実的だと思う。

 ほか、無線LANはIEEE802.11a/b/g/nと最新のIEEE802.11ac(ドラフト)にも対応し、Bluetoothも従来のBluetoothと最新(バージョン4.0)で使える低消費電力モード「Bluetooth Low Energy(LE)」に両対応。試してみたら、iPad mini Wi-Fi + CellulaモデルをホストとしたBluetoothテザリングも使えた。そしてGPSモジュールもしっかり搭載。

OSはAndroid 4.2.1。iPad mini Wi-Fi + Cellulaモデルをテザリングのホストとし、AT703をBluetoothテザリングのクライアントとして使えた。GPSモジュールも搭載しているので地図など現在位置情報活用派にも嬉しい

 AT703、全部入り感がありかつ、デジタルペン対応。でも実勢価格8万円前後。デジタイザとして魅力を感じられれば、ほかの部分もゴージャスなので、まあまあ納得しつつ購入できる端末かもしれない。

ペンはどーなのか?

 さて、何はともあれデジタルペンの使用感だ。結論から言ってしまえば、かなり快適に使えるペンですな。ちょっと軽い気がするが、AT703への書き込みや操作を気持ちよく行える。

付属のデジタルペン。1024段階の筆圧を検知するセンサーを内蔵し、筆圧を再現した線を書ける。ペン先の反対側は消しゴム機能を持つボタンがあり、ペン横側のボタンは使う筆記具の切り替えボタンとして使える。質量は12g(実測値)

 書いたときの感触は、普通一般のデジタルペンよりもほんの少し抵抗がある感じ。普通のデジタルペンのペン先はポリプロピレンか何かのやや硬質な樹脂だが、AT703付属デジタルペンのペン先はカサカサした感じの素材。これにより独自の「一般の筆記具に少し近い書き味」があるのだと思う。

 ただ、紙に筆記具で書いたような書き味としては、ワコムの「Bamboo Stylus feel」や「Bamboo Stylus feel carbon」のほうが好感触。これらデジタルペンにソフトタイプのペン芯を装着してAT703を使うと、より違和感の少ない書き味になる。

左から、一般的なデジタルペン、AT703付属のデジタルペン、ワコムの「Bamboo Stylus feel carbon」。一般的なデジタルペンだと書くときに滑りすぎる感じだが、AT703付属のデジタルペンだと少々抵抗感があって書き味が良い。ワコムの「Bamboo Stylus feel carbon」にソフトタイプのペン芯を付けて書くと、さらに自然な描き味になる

 なお、AT703は、デジタイザ内蔵タブレットとしてはワコムの「Wacom feel IT technologies」に対応したタブレットだと思われる。てか、AT703でほかの「Wacom feel IT technologies」対応ペン各種が使えた。「ThinkPad X60/X61/W700 タブレット・デジタイザー・ペン(41U3143)」や前述のワコムのデジタルペンでAT703を使えましたヨ♪

TruNoteアプリがイイ♪

 AT703では、前述の各種デジタルペンを使って、手書き対応アプリに書き込んだり、指代わりに使ってUIを操作したりできる。で、使っていて非常にイイと感じたのが、プリインストールの「TruNote」アプリだ。

 TruNoteは本物のノートの使用感を模した手書きノートアプリで、「デジタルペンで書き、指でページをめくり、またデジタルペンで書く」という紙のノートに近い使い方ができる。アプリ全体が実際の筆記具や机などを模したUIになっていて、そのあたりは若干使いにくいものの、「そういうもの」と割り切ってしまえば快適&実用的に利用できる。

 また、手書きを「こんなふうにも利用できるのか!!」という、ちょっと驚きの機能も備えている。以下、スクリーンショットとともに見ていこう。

TruNoteの表示例。トップ画面は机上を模したUIで、そこからノートを選び、ページをめくり、書き込んだりしていく。ページ一覧表示などもできる
付属のデジタルペンなどを使い、筆圧を伴った書き込みができる。ノートをメジャーなファイルフォーマットへエクスポートしたり、画像ファイルをインポートしてその上に書き込むこともできる
もちろんペンのカスタマイズにも対応する。書き込んだ筆跡はベクターデータ(ドローデータ)で、位置を動かしたり回転させたりサイズを変えたりすることも自由だ
書き込んだ文字をテキスト化することもできる。ページをそのまま各種ファイルへとエクスポートしつつテキスト化するので、ノートの内容を様々なアプリで利用できることになる。文字認識精度はなかなか高く、十分実用レベル
表組みを清書するように文字/図形を認識することもできる。もちろん、書いた文字によっては誤認識することもある。表組みの外の文字は図形として認識されてしまうのかもしれない
手書きでの検索が非常にユニーク。検索キーワードを手書きして検索でき、書いたキーワードと同様のカタチの手書き文字などを探し出してくるようだ。とても実用的
手書き文字を検索キーワードとしてのウェブ検索も行える。ノート書きしつつの調べ物には非常に役立つ
トップ画面から各種設定を行える。デジタルペンのボタン機能を有効/無効にしたり、Androidのナビゲーションキーの位置をずらして誤って手で触れにくくしたりできる

 てな感じで、意外なほど多機能。多機能ではあるが、どの機能もシンプルに使えて実用的だと感じられる。個人的には「このアプリをガシガシ使ってメモ類を全てデジタル化するためにAT703を買うのもありかも!!」とか軽く興奮した。慣れてしまえば使い勝手が良いし、手書きへの追従性も高く書き込みを取りこぼしたりしにくいし、このテのアプリとしては非常に秀逸な部類に入ると思う。

