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世界をもてなすブロードバンドホテル「ホテルオークラ」
ゼロ・ハリ ゼロ・ハリ
「日本のモバイルキング」、「中年ガジェットキング」など数々の異名を持つ。数多くのパソコン雑誌に執筆。購入した携帯グッズはそろそろトン単位に突入か?


 ホテルオークラの位置する港区虎ノ門近辺は、「ホテルオークラ」ほどではなくても、伝統ある大型ホテルが多い。宿泊需要も多いが、競争も激しい地域でもある。加えて2003年春には、都内の巨大再開発プログラムである「六本木ヒルズ」プロジェクトで、客室数こそ少ないが、世界の一流ホテルである「グランドハイアット東京」が比較的近距離に完成する。しかし、多くのホテルが林立しても、ホテルオークラが日本を代表する伝統的かつ高級なホテルの1つであることには違いがない。


リニューアルしたホテルオークラの別館 伝統的な超一流ホテルらしい吹き抜けのロビー(別館)

伝統と最新設備がうまくマッチしたホテル

 筆者が今回宿泊したのは、よく写真で見かける本館ではなく、1973年に建設され、最上階にフランス料理で有名な「ラ・ベル・エポック」を冠した別館の建物である。11階建ての本館と12階建ての別館は、ホテル専用の連絡通路で接続されているが、ホテルオークラ全体が六本木方面から神谷町方面に広がる急斜面に建てられていることから、別館の地下1階と本館の5階が水平な連絡通路で結ばれているという変則的な構造になっている。実際には、本館の正面玄関である5階から1フロアをエスカレーターで降りたところが通路なので、本館・別館の斜面の影響による落差は4階分ということになる。この位置関係さえ掴めば、ホテル内での移動は極めて快適だと言える。

 この日は生憎の強風かつ雨の強い夜だったので、秋葉原・神田方面で仕事を済ませ、タクシーでホテル正面の車寄せに着いた。建物自体は本館も別館も統一された思想で建築されており、別館1階ロビーの吹き抜け天井も広く、昨今の明るいロビーの都市ホテルが多い中、色彩の割には圧迫感もなく、1段下がったロビーの広い空間の休憩エリアに、不規則に配置されたレッグ付きの椅子とローテーブルの組み合わせもどこか目を引きつけるものがある。

 西北西を向いた禁煙フロアの客室からは、ちょうどアークヒルズ方面の全日空ホテルや森ビル、新しく建設中の大型マンションやオフィスビルが目の当たりに見える。夜景の感覚は、米国で言うなら、サンフランシスコのファイナンシャル・ディストリクト辺りの中層のホテルに宿泊した感じと比較的よく似ているだろう。客室もここ1年くらいにリニューアルされ、全体的な古い伝統と最新の設備が上手くマッチしたホテルとして綺麗に仕上がっている。


どこかミッドセンチュリーを感じる空間デザイン 都心だが、大使館などが多く、異常に閑静な周辺地域

ウェルカムメッセージと、鶴と亀の折り紙

リニューアルされバスルームも快適で綺麗になった
 約33平米のスタンダードツイン・ルームは都市ホテルとしては必ずしも広いとは言えないが、東京のど真ん中の位置し、どこに行くにも20分くらいで行ける便利さを考えれば贅沢は言えないだろう。近辺のビジネスホテルなら床面積は半分以下、価格も同様だと考えられるので、「ただ寝るだけだから……」と割り切って後者を選択するか、「たまの出張だからゆったりと……」と考えるかは本人の自由だ。どこの会社の出張規程でも、超過の不足分を自腹で出すことに文句を言う会社はないはずだ。筆者の場合はこの選択にムラがあり、ある時はごく当たり前のように前者の気持ちになり、またある時は無性に後者の気持ちになる時がある性格破綻的なところがあるので、このような連載をやっていられるのかもしれない。

 ホテルを利用する時に女性が特に重要視するバスルームだが、最近の傾向としては、高級都市ホテルではガラスで密閉されたシャワールームとオープンなバスタブが明確に分離しているタイプが増えてきている。しかし、残念ながら別館が造られた1973年頃にはそういう発想はなかっただろう。ホテルオークラではリニューアル時に、バスタブの端っこに、3枚の連続する引き戸が取り付けられており、相当派手にシャワーを使ったりしても一切バスタブの外に水滴が飛び散ることはなかった。

 客室のツインベッドの枕元には、それぞれ日本的でカラフルな折り紙で折った「鶴」と「亀」がていねいに置かれており、英語で“これらは日本では縁起の良いモノであり、いずれも千年も万年も生きると言われています、ご宿泊ありがとうございます”と言うようなことが書かれてあった。日本人の良く行く東京第24区のホノルルなら、さしずめハイビスカスかブーゲンビリアの花メッセージというところだろうが、意外とこの「鶴&亀」、外人には好感度なのかもしれない。

 まったくと言って良いほどアルコールを飲まない筆者にとってホテルのルームバーほど無駄なモノはないが、ワードローブの反対側に綺麗に収納されたルームバーは、インテリア的にも機能的にもなかなか惹かれるモノを感じてしまった。少し応用すれば、筆者のような兎小屋に住んでいる日本の多くのサラリーマンが、自分だけの世界を創る最小限のコンパクトな「マイクロ書斎」にも適用できそうだ。


