iPhone 5を1カ月くらい使ってみて

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


iPhone 5を1カ月くらい使ってみて

 2012年9月21日に発売されたアップルの「iPhone 5」。予約開始日に予約しての購入だが、な~んかかなり待たされて、2012年10月4日になってやっと購入できた。au版っす。購入から約1カ月使ったので、今回はその実使用感などを書いてみたい。

アップルの「iPhone 5」。auとソフトバンクモバイルから発売された。カラーは写真のホワイト&シルバーのほか、ブラック&スレートがある。

 iPhone 5について、全体的に満足している。iPhone 4Sからの機種変更というカタチで購入したが、「iPhone 5に換えて良かった?」と問われたら「良かった~♪」てなノリで答えると思う。

 iPhone 4Sと比べると、本体は薄め軽めになり、手によくフィットすると感じた。画面もちょっと広くなって、表示できる情報量が増えたり、置けるアイコンが増えたりして快適感UP。プロセッサが高速になったこともあって、操作全体でサクサク感がかなり増した。

 それから、au版にしたこともあり、LTEでのデータ通信が非常に快適。LTEエリア内のiPhone 5は激快適なことが多く、さらにテザリングを使ってほかの端末をネット接続すると、LTEとテザリングのためだけにiPhone 5を買うのもアリだなァとかオカシなことを考えてしまうほどだ。

 ほか、iOS絡みで、細かいところではあるが良くなったところが多い。着実に進化している感じで、全体的に右肩上がりのブラッシュアップがなされたスマートフォンだと感じられる。

 ……んですけど、残念な点、ヤな点も少々ある。ので、手放しでオススメできるわけではない。ともあれ以降、iPhone 5の使用感などについてレポートしてみたい。


新マップに「アップル……大丈夫?」と思った

 まず、iPhone 5の残念な点からヤッちゃいましょう。美味しいところは後で、的な。

 最強にイヤでありかつ残念でありしかもガッデムだと思ったのが、内蔵アプリの「マップ」。従来のGoogleマップを利用したものから、新たに独自開発の地図アプリを搭載している。iPhone 5だけではなく、iOS 6を搭載するiOSデバイスはこの「新しい独自のマップ」アプリが内蔵されることになる。

 このアップル独自のマップアプリは、スゴいと言えばスゴい。非常にスムーズに拡大縮小および回転が行えたり、「Flyover」という「自由な方向から対象を立体的かつリアルに眺められる」機能が使えたりする。実際にこれらの機能を試すと、その速さや楽しさに驚ける。

iPhone 5に内蔵されているマップアプリ。iOS 6搭載デバイスに内蔵される「アップルが一から作り上げたマップ」で、iOS 6へのアップデートでも利用可能になる。スクロールや回転などのスムーズ感は快適。
マップの「3D」ボタンをタップすれば「Flyover」機能が使える。建物などが立体的に表示され、場所によっては非常にリアルな立体物が表示される。もちろん自由な角度から見ることができる

 高性能で扱いやすいマップアプリなのだが、地図の見せ方がよろしくない。ていうかこのマップアプリを地図として使おうとした途端、「えっあの、この地図っていうか地図風のコレ、ナニ!? アップル……大丈夫?」とかビックリしちゃいました。

 現在地を確認しつつ目的地まで向かったりするための地図としては、漠然としており、曖昧であり、ランドマークが僅少過ぎで、ハッキリ言って「実用性があまりない」のだ。しかも間違った情報も多々。

ランドマークや主要なポイントがあまり示されていない、漠然とした地図だ。韓国語や中国語の表示なども多い。存在しないランドマークがあったりもする

 このマップのデキに関しては、アップルのティム・クックCEOが謝罪したほどだ。ともかく、実用的ではないので、結局、ほかの地図アプリを探すハメに。従来の内蔵アプリのなかで「マップ」は非常に便利だったので、たいへんに残念である。

 ただ、考えてみれば、以前のマップアプリも地図として優れているわけではなかった。ご存知のとおり、以前のマップアプリは、Googleマップを表示するもので、地図サービスという点ではAndroid端末で使えるGoogleマップより機能面で劣っていた。

 そして、個人的な印象ではあるが、Googleマップ自体も微妙に日本人に不向きな感じ。地図アプリとして考えれば、たとえば「地図 Yahoo!ロコ」「地図マピオン」のほうが数段見やすいし使いやすいように感じる。ので、まあ、素直にそちらを使い始めた。

左から「Googleマップ」「地図 Yahoo!ロコ」「地図マピオン」。Googleマップは交差点名や橋名が表示されなかったりして、日本の地図としてはビミョーに不便だったりもする