 ただ、若干の使いにくさもある。TruNoteは、基本的にトップ画面となる「机上を模した表示」から使っていくが、操作のたびにリアルさ演出のアニメーションが行われたり、そのために選択対象の切り替えがクイックでなかったり、なんかこー「無駄な演出がイヤ」という感じ。まあ慣れちゃいますけどネ。

 それと、本体が横向きでも縦向きでも書き込みができるが、本体を書き込んだときの向きにしてページを表示しないと、メモ全体が表示されなかったりする。本体縦向きで書いたメモは、表示も本体立て向きで、と統一しないと閲覧できないエリアが発生してしまう。これはちょっとバグっぽい動作なので、ぜひ改善して欲しいところ。

 あと、ノートの保存やエクスポートには若干の時間がかかる。手書き文字認識などをするためだと思うが、書き込み自体は非常にスムーズに行えるので、その保存や変換の時間に「ちょっと待たされる」という感じになり、作業がところどころで一瞬ストップするという小さなストレスが生じる。まあでも、頻繁に待たされるわけでもないので、大した支障ではない。

 TruNoteアプリは、お絵描きにも使えるとは思う。が、ペン種が多くなかったり、選べる色数が10種類固定であるなど、「最初からお絵描きは想定していないアプリ」のように思われる。

 また、AT703にはとくに「お絵描きのためのアプリ」は入っていないようだ。どちらかと言えばビジネス指向の手書きタブレットというイメージ。そしてビジネス用途には後述の「TruCapture」アプリも含めて非常に実用性が高いと感じられる。

 でもせっかく1024段階の筆圧対応手書きタブレットなので、お絵描きアプリとして「SketchBook Mobile」アプリをインストールして試してみた。結果、フツーに快適に使えた。10.1インチの画面に追従性の高いペン&筆圧で描いていけるのは愉快ですな♪ お絵描きにAT703を使いたいという方も、ぜひ一度チェックしてみてほしい。

ほかにもイロイロ便利なAT703

 AT703にはほかにもイロイロと便利な機能や使い勝手がある。たとえば「TruCapture」アプリ。これは、ホワイトボードや紙に書かれた内容を内蔵カメラで撮影してデータ化(PDF、JPEG)できるアプリで、斜めから撮影したことにより原稿が台形になってしまっても自動/手動補正できたりする。これも写真で見た方が把握しやすいので、以下、スクリーンショットとともに見ていこう。

「TruCapture」アプリの表示例。ホワイトボードや紙資料などを撮影して取り込むアプリですな。ホワイトボードがないのでPCのディスプレイを斜め横から撮影してみた。撮影後、歪みが自動的に補正される。が、自動補正でもまだ少々歪んでいたので、編集モードに入って手動で補正した
手動補正でほぼ正しい比率になった。保存すると内容をJPEGファイルなどで閲覧できるようになる。ドットバイドットで表示すると、細部まで読むことができた
名刺を撮影してみた。が、自動補正はされなかった。ので、手動補正。縦横の比率が微妙に変わったように見えるが、名刺の内容を完璧に読み取れる解像度がある
卓上カレンダーを撮ってみた。これは自動補正された。それぞれの予定(書き込み)がしっかり読み取れる画像として保存できた

 こういう、台形を長方形などに補正してくれる単独のアプリはいろいろあるが、TruCaptureの場合はその手軽さが特徴的かも。アプリを起動してホワイトボードや書類を撮る程度で、おおむね自動補正されて可読性が十分高い電子ドキュメントに変換してくれる。手動の補正も容易であり、デジタルペンを使うとさらに快適に手動補正できる。

 また、10.1型のディスプレイでありかつ非常に高解像度なので、こういった電子ドキュメントの閲覧も快適。要はドキュメントの部分拡大をせずとも問題無く閲覧できることが多いので、スマホで同等の機能を使うよりも実用性が高いと思われる。

 実際に使ってみると、TruCaptureを簡易スキャナ的に使い、取り込んだ内容をさらに前述のTruNoteで読み込んで手書きを加えたりすると、非常にイイ感じだったりする。情報が書かれたカード類をサッと撮影してコメントを付加して誰かにメール添付で送るようなことも容易だしクイック。いろいろ活用できそうである。

 それから、最後になってしまったが、付属のカバー兼用Bluetoothキーボードもなかなか快適。外見的にはコンパクトながらも、キーサイズはキーピッチはフルキーボードに近いサイズがあり、またアイソレーションキーボードなので意外なほど快適に打鍵できる。

 ちなみにコレ、キーボードとしては純粋なBluetoothキーボード。AT703と合体してAT703の台座にはなるものの、AT703とキーボードの間は電気的に直接接続されるわけではなく、無線接続となる。キーボード左側に電源スイッチがあり、必要なときのみオンにして使える。電源は内蔵バッテリーで、USB充電して使う。

付属のBluetoothキーボード。AT703をセットすればノートPCのようなスタイルで使える。キー配列は記号類が日本語配列キーボードに近いもので、キーピッチはフルサイズキーボードに近い余裕がある
携帯時はAT703のハードカバーとして機能する。キーボード左上にMicro USBポート(充電用)、電源スイッチ、Bluetoothボタンがある

 てな感じのREGZA Tablet AT703。やっぱり結局、実勢価格が8万円前後であることと、デジタイザ/デジタルペンの利便、これらをどう考えるかですな。俺とかかなり欲しい気分。これを取材や打ち合わせに使いた~い♪ みたいな。買おうかナ。

 AT703、まずは速くて高精細で贅沢な装備を持つAndroidタブレット。そしてさらに、筆圧対応のデジタルペンを快適に使える。また、デジタルペンを活かすためのアプリや機能もしっかり備える。そのあたりまで全部含めて価値として感じられば、高価ではあるものの、満足度の高いデジタルペン対応Androidタブレットになりそうだ。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。