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第16回:PIAFSとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


スピードが速い・PHSを使ったデータ通信規格「PIAFS」

コンパクトさで人気の、NTTドコモ「P-in Conp@ct」。コンパクトフラッシュ Type II準拠のPHS通信カード
 PIAFS対応PHSを使ったデータ通信サービスは1997年4月からスタートし、3年以上たった今でも、最高64kbpsと速度の速さで人気のあるデータ通信方法です。携帯電話のデータ通信サービスですと、たとえばNTTドコモの行なっている「Dopa」での通信速度が最大28.8kbpsですから、倍以上のスピードでデータが転送できる、ということになります。

 よく、ノートPCなどを使ったモバイル通信用途などに使われていて、パソコンショップなどでもこのPIAFS対応のPHSデータ通信カードが何種類も販売されているはずです。

 元々、このPIAFSは、旧PHSインターネット・アクセス・フォーラム(現MITF??Mobile Internet Access Forum)で策定された規格で、「PIAF (Personal Handy System Internet Access Forum)標準(Standard)」という名前と由来のとおり、PHSを使ってさまざまなデータ転送を行なうために決められました。

 PHSを使ったデータ通信では、それまでそれまで主に使われていた「みなし音声通信方式」を使った場合最高で14.4kbps程度のデータ転送速度しか出せませんでしたが、このPIAFSでは32kbps(後の2.0版以降で64kbps)の速度をだすことができるようになったのです。

 現在、このPIAFSを使ったサービスは、PIAFS 2.1(ベストエフォート方式)方式を含むサービスをH"でDDIポケットが「αデータ64」という名称で、また、NTTドコモがPIAFS 2.0対応のものを「64Kデータ通信」という名前で行なっています。


PIAFSの仕組み

 それまでPHSでのデータ通信に使われていた、「みなし音声方式」ではPCから送るデジタルデータを、モデムにより音声信号に変換し、PHS電話機のヘッドホンジャックから音として送っていました。つまり、PHSにとっては、データを声とみなして、送っていたわけです。

 この方式には問題がいくつかありました。まず、もともとPHS自体がデジタル方式の無線通信を行なっているのにわざわざアナログ化してデータ転送の効率を落としてしまっていること。それから、もともとPHSは人の声を送るものとみなしているので、多少送られた音の音質が違ったり、音が間引かれていても「会話しにくいなぁ」と人間が思うくらいで、実用にはなっていました。しかし、コンピュータでは通信中にデータの化けてしまうことは大問題です。もし、プログラムなどのデータが1バイトでも化けてしまうと動きませんし、多くの場合はファイルの解凍もできなくなってしまうころからもそれがわかるでしょう。

 そこで、PHSがもともとデジタル方式であることに着目して、新しい通信方式が決められました。その仕組みはこうなっています。

 PHSは、人が声で会話する用途で使っているときも、端末から基地局まで声をデジタルデータにして、32kppsのスピードでやりとりしています。そして、さらにそこから有線のISDN通信網を使って声のデータを送っているのです。PIAFSでは、このデジタルデータのやりとりを、うまく利用してコンピュータのデータをやりとりしています。

 具体的には、PHSにつながっているコンピュータとPHSの間にPIAFS規格準拠データカードが入り、このモデムがデジタルデータをPHSに送るためのデータに通信で送られるデータに変換します。そして、PHS端末が電波に乗せて送り、それが基地局、ISDNはそのデータを回線の先にあるPIAFS対応TA(ターミナルアダプタ)に送ります。そして、このTAがPIAFSで送られてきたデータを変換して、コンピュータに送っています。

 ただ、コンピュータのデジタルデータを無線でそのまま送ってしまうと、「データが化ける可能性がある」という弱点は解消できません。そこで、「ARQ(Automatic Repeat reQuest)」という方法を使ってこのスロットを4つ640ビットづつにして、その中にデータの特徴を記した確認用のデータなどをまぜて送っています。この仕事はPIAFS対応通信カードが行ないます。

 もし、送ったデータが送り先で特徴と合っていた場合送られたアクセスサーバーはその旨をデータの送り元のデータ通信カードに伝えます。すると、通信カードは、もし、違っていた(=途中で化けてしまった可能性が高い)とか、返事が返ってこなかったときにはもう一度データを送りなおして、これを、正しくデータが送られるまで繰り返すわけです。


