KDDI、第26期定時株主総会を開催


 KDDIは、6月17日午前10時から、第26期定時株主総会を、東京・品川の品川プリンスホテル アネックスタワーで開催した。

 会場には382人の株主が出席(昨年の出席数は421人)。全議決権数445万4113個に対して、インターネットなどによる議決権行使を含めた議決権行使個数は370万7629個に達した。

 議長を務めたKDDIの小野寺正社長兼会長は、2009年度の事業報告を行い、移動体通信事業においては、総合的に商品力の強化や法人向けサービスの強化などに取り組んだ実績について紹介する一方、「シンプルコースの浸透による音声ARPUの減少や、端末販売価格の低下などにより、前期比2.5%減の2兆6501億円となった。また機種変更時の販売奨励金単価や1台あたりの端末販売原価の減少などにより、営業費用も減少したが、全体をカバーするに至らず、営業利益は3.5%減の4837億円となった。またau携帯電話の3月末の契約数は3187万契約となっている」と、業績について説明した。

 また、「トライブリッド方式電力制御技術により、商用電力使用量およびCO2排出量を20~30%の削減を可能とした基地局を設置したほか、災害用伝言板においての全社一括検索の提供を開始。年間1000回にのぼる子供向けの携帯電話教室を全国で開催するなど、企業としての責務を果たしていく」などとした。

小野寺社長兼会長

 さらに、「昨年4月に立ち上げたiidaは、年間で8機種を投入。ライフスタイルを演出する多彩な端末機器として21機種を販売。近日中にAndroid搭載スマートブック『IS01』、Windows Phone『IS02』を発売する予定で、デジタルフォトフレームのPHOTO-USP01の発売も予定している。先頃発表した10機種のau携帯電話は、すべてが防水対応となっており、ユーザビリティを追求したものとなっている」と語った。

 また、固定通信事業に関しては、アクセス回線への取り組みを強化したことに触れたほか、「auひかり」による固定通信サービスと移動通信サービスの連携強化推進、成長市場である開発途上国におけるWiMAX事業やデータセンター事業の展開、米国向けの移民向け携帯電話事業への参入といったグローバルに事業基盤の強化に取り組んだことを説明した。

 さらに、UQコミュニケーションズでは、2009年7月1日から有料サービスを開始し、今年3月にはすべての政令指定都市および県庁所在地にエリアを拡大したことや、じぶん銀行における個人向け金融商品の充実、複数のネット決済への対応、ネット銀行としては最速で100万口座を達成したこと、預金残高が着実に増加しているといった実績にも触れた。

 

J:COM出資についても説明

 一方、J:COM(ジュピターテレコム)への資本参加については、「戦略的なパートナーシップを構築し、331万世帯のJ:COMユーザーに、KDDIグループが持つFMBC(Fixed Mobile and Broadcasting Convergence)による魅力的なサービスを提供できる」としたほか、J:COMに対して、取締役3名、監査役1名を派遣し、アライアンス検討委員会を通じた効果的な連携を模索していることを示した。

KDDIの両角専務

 書面による質問に対する一括回答は、両角寛文取締役執行役員専務が行い、J:COMに関する3件の質問に対して回答した。

 市場価格の5割増しでJ:COM株を取得したことに対しては、「J:COMのビジネス、財務面、法務面のほか、キャッシュフローの創出力などを、第三者機関により算定した価格によるもので、妥当な価格である。拒否権を得なかったことも、J:COMとの戦略的パートナーシップを向上させることが目的であり、特段問題はない。議決権ベースでは30.8%の株式を所有しており、2.2%の管理信託株式をあわせると33%の出資比率になる。重要事項の決議に、相応の影響がある」とした。J:COMへの出資スキームについては、「複数の顧問弁護士、外部有識者の意見を聞いて行ったものであり、有利な支配権を握るものが目的ではない。目的通りに進んでいる」とした。また、J:COM出資後の株価急落に対する信頼回復の施策では、「業績や企業価値が、株価に反映されるようにIR活動にも力を注いでいく。いまの株価は市場における評価として真摯に受け止めたい。J:COMとのシナジー効果を早期に実現する各種施策を、できるところから可及的速やかに実行に移す」とした。

 会場からの質疑応答でも、J:COMに関する質問が相次いだ。

 これらの質問に対して、同社経営陣は、「J:COMは、1世帯あたりのARPUが高く、優良な顧客基盤を持っている。J:COMへの出資は二重投資になっておらず、事業の棲み分けができ、戦略的パートナーシップによるシナジーが期待できる。au携帯電話をJ:COMが販売したり、J:COMのユーザーに対して請求書を一括で送付したり、UQ WiMAXも固定ユーザーのサービスとして提供することも考えている」(両角取締役執行役員専務)、「住友商事とは、双方に理解した上でやっている。過去の経緯からも信頼関係があり、共同で事業運営を行う上で、両者間での懸念はない」(小野寺社長)などとしたほか、「JCNとの経営統合については、現時点で具体的に話すことはできないが、ケーブル事業のシナジーを追求することで基本的合意をしている。この事業は、規模の経済性が働くということでともにM&Aを通じて拡大してきた。番組の調達、機材の調達、課金システム、コールセンターの統合、共同プロモーションなどのシナジーを最大化していくために、資本関係の構築を含めて考えていきたい」(両角取締役執行役員専務)とした。

 

新800MHz帯への対応

KDDIの田中常務

 一方、新800MHz帯への対応については、田中孝司取締役執行役員常務が回答。「新800MHz帯に向けたネットワークは数年前から基地局を設置しはじめており、2012年7月までの期限通りに準備できる。端末は、新800MHz帯、旧800MMHz帯、2GHz帯の3つのトライバンドに対応していない機種が、2009年度末時点で1000万台ある。今年4月15日からCDMA 1X端末は、機種変更手数料を無料にするいった施策も行っており、今後、移行数は増えてくるだろう。移行に向けては800億円規模の投資をしており、2010年度末には、残り400万台にまで縮小させる。過去にもPDCやツーカーからの移行経験があり、これを生かしたい」とした。

 減収減益ながらも配当を増やしたことについては、小野寺社長が、「営業利益や経常利益ではほぼフラットであり、また設備投資も2年前がピークだと考えている。今後の配当性向を視野に入れて増配とした。今後減配がないように精一杯やっていく」とした。

 また、2000年10月1日に、第二電電、KDD、日本移動通信の3社が合併してから10周年を迎えることについては、「3社の統合は、比較的順調にいったといえる。トータルでは15社の合併によって構成されており、いまや出身会社がどこだという社員はいない。人の融合は進んだといえる。だが、設備面では、固定通信ネットワークでまだ重複があり、これをスリム化を図るために、2009年度に事業構造改革費用を計上した。その点では、まだ十分ではない部分もある。今年10月1日で10周年を迎えられることは、株主のみなさんに感謝する」と小野寺社長は語った。

 なお、取締役13名の選任や定款一部変更、剰余金処分などの第1号議案~第5号議案までの決議事項は、満場一致で決議され、正午頃に終了した。

 議案については、取締役10名に対する役員賞与の総額を6129万円へと減額すること、法人向けビジネスとして中古PCなどのOA機器をKDDIのサービスとあわせて提供するための古物の売買業を定款に加えることなどが含まれている。

 



(大河原 克行)

2010/6/17 14:18