3G/Wi-Fi対応の「PlayStation Vita」、12月17日発売
SCE河野氏(左)とドコモの辻村氏(右) |
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、3G/Wi-Fiに対応した次世代型ポータブルゲーム機「PlayStation Vita」(PS Vita)を12月17日に発売する、通信機能はNTTドコモが提供し、合わせて料金プランも発表された。
PS Vitaは、マルチタッチ対応の5インチ有機ELディスプレイと、背面にマルチタッチパッドを搭載した携帯ゲーム機。従来のポータブルゲーム機よりもさらにネットワークとの連携を高めたもので、Wi-Fiモデルのほかに、3G/Wi-Fiモデルもラインナップされる。
端末価格は、Wi-Fiモデルは2万4980円、3G/Wi-Fiモデルは2万9980円となる。3Gの通信網はNTTドコモが提供し、ドコモではデータ通信専用のプリペイドプランを提供する。
なお、3G/Wi-Fi版については、初回出荷分の50万台限定で、SCE側が103時間分の通信料と契約事務手数料を負担するキャンペーンも展開される。
メインディスプレイとマルチタッチパッドを組み合わせることで、ゲームに「触る・つかむ・なぞる・押し出す・引っ張る」といった操作が取り込めるほか、2つのアナログスティックを本体全面左右に装備する。
ディスプレイは、5インチ、960×544ドット、約1677万色表示の有機EL。タッチパネル式でマルチタッチに対応する。CPUはARM製Cortex-A9、GPUはSGX543MP4+となる。端末背面にマルチタッチパッドを配している。メインメモリは512MB、VRAMは128MB。
カメラは背面と全面に用意されており、320×240ドットで120fps、640×480ドットで60fpsの撮影が可能。ステレオスピーカーやマイクを内蔵する。
GPS搭載し、6軸の加速度センサーや電子コンパスが利用できる。3Gは、HSPA方式に対応し、Wi-FiはIEEE802.11 b/g/n対応。Bluetooth 2.1+EDRをサポートする。大きさは約182×18.6×83.5mmで、重さは約279g(3G/Wi-Fiモデル)となる。
なお、バッテリーは内蔵式のリチウムイオン充電池を採用する。動作時間はゲームで約3~5時間、動画再生時間は約5時間、音楽再生は約9時間。ACアダプターでフル充電するには約2時間40分かかる。
■ドコモのデータ通信プラン
PS Vitaの発売日発表の同日、NTTドコモは、PS Vitaに対応した2つのプリペイド型データ通信プラン「プリペイドデータプラン 20h」と「プリペイドデータプラン 100h」を発表した。
通信速度は下り最大128kbps、上り最大64kbpsとなり、「プリペイドデータプラン 100h」については、3時間分の通信については下り最大14Mbps、上り最大5.7MbpsのHSPA方式が選択できる。通常は128kbpsで利用し、高速通信を利用したい場合などに14Mbpsに切り替えるといった利用が想定されている。
なお、128kbpsの通信回線は、ドコモの通常の3G網と同じ仕組みで提供されており、ゲームのプレイなどで気にかかる通信遅延などを補完するような特別処理は行われない。ドコモでは、「遅延対策については、ゲームの作り込みでカバーすると聞いている」と話している。
「プリペイドデータプラン 20h」は、20時間の通信時間(有効期間は30日間)が980円で購入できるプラン。一方の「プリペイドデータプラン 100h」は、103時間の通信時間(有効期間は180日間)が4980円で購入できる料金プランとなる。契約事務手数料2100円などがかかるが、前述した通り、初回50万台については、「プリペイドデータプラン 100h」と契約事務手数料をSCE側で負担するため、103時間分の3G通信がPS Vitaに同梱される形になっている。
支払いは、クレジットカード決済および、ドコモのユーザーは「ドコモ ケータイ払い」が利用できる。なお、PS Vitaの3Gの契約処理や、プリペイドの支払いは全て通信経由で実施されるので、売り場で通信の契約や本人確認書類を提示することなく、通常のゲーム機として購入できる。ドコモによれば、電源をONにして設定完了後、3G通信の契約が完了したことになるという。
