ソフトバンクモバイルの新ラインナップとして登場したシャープ製3G端末「810SH」「811SH」は、ブリリアントフェイス、ディンプルフェイスなど特徴的な外観を持ちながら、VGA液晶を搭載するなど機能面も追求された端末だ。
一方、500万画素カメラに3倍光学ズームのカメラを搭載する「910SH」は、国内専用モデルながらデザイン・機能ともにデジタルカメラとしての特徴を前面に打ち出したモデル。
意欲的な最新機能の搭載に加え、豊富なカラーラインナップなどソフトバンクモバイルの新たな展開を印象付けているシャープ製端末について、シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第2事業部 第1商品企画部 主事の石井 裕樹氏と、同社 通信システム事業本部 パーソナル通信第2事業部 商品企画部 部長の山本 信介氏に話を聞いた。
■ VGA液晶搭載、豊富なカラー展開の「810SH」「811SH」
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シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第2事業部 第1商品企画部 主事の石井 裕樹氏
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810SHは8色のラインナップ
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――まず「810SH」「811SH」について、特徴などを教えて下さい。
石井 裕樹氏
810SHと811SHはフェイスデザインは変えていますが、基本的な機能は共通のものです。810SHは宝石のカットのようなブリリアントフェイスデザインを採用し、限定色を含めて8色のラインナップです。
811SHは、閉じた状態の表側とサブ液晶周りでカバンのような布目と金属プレートといった組み合わせをイメージし、ディンプルタッチのフェイスデザインを採用しています。こちらは限定色を含めて7色展開です。
810SHのサブ液晶は点灯している時だけ見えるハーフミラータイプで、811SHは常時見ることができるタイプです。GSMにも対応し、国際ローミングサービスが利用できます。
この2モデルは、904SHで初めて採用したVGA液晶を搭載し、カメラは2メガピクセルです。VGA液晶をより有効に使えるよう「ドキュメントビューア」を搭載し、オフィス文書やPDFファイルがそのままVGAの解像度で閲覧できます。
また、904SHでは搭載されていない「PCサイトブラウザ」のように、VGA液晶をより活かす機能を搭載しています。
ソフトバンクの新サービス「アレンジメール」「マイ絵文字」「フィーリングメール」「Yahoo! mocoa」などにも対応しています。
使い勝手での面でも細かな改良を加えています。カスタムスクリーンの切り替えでは、設定メニューに入るとすぐに選べるようになっていますし、グリッド配置、横メニュー、縦メニューといった表示パターンも選べ、プリセットの3種類だけでも合計9パターンから選択できます。
メニュー系の機能では、ユーザーから要望の多いシンプル系のメニューにも対応しました。文字が大きくなるだけでなく、主要な機能に絞ったメニューが説明付きで表示できます。
――薄型を追求したモデルではキーの押しやすさが犠牲になりがちですが。
石井氏
テンキーは大きめのデザインにして押しやすさにはこだわっています。
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シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第2事業部 商品企画部 部長の山本 信介氏
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――今回、カラーバリエーションがとても多いですね。
山本 信介氏
たくさんの種類を揃えたいというソフトバンクの意向もありました。当初、ソフトバンク側とデザインのやり取りを進める中で我々が提案していたのはブリリアントフェイスデザインのみでしたが、バリエーションを増やすという方針が出てきたことにより、ディンプルフェイスデザインを追加し、バリエーションを増やすと同時に、さらにボディカラーも増やす、という方向になりました。
従来の3~4色のバリエーションではなく、一気に種類を増やして既成概念を打ち破っていく、そういったところは非常にソフトバンクらしいですね。カラーバリエーションが増えたことで、これまでカラーについて少し妥協していたユーザーもより選びやすくなったと思いますし、より多くのユーザーに使っていただけることにつながると期待しています。我々もキャリアと歩調を合わせながら、ユーザーに喜んでいただけるラインナップを揃えて行きたいと思っています。
――PCサイトブラウザにACCESSのNetFrontを採用したのは何故でしょうか?
山本氏
Yahoo!ケータイを閲覧するブラウザもACCESSに変えていましたから、その流れでPCサイトブラウザもACCESSのNetFrontを採用しました。
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811SHは7色のラインナップ
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――高速赤外線通信にも対応していますが、これは「IrSimple」と呼んでいいのでしょうか?