 もうひとつ細かなところで、Dockコネクタ/ケーブルが、Lightningコネクタ/ケーブルに変わってしまったところ。iPhone 5は、iPhone 4/4Sから本体サイズも変更になったわけだが、専用コネクタ類も変更になったわけですな。

 こういったハードウェア形状やコネクタ形状の変更は、ぶちゃけた話、「これまで使ってきたアクセサリ類が流用できない」のが残念。まあ、販売台数が超多い端末なので、対応アクセサリは速攻で出てくるが、旧機種からの乗り換えユーザーとしてはやはり残念ですな。

 とりわけ、Lightningコネクタ/ケーブルに関しては、「Lightning USBケーブル」が1800円、「Lightning 30ピンアダプタ」が2800円、「Lightning Micro USBアダプタ」が1880円と、どれも高価。乗り換えユーザーにとっては「お金がかかる感じがするiPhone 5」なのであった。

左がiPhone 4Sまでで使えるDockケーブル、中央がiPhone 5で新たに採用されたLightningケーブル。コネクタ部分が全く異なるのでそのままでは互換性がない。右のアダプタを使えば、DockケーブルをLightningコネクタにつないで使うことができる

 ただ、Lightningコネクタ/ケーブルへと仕様変更されたこと自体は歓迎したい。というのは、Lightningコネクタは比較的に頑丈に思えるし、逆挿ししても問題がないから。従来のDockコネクタは挿抜時に軽くきしむし、逆挿しできない構造で、少々不安&不便であった。コレが解消されたので、まあ、いいかな、と。

 蛇足的に残念点を挙げれば、なんつーかこー、「うぉっ、iPhone 5、すげー!!」という強いインパクトが無かったこと。俺の場合、iPhoneは「3G」→「4」→「4S」→「5」と乗り換えてきた。

 思い返すと、「3G」のときは、まったく新しい端末が出てきたことが大きな衝撃だった。「4」のときはガラリと変わった形状や大幅に機能UPしたOSに喜べた。「4S」のときは端末自体よりもiCloudの利便が感動的だった。

 しかし、iPhone 5にはそういった「大きなインパクト」が感じられなくて残念。細かな部分では、確かに非常に良くなっていたりするiPhone 5だ。が、これを「保守的な進化」と捉えてしまうと、なーんかこー、ユーザーというよりファンとして、やはり寂しいものがある。


ハードウェア的な使用感

 iPhone 5を店頭で受け取った瞬間は、正直、「ん~持った感じはiPhone 4Sとあんまり変わんないな~」というものだった。が、この印象は1週間でガラリと変わり、1カ月でズギャーンと大変化した。

 サイズと質量は、iPhone 5が123.8×58.6×7.6mm/112g。iPhone 4Sが115.2×58.6×9.3mm/140g。見栄えもかなりソックリ。多くの人は恐らく、初見で「あんまり変わらないネ」と感じるだろう。

 だが1カ月程度iPhone 5をイジっていると、持ち比べた瞬間に「iPhone 5とiPhone 4Sは別モノ」と感じるようになる。ていうか、久々にiPhone 4Sを持ってみて「えっ、こんな重くてずんぐりしてたっけか!?」と驚いた。

 これは個人差があると思うが、俺的にはiPhone 5のサイズと重量、それからそれらのバランスは、非常に持ちやすく心地良く使えるものだと感じている。思い返すと、iPhone 4Sはやや落としやすい感じのホールド感だった。なんか重心が本体の上のほーにあるような感触。一方、iPhone 5にはそういう少々の不安感がない。ので、よりリラックスして使えるような印象がある。

 縦長になったiPhone 5だが、使用開始当初「上のほーのアイコンやボタンが遠くなって(片手使用状態では)押しにくいな」と感じていた。が、幅はiPhone 4Sと同じ。前述のように、落としちゃいそうで怖いという感が大幅に減っている。ので、手のひらの上でiPhone 5自体を少し移動させて画面上部のボタン類を親指で押している。縦長になった本体についても、大きな違和感は感じていない現在である。

 むしろ縦長画面になったことで利便が増した。まずは単純に一望できる情報量が増えたので、ウェブサイトなどの閲覧が快適になった。それから、ホーム画面に置けるアプリが「4×4個=16個」→「4×5個=20個」に増えたことや、フォルダに入れられるアプリが「4×3個=12個」→「4×4個=16個」に増えたことは、地味だが、かな~り便利。

 あと、これまた地味ですけど、iPhone 5(というかiOS 6)では、横位置にしたときのフリック入力のUIが変わった、のかな? 以前は、端末を横向きにしてフリック入力を使うと、ヤケにテンキーがデカくなって実用的じゃないという記憶があるが、iPhone 5で実用性が高い感じ。

本体を横向きにし、メモアプリやメールアプリでフリック入力を使っている様子。右親指でフリック、左親指で変換候補選びができ、もしかしたら縦位置より効率がイイ!?