また、PS Vitaには、有害サイトのフィルタリング機能が用意されており、フィルターを解除する場合については親権者の同意書などが必要になるとしている。プレイペイド型データプランのほか、ドコモの通常の定額データプランなども選択できる。
このほか、SCE側では、通信のチャージについて、「検討中の段階」と前置きした上で、ゲーム販売店や量販店などでの対応も検討していることを明かした。
■SCE河野氏、Vitaはカジュアル層もコア層も取り込める
14日に行われた「SCEJ Press Conference」では、PS Vitaの発売日や、ゲームタイトル、3G通信の概要などさまざまな詳細が語られた。
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンのプレジデントである河野弘氏は、冒頭「Vitaでは魅力あるタイトルを続々と出し、最先端のエンターテイメント体験を進化させていく。ご期待ください」と語った。
同氏は、PlayStation 3や「プレイステーション・ポータブル」(PSP)が好調に推移する一方で、ネットワークサービスである「PlayStation Network」(PSN)は、外部からハッキングされたことで一時閉鎖となるなど、全てが順風満帆だったわけでなない。河野氏は重要な点について「これからの将来の成長戦略をどう描けるか。Vitaはその成長戦略を担うものだ」などとした。
また河野氏は、スマートフォンなどが普及拡大し、ゲームのプレイスタイルが多様化し、ゲームのカジュアル層が拡大している状況を説明。その一方で、コア層がゲームの進化を推し進めているとの見解を示した。同氏は、PS Vitaについて、カジュアル層もコア層も取り込める端末であるとし、「およそ考え得るあらゆる機能を盛り込んだ。自信を持って提供する」と述べた。
■キャリアパートナーはドコモ
SCEでは、3GのキャリアパートナーにNTTドコモを選択した。河野氏は、ドコモを選んだ理由として「安定と信頼性、新しいことにチャレンジしていけるところ」などを挙げた。
一方、登壇したドコモの代表取締役副社長の辻村清行氏は、PS Vitaについて「非常にパワフルなハードスペック、魅力的なソフト。3Gを繋げることで新しい価値が生まれる。大きな可能性を感じている」などと話した。
3Gによって、PS Vitaがいつでもドコでも楽しめるようになり、クラウドとの連携や、既存のスマートフォンやタブレットとの組み合わせなども期待できることを説明した辻村氏。これを受けたSCEの河野氏は「スマートフォンやタブレットは、新規のゲーム産業と競合しない」と話した。同氏は、スマートフォンからのカジュアルなゲームへのアプローチと、ゲームの王道である専用機からのアプローチのバランスが必要とした。
講演では、実際に3Gの契約が完了するまでの設定のデモなども行われた。PS Vitaの操作デモでは、音楽を聴きながら写真をチェックするといったマルチタスク機能や、TwitterやFacebook、Foursquareといったスマートフォンで延びているソーシャルサービスとの連携がアピールされた。ゲームをプレイしながら、Twitterでつぶやいてまたすぐゲームをプレイすることもできるという。
■各社がVita向けタイトル発表、ニコニコ動画の姿も
このほか発表会では、カプコンやスクウェア・エニックス、コナミデジタルエンターテインメント、SCEからさまざまなゲームタイトルが紹介された。12月17日の発売と同時に楽しめるゲーム、いわゆるローンチタイトルは26タイトルで、このほかにも100タイトル程度が登場する予定という。
また、いわゆるゲームメーカーとは異なるプレイヤーとして、ニコニコ動画を提供するニワンゴが紹介された。ニワンゴの代表取締役社長である杉本誠司は、ニコニコ動画とPS Vitaがゲームという点で共通のユーザーがおり、カメラや通信機能の搭載などニコニコ動画にとって親和性の高いハードであるとした。
PS Vitaではニコニコ動画の閲覧アプリが提供されるほか、2012年には映像の配信機能も持ち込まれる予定だ。2012年以降、たとえば、ゲームをプレイしながらニコニコ生放送で実況中継するといった楽しみ方にも期待できるという。杉本氏は、ゲームの生中継について、メーカー側の協力があってこそ取り組みであると語っていた。
なお、9月15日から始まる東京ゲームショウでは、PS Vitaの試遊機などが多数並ぶという。
2011/9/14 16:21