みんなのケータイ

 ラスベガスで購入したiPad Retinaディスプレイ Wi-Fi+Cellularモデル(iPad 4)は、相変わらず、NTTドコモのLTEネットワーク(Xi)で快適に使えている。ただ、利用している「BB.excite」のmicroSIMカードは、1カ月に1GBまでなので、大容量のデータを扱うときは、やはり、Wi-Fiを使うことになる。外出先でのWi-Fi利用については、国内であれば、さまざまな事業者やプロバイダーが公衆無線LANサービスを提供しているし、auのように、自分のスマートフォン以外のもう1台の端末でau Wi-Fi SPOTを利用できるサービスを提供しているので、比較的、利用しやすい環境が整っている。

 しかし、場所によってはオープンなWi-Fiスポットしか提供されていなかったり、海外のホテルなどではどうしてもオープンなWi-Fiスポットを利用せざるを得ないことも多い。こうしたシチュエーションで、「やった! タダでWi-Fiが使える!」と喜ぶ人もいるけど、ボクはどうしてもそれが受け入れられない。オープンなWi-Fiということは無線通信区間が暗号化されていないわけで、第三者に通信内容が盗み見られるリスクがあるからだ。「暗号化したって、みんなが暗号化キーを知ってれば、無意味じゃん」「誰もそんな通信内容は見ないって」という意見もあるけど、『カギが掛かってない環境』と『カギは掛かってるけど、合い鍵が手に入れられる環境』を比較した場合、データを盗む側から考えれば、カギが掛かってない環境の方が手間が少ないわけで、当然、前者の方がリスクは大きくなってしまう。

 じゃあ、どうやってカギを掛けるかという話になるわけだけど、ひとつは「VPN」を使う方法が考えられる。VPNの詳細については、だいぶ前の記事になるけど、本誌の「ケータイ用語の基礎知識 第153回:VPNとは」でも解説されているので、そちらをご覧いただきたいが、簡単に言ってしまえば、端末から特定のサーバーまでの区間を暗号化することで、安全にデータの送受信をできるようにする方法だ。iPadでホテルなどのオープンなWi-Fiスポットに接続したとき、VPNを使って、特定のサーバーに接続すれば、Wi-Fiの無線通信区間も含め、通信が暗号化されるため、安全にインターネットを利用できるわけだ。

 VPNによる接続は、元々、ビジネスユーザーが会社のサーバーなどにアクセスする方法として利用されているため、一般ユーザー向けにVPNサービスを提供しているところがほとんどない。個人でVPN接続を実現するには、『自宅のブロードバンド環境にVPN対応ルーターを設置』『Windows Home ServerなどにVPNの設定』『レンタルサーバーでVPNを設定』といった方法しかなく、ちょっとハードルが高い印象だ。

 ところが、海外ではいくつかVPNサービスを提供している事業者があって、ボクはVPNVIPという企業の「VPN Express」(iTunes Store)というサービスを利用している。詳しい使い方は同社のWebページなどを参照して欲しいんだけど、流れとしては、まず、iTunes StoreでVPN Expressを無料で購入し、アプリをダウンロードする。ダウンロードしたアプリを起動して、「Register a New Account」でユーザー登録をする。ユーザー登録をすると、300MBまで無料で使えるアカウントが発行されるので、最初はそれを使って、試してみるのがおすすめだ。

 アカウントが発行されたら、今度はVPN Expressのアプリの画面に登録時に入力したユーザー名とパスワードを入力し、[Login]をタップ。自分のアカウントのステータス画面が表示されるので、今度は[VPN Auto Setup(NEW!)]をタップして、どのVPNサーバーに接続するのかを選ぶんだけど、お試し版のときは「Servers for Free users」しか選べない。後述する容量や期間を購入すれば、「PPTP Servers in USA」などが選べるようになる。続いて、[Start Auto Setup!]をタップすると、「パスコードを設定していると、Auto Setupがうまく動作しない」というメッセージが表示されるので、iPadの設定画面で一時的にパスコードをオフに切り替えて、[Launch Auto Setup!]をタップする。プロファイルのインストール画面が表示されるので、[インストール]をタップし、インストールができたら、[完了]をタップして、設定は完了。

 実際に接続するときは、まずはホテルなどのWi-Fiスポットに接続し、iPadの設定画面に[VPN]という項目が増えているので、そこで[VPN]を[オン]に切り替え。「構成を選択」はプロトコルの違いにより、2種類が用意されているけど、プロトコルが制限されているWi-Fiスポットがあるので、どちらかを試してみて、つながる方を使う。無事に接続されれば、VPNの画面は[オン]に切り替わり、iPadの画面左上には[VPN]のピクトが追加される。使い終わったら、[VPN]をオフに切り替え、Wi-Fiのオフにする。VPNをオフにしただけだと、Wi-Fiはつながったままで、暗号化がない状態で通信が行われてしまうので、注意が必要だ。

VPN Expressのアプリを起動して、登録したユーザーアカウントを使って、ログイン。はじめて使うときは「Register a New Account」でアカウントを取得。画面はWi-Fi版
ログインした画面ではこれまでに転送した容量などを確認可能。今回は画面キャプチャのために新規で登録したので、まだ300MBが残っている。画面はWi-Fi版
「Start Auto Setup!」で自動的にセットアップが可能。有料版にすれば、上段の接続先が選べるようになる。画面はWi-Fi版
Auto Setupで設定を進めると、プロファイルがインストールされる。画面はWi-Fi版
設定が完了すれば、iPadの設定画面にVPNという項目が表示され、[オン]に切り替えれば、接続される。接続中は左上のアンテナピクトの隣に「VPN」と表示される。画面はWi-Fi版
VPN Expressの追加購入プランの「MONTHLY」。期間と容量が決められているが、割安なプラン
VPN Expressの追加購入プランの「DATA」。容量は決められているが、期間は無制限。[MONTHLY]よりも少し割高
セール中のプランの[ON SALE]。5GBのプランを購入すれば、当分、使えるはず
Wi-Fi+Cellular版でVPNに接続すると、こんな感じで画面左上に「VPN」と表示される

 お試し版の300MBを使い終わったり、もっと大容量を使いたいときは、iTunesのアプリ内課金で転送容量や期間を購入する。VPN Expressのアプリのログイン後の画面で[Buy Quotas]をタップすれば、期間と容量が決められた[MONTHLY]、容量が少なめだけど、期間が無制限の[DATA]、セール中の[ON SALE]からプランを選んで購入できる。使い方にもよるけど、オープンなWi-Fiを使うシチュエーションが多い人は[ON SALE]の5GBプランが350円と安いので、買ってしまってもいいんじゃないかな。ボクは昨年9月に購入したけど、まだ全然4GB以上、転送量が残っている。ちなみに、有料サービスを購入したら、前述のプロファイルをインストールするセットアップをもう一度、実行すれば、iPadの設定画面のVPNに[VPNVIP-UK-L2TP][VPNVIP-US-PPTP]などの項目が表示される。

 また、VPN Expressで登録したアカウントは、iPadだけでなく、iPhoneやiPod touch、Androidスマートフォン、Windowsパソコン、Macなどでも利用することが可能だ。しかし、考えてみれば、こういうのって、同じくらいの料金体系で携帯電話事業者やプロバイダーが提供してくれてもいいと思うんだけど……。国内でも個人向けの割安なVPNサービスをはじめないですかね。>携帯電話事業者及びプロバイダーのみなさま