 送られたデータは受け側のコンピュータの手前でアクセスサーバー(またはターミナルアダプタ)が元のコンピュータのデータに復元します。

 ちなみに、PIAFSを使うと、PHS自体は32kbps,または64kbpsでデータを送っていますが、送られるデータ本体はそれより少なくなりますので、コンピュータからコンピュータの間ではそれよりデータの転送速度は少し遅くなります。実際のデータの転送速度は64K PIAFSで実行伝送速度(つまり実質的なデータの転送スピード)は58.4kbps、32K PIAFSでは29.2kbpsです。また、原理上、電波の状況によって繰り返しデータを送るため、実質的な通信速度は下がることもあります。とはいえ、一般的に、普通にPHSで会話ができる程度、基地局からの電波を受けられる環境であれば、まず、気にならない程度の速度低下で、通常はデータの送受信自体は快適に行なうことができるようになっています。


送り側も受け側もPIAFS対応が必要

 今までの説明からもわかるように、PIAFSを使ってデータ通信をする場合、PHSにつなげるPCと、接続先のコンピュータの両方にPIAFS対応機器がなくてはなりません。つまり、ユーザのPCにPIAFS 準拠の通信カードを使い、さらにつなぎたいインターネットプロバイダなどにもPIAFS 準拠 のISDN TA またはアクセスサーバーが接続されていなければならないわけです(アクセスポイントが32K対応であれば、64K対応のPIAFSカードを使っていても32Kで接続することは可能です)。


簡単なPIAFSの仕組み。コンピュータとコンピュータに間で、それぞれデータを変換、逆変換してPIAFS規約に則ったデジタルデータのやりとりをする。そのため、コンピュータそれぞれにPIAFS対応のデータ通信カード、アクセスサーバー(あるいはターミナルアダプタ)などが必要になる

 従って、つなぎたいインターネットプロバイダもPIAFSに対応していなければいなりません。利用するには、まず、インターネットプロバイダ(あるいは自宅などにアクセスする場合はTA)がPIAFSに対応しているかどうかを確認するようにしねければなりません。NTTドコモ、DDIポケットそれぞれのWebページに対応プロバイダがリストアップされていますのでそちらを参照するといいでしょう。

□ NTTドコモの64Kネットワーク 解説ページ
http://www.nttdocomo.co.jp/products/phs/mobile/64k/network.html
□ DDIポケット 64K PIAFS(2.1版)対応プロバイダ
http://www.ddipocket.co.jp/data/i_64k_pro.html


 なお、実際にPIAFSを使って、インターネットプロバイダーに接続する場合は、インターネットプロバイダーがPIAFS用アクセスポイントを持っている場合と、NTTドコモのPHSの場合はPIASネット、あるいはDDIポケットの場合はポケットMALという全国共通アクセスポイントを使ってアクセスする場合があります。それぞれ、接続方法が違いますので、解説ページをよく見てPCを設定するようにするようにしてください。


ギャランティ方式のドコモとベストエフォートのH"

 それともうひとつ。実際にPIAFSを使う際には「事業者によって対応しているPIAFSのバージョンが違う」ということも気に留めておいたほうがいいでしょう。また通常、PIAFS 2.0/2.1と明記されていない限り、H"用の通信カードはドコモのPHSでは使えません。逆にドコモPHS用のカードもH"では使えません。

 PIAFS規格は「PIAFS 2.2版」が最新なのですが、64kbps通信では、NTTドコモはPIAFS2.0版に、DDIポケットのH"はPIAFS2.1版に対応しています。そのため、この64kbpsデータ通信では、無線区間の32Kデータ通信スロットを2つ同時に使用しているのですが、特に、それぞれのPIAFSの版でこの2つのスロットの使い方が違うために、使い勝手も少々違うことがあります。

 NTTドコモのPHSが採用しているPIAFS 2.0の特徴は速度が固定であることです。これは「ギャランティ方式」とも呼ばれていて、一度接続するとたとえば、最初に64kbpsで通信をはじめたら64kbpsのままで、32kbpsで通信したら32kbpsで通信を維持しつづけようとします。この方式では、一度2つのスロットを占有できるとそれが減らされることがない(=通信速度はその要因では落ちない)点が良いのですが、その半面、移動しながら通信していたりすると、次の基地局に電波の接続が切り替わった時にその基地局に2回線分の余裕がなかったりすると、通信が切断されてしまうことがあります。

 対してH"が採用しているのはPIAFS 2.1で、「ギャランティ方式」、「ベストエフォート方式」を選択することができます。「ベストエフォート方式」では、基本的に1回の通信で2つのスロットを同時に使うのですが、利用者が多いなどで2スロット分が確保できないときは、自動的に1スロット分だけを使って32kbps通信が行なわれます。つまり、通信速度は可変、というわけです。この方式では、別回線が確保でき次第、PHSが自動的に64kbpsに変更するのですが、移動しながらの通信などで、移動先の回線に余裕がない場合は2スロットでの通信から1スロットでの通信になり、速度が半分に落ちてしまうこともあります。




(大和 哲)
2000/10/17 00:00

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