山本氏
今回搭載されているデバイスは、認証を得ていませんのでIrSimpleとは呼べませんが、仕様はIrSimpleと同じ4Mbpsの高速通信に対応し、同じプロトコルを使用していますので、「IrSimple」をサポートする機器との互換性は保っています。「IrSimple互換」ということですね。互換性の部分で混乱を招いてはいけないので、互換性の確認がとれた機器は順次Webサイトなどに掲載していく予定です。
――ほかにアピールポイントなどあればどうぞ。
山本氏
VGA液晶は、一度使うと普通の液晶には戻れなくなると思います。ソフトバンクの新サービスにも対応しているので、新サービスを含めてしっかりと使いたいユーザーにお勧めできるモデルではないでしょうか。
■ “デジタルカメラケータイ”を目指す「910SH」
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910SHは5色展開
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500万画素CCDに3倍光学ズームとカメラ機能を強化
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――「910SH」ですが、ポイントはどのあたりでしょうか。
石井氏
見た目からも分かるように、特徴は「デジタルカメラケータイ」で、あらゆるところをデジタルカメラに近づけたことです。500万画素のCCDで、光学3倍ズームのオートフォーカス対応カメラを搭載しました。加えてVGA液晶を搭載し、カメラのファインダー画面もVGA液晶をフルに活用したものになっています。
VGA液晶を初めて搭載した904SHでは、QVGAサイズのファインダー画像をVGAサイズに拡大して表示するファインダー画面で、フレームレートも15fps程度でした。今回の910SHでは、VGAサイズのファインダー画像をそのままVGA液晶に表示し、フレームレートは30fpsでコマ落ち感の無いファインダー画面を実現しています。
ファインダー画面のフレームレートはコンパクトデジタルカメラで24fps程度が主流ですから、コンパクトデジタルカメラよりも高性能なファインダー描写といえます。また、VGA液晶を使用したデジタルカメラというのは恐らく無いと思いますので、ファインダー表示そのものもコンパクトデジタルカメラより高精細といえます。
VGAサイズ以上の静止画撮影では、オートフォーカスで「マルチポイントオートフォーカス」も選択できるようにしました。マルチポイントオートフォーカスでは、3つのオートフォーカスポイントから一番コントラストの強い、手前の被写体を自動的に選んでピントを合わせます。
ズーム性能では、904SHでは3メガのCCDに2倍の光学ズームを搭載していましたが、光学ズームは2段階のみの調節でした。910SHでは光学3倍ズームで、なおかつズームは11段階で調節が可能です。5群6枚のレンズ構成は904SHから変更していませんが、ズーム用レンズとオートフォーカス用レンズが別々に動く仕組みに変更し、11段階のすべてでオートフォーカスが動作できるようになっています。
さらに、904SHではガラスレンズ5枚、プラスチックレンズ1枚の6枚構成でしたが、910SHではプラスチックレンズの代わりとしてガラスレンズに樹脂をコーティングしたハイブリッドレンズを採用し、光学性能も向上を図っています。
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シャッターボタンの隣にズームボタン
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ストラップホールは2カ所用意
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――デザインや性能もコンパクトデジタルカメラを意識したものになっています。
石井氏
デジタルカメラライクにスクウェアなデザインを採用し、側面やカメラユニットは不連続蒸着による金属調の仕上げを施しました。カメラレンズ周りの円形パーツにはアルミを使用するなど高級感も追求しています。
5メガの光学3倍ズームと、カメラ性能は向上していますが、カメラユニットの大きさは904SHと同じレベルを実現しています。カメラユニット部分は段差をつけた象徴的なデザインですが、全体の厚みは904SHよりも薄くなるよう、絞りに絞っています。
シャッターボタンもデジタルカメラを意識して象徴的な大きめのボタンを採用していますし、ズームを操作するボタンは片手で操作できるようにシャッターボタンの隣に配置しました。
細かなこだわりのポイントは、ストラップホールを2つ設けた点です。ヒンジ側のほかにもうひとつ、カメラモードでは落下防止を兼ねて使えるシャッターボタン側にもストラップホールを用意しました。シャッターボタンを押す右腕にストラップを通して使えば、撮影時の万一の落下も防げます。
――手ぶれ補正機能ではどういったものを搭載していますか?