 ただ、横位置だとちょっと文章が横に長くなり過ぎて使いにくかったりもする。また、iPhone 5の16:9というアスペクト比は、テキスト系の情報を横位置で閲覧したりする場合、左右が極端に広くて上下が極端に狭い印象となり、スマートフォン用アスペクト比としては全体的にあ~んまり使いやすいモンではないと思う。ともあれ、iOSの入力系って地味に進化してますな。……あとあと、漢字変換の利口さがUPしているように感じるのは俺だけ?


細かな進化が多々

 ドーンと大きな「インパクト」はないものの、iPhone 5は細々イロイロと良くなっている。使うほどに「あ~ココも良くなってるな~」と満足感が少しずつ増加する感じだ。

 たとえばカメラ機能。カメラ自体はiPhone 4Sとほぼ同じ800万画素のものだが、解像感が高く、発色も良好な印象を受ける。処理性能が上がったためか、連写速度はiPhone 5のほうが明らかに速い。アプリの起動も高速になっているので、より快適にカメラ機能を使えている。

 パノラマ撮影なんかもできますな。ムービー撮影中に静止画を撮影することもできるようになった。iPhoneのカメラ機能は、スマートフォンにおいては非常に使いやすいので、こういう進化は率直に嬉しい。

iPhone 5でパノラマ撮影機能を使ったところ。iPhone 5の指示に従ってカメラを被写体に向ければ、誰でも簡単に最大240度のパノラマ写真が撮影できる。

 ほかにもスピーカーがけっこーイイ音になってるとか、プロセッサが高速になったことでアプリ全般の起動が速くなったとか、アプリ間切り替えも速いとか、いろいろ良くなっているiPhone 5。

 薄くなって軽くなって(かなり)速くなったiPhone 5だが、バッテリーの保ちも悪くない。俺的な平日における使い方だと、5日くらいはフツーに保ちそうだ。

 また、朝5時から移動開始して、途中で新幹線で東京/神戸の往復を含んだ仕事中、たびたびiPhone 5を使い、当日夜12時前に帰宅したときのバッテリー残量は65%くらいだった。新幹線で移動中、おもしろがってマップで現在位置の移動を見たりもしていたが、意外に減らないという印象。日帰り出張なら予備バッテリー要らずかもしれない。


auのLTEがヒッジョーにイイ♪

 iPhone 5(au版)でサイコーにイイと感じているのは、LTEによるデータ通信。スタパブログにも書いたが「郊外でLTE圏内だともう爆速」で、3Gが「落ち葉がひらひら落ちてくる感覚」なら、LTEは「雹がズドンと落下する感じ」の体感速度、なのである。

 またテザリングも非常に快適。iPhone 5をWi-Fiアクセスポイントとして使えってWi-Fi機器をインターネット接続する機能ですな。たとえばiPhone 5のテザリングをONにすれば、Wi-Fiのみ対応のiPadやAndroid端末を、iPhone 5経由でインターネット接続できるというわけだ。

 で、このテザリングもLTEを利用しているので、非常に高速。「マジか!!」ってほど高速。iPhone 5のテザリングでNexus 7のGoogleマップを使ったりすると爆速であり、iPhone 5のマップ問題なんかどーでもよくなるほど痛快だと言えよう。ちなみに、速度はこんな感じ。

3G(左)、LTE(中央)、Wi-Fi(右)で通信速度を測定した結果。いつもと比べると、3Gがやや遅く、LTEはこんな感じで……えっ拙宅のWi-Fi、下りがLTEより遅い!? 上り速度がヘン!? みたいな。あくまでも参考値ということで

 都内でも試したが、多くのシチュエーションでまだまだ爆速のauのLTEおよびそれを使ったテザリング。現在のところユーザーがそれほど増えまくってはいないからか、LTEの帯域をたっぷり使えている感じだ。でも今後、LTEを使うユーザーが増えれば、その分、使える帯域が狭くなるわけで、そうなってきたときの通信速度は現在ほど速くなくなるかもしれない。

 なお、auのテザリングについては、ココで触れたとおり、「7GBの通信量制限」がある。ので、「自分が使うネット接続手段をiPhone 5のテザリングだけに集約させちゃえ~」的なコトは非現実的だと思われる。

 てな感じのiPhone 5。外見も中身も劇的な変化はしていないので、「なんか地味なバージョンアップ?」みたいな印象にはなる。のだが、使うとイイコトが多々ある。auのLTEテザリングまで含めると、非常に満足度が高いiPhone 5なのであった。iPhone 4や4Sユーザーはとくに、処理速度や表示、手に持った感じの違いを体感すべく、ショップで実機に触れてみてほしい。


2012/11/5 06:00