石井氏
今回、新たに静止画だけでなく動画も手ぶれ補正に対応しました。904SHより感度設定のレンジが広がっていて、904SHではISO400相当までだったのが、910SHではISO800相当までの範囲で調整を行なうようになっています。
また、動画撮影では904SHではVGAサイズで15fpsだったところを、910SHでは30fpsで撮影ができるようになっています。
――絞り値などは設定できないのでしょうか?
石井氏
絞り値そのものは設定できません。ISO感度は個別設定できますが、絞り値はその設定に応じてシャッター時に自動調節されます。また、標準を含め7種類のシーン別撮影設定を搭載しており、スポーツの撮影や逆光時の撮影などシーン別の設定では絞り値やシャッター速度が自動的に調整されます。
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VGA液晶を活かしたメニューを搭載
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――メニュー表示もVGA液晶ならではの作りになっているようです。
石井氏
カメラのメニュー周りでは、これまで文字主体だったメニューを改善し、機能に応じたアイコンも表示するグラフィカルなメニュー構成にしました。これは810SH、811SHから採用しています。VGA液晶ですからアイコン一つ一つの文字も読めますし、今回は英語表示も付けています。
このほかでは、撮影サイズでは16:9の画面比率で撮影するモードを設けました。高速赤外線通信で、対応するワイドテレビに送信して16:9の画像を画面いっぱいに表示して見る、といった使い方も将来的にはあるのではないでしょうか。
――VGAディスプレイでの各種の表示は端末への負担も大きいようですが……。
山本氏
CPUだけでは厳しいでしょうね。910SHは基本的には904SHと同じアプリケーション・プロセッサを搭載しています。先ほどのカメラのファインダー画面のフレームレートの向上など、従来より少し役割分担を変更した、というイメージです。
石井氏
今回の910SHでは、ほぼすべての画面でQVGAの拡大ではなくVGAでの描画を実現しています。
――ほかに工夫した機能などはありますか?
石井氏
カメラの中でほかにこだわったのは、モバイルライトですね。904SHと比べて10倍程度の明るさを実現しています。発光のアルゴリズムも、これまでならシャッターまで点灯し続ける点を見直し、シャッターを切る瞬間だけ強発光するようにしています。暗い場面では、オートフォーカスが動作するようオートフォーカス補助光として点灯も行ないます。
また、撮影した画像を携帯の中で確認する場合ですが、デジカメスタイルで撮影すると横位置で撮影した画像が多くなるので、データフォルダのサムネイル画像一覧では横位置の画像の自動検出を行なって縦横が正しく表示されるような工夫もしています。これはVGAサイズ以上の解像度で撮影した画像に有効です。
――海外では10メガピクセルのカメラを搭載した携帯電話も登場しています。
山本氏
ボディからレンズがあれほど飛び出すのはちょっと……というのはありますね。感性的な部分を含めて、我々はあくまで“携帯電話”として商品作りを進めていますから。
――デザイン面でほかに注目すべきポイントはありますか?
石井氏
テンキー部分では、縦峡間のキーを採用しています。フレームが無い分キーを大きくできるのがメリットで、隣のキーとの差が分かりやすくなるように各キーに角度をつけています。
デジタルカメラとしての顔としてのイメージを損なわないように、電池カバーは全体を覆うデザインになっています。モバイルライトのための穴がありますが、汗などが侵入しないように本体側も対策を施しています。
サブディスプレイはカラー液晶ですが、カラーや表示タイプを切り替える専用ボタンを隣に配置しています。フォントも3種類あり、待受けの色も8種類から選べます。着信時の表示色なども設定できます。
――microSDはどのくらいまでの容量が使えるのでしょうか。
石井氏
容量制限を設けているわけではありませんが、今のところ1GBまで動作検証しています。
――パッケージにはUSBケーブルが同梱されますね。
石井氏
デジカメのように使ってもらいたいという点から、撮影した画像をパソコンに取り込んでもらいやすくするために同梱しました。
――本日はお忙しい中どうもありがとうございました。
■ URL
「810SH」製品情報(ソフトバンク)
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/810sh/
「811SH」製品情報(ソフトバンク)
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/811sh/
「910SH」製品情報(ソフトバンク)
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/910sh/
「810SH」製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sb810sh/
「811SH」製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sb811sh/
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(太田 亮三)
2006/11/01 14:37
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