33平米はクラスとして広くはないがビジネスホテルとは大差 鶴と亀のグリーティングはお洒落で渡航者には人気だろう

ビジネスマンに必要なものはすべて備えた客室

いろいろ応用が利きそうなコンパクトなホームバーキット
 例外もあるが、廉価版のビジネスホテルと比較して、都市ホテルの有り難いところは、室内のワーキングデスクの大きいことだ。ホテルオークラのスタンダードツインも備え付けのデスクは快適で、パーソナルFAX装置、データポートのある電話機、有料だが、室内に備え付けのTVでWebサーフィンのできるワイヤレス・キーボード、ペン、メモ、コンセント、高速インターネットのためのイーサネットケーブルなど、おおよそビジネスマンが必要なモノはすべて備わっている。

 業界でも大手の伝統を誇るホテルほど、長らくアナログモデムでしかインターネット接続の手段がないという傾向があったが、昨今は、ごく一般的な客室でもCATVなどの高速インターネット・サービスがごく普通になってきている。どうもインターネット高速回線というと、旧態依然とした古いホテル業界では、新進のビジネスホテルや伝統の無い都市ホテルのセールスプロモーション的なものと理解されているようだが、伝統を重んじるが、時代の流れを正確に読んでいる「ホテルオークラ」では違っていたようだ。すべての客室に来ている回線は快適で、行動的なビジネスマンにとって最高のサテライト・オフィスを提供してくれる。同じ日本の伝統的なホテルでも20万円近いスイートルームにしか高速回線が入っていない「帝国ホテル 東京」とは大きな違いだ。高額なスイートルームに宿泊する優雅なお客様が、インターネット高速回線に接続していったい何をするというのだろうか? 「差別化のために値段の高い部屋にはとにかく良い設備を」という旧来の考え方がいまだ横行しているようだ。本当にインターネット高速回線を必要としているのは誰なのかを真剣に考えるべきだろう。電気、ガス、水道、インターネット、もはやブロードバンドはただのインフラなのだ。


大きく綺麗な机は仕事やアイデア醸造には最適な環境 テレビで遊ぶインターネット(有料)。筆者は使用しなかった

初心者でも安心の接続マニュアル、LANカード貸し出しも

 ホテルオークラは客室の高速インターネットサービスに米国系のサービスプロバイダーである「MAGINET社」の「Laptop Connect Broadband」を採用している。無料ではないが、翌日のチェックアウトの正午までの24時間で1500円(税込)であれば十分我慢できる品質だ。自宅や職場でADSLやBフレッツを使い慣れていると、必ずしも高速だとは感じないが、アナログの電話回線を利用するのとは月とスッポンだ。

 ホテルオークラでは室内のデザインや雰囲気との調和から、本来は露出するケーブルモデムの類を、テレビの下のユニットにうまく隠している。実際には、適度な長さのイーサネットケーブルだけが机上に露出しており、それも中身はハッキリとは見えないダークなアクリルの専用ケースに綺麗に収納されている。多少重厚なインテリアとのバランスが崩れないような細かい配慮がなされている。

 客室にはブロードバンド回線でのインターネット接続が初めての人にもよく理解できるマニュアルが2冊用意されており、フロントで「イーサネットPCカード」と「ドライバーディスケット」の貸し出しサービスも行なわれている。またパソコンの電源用に机にはトップ面に国内仕様のコンセントが用意されているが、海外から機器を持ち込んでくるお客様のために、海外規格のコンセントもすぐ横にもう1個用意されている。早速、筆者は、普段使用しているThinkPad s30を接続し、快適に仕事を継続できた。


イーサネットケーブルはそれとなく隠されている TV台の下に隠れているケーブルモデム(撮影の為に取り出した)

一般的によく見かけるケーブルTVインターネット装置だ 初心者にも親切なケーブルTVインターネットの解説書

イーサネットPCカードはフロントでも貸し出してくれる 海外からの渡航者のためのACアウトレット

ThinkPadユーザーにお薦め「IBM Access Connections」

 最近は、国内外のホテルだけではなく、各地に続々と誕生する「ホットスポット」でもワイヤレスLAN環境で接続し、自宅ではADSLワイヤレス、職場では100Mの有線LAN、ホットスポットもないところではAirH"で接続??とその接続状況が毎回変わるのが当たり前になってきている。筆者が愛用している「IBM Access Connections」を利用すると、タスクバーからのプルアップメニューで今現在、自分のいる環境を選択するだけで、自動的にその通信環境を選択・設定してくれるので超便利だ。特に、ホテルやホットスポットでモバイルPCを利用するときには、ふだん「共有設定をオン」にしていても、その場所選択をすると、自動的に共有設定を一時的にオフにする設定もできるので、機密管理の点からも利用価値がある。IBMサイトから無料でダウンロードできるので、ThinkPadユーザーなら超お薦めのツールだ。


アクセスコネクションの画面。PCの前に共有設定を不能にするファイアウォール・イメージの壁ができていることに注目!

サービスを売る、日本のトップホテル

深夜まで部屋で仕事だったので、翌朝の食事はルームサービス。「快適」の一言に尽きる
 日本を代表する伝統的なホテルである「ホテルオークラ」は、ブロードバンド時代の伝統的な超高級ホテルの在り方やベクトルを明確に企業姿勢として示していると言えるだろう。意味のない古さと伝統にしがみついて変わらないホテルではなく、新しい時代に、自らを変えてゆこうとする姿勢を評価したい。

 提供される宿泊プランには、単に部屋を予約する以外に、多くの特典やディスカウントが反映されているセットも多く、必ずしも一般的ビジネスマン、ビジネスウーマンにとって、ただの高価な高級ホテルではないと思う。快適なブロードバンド環境と、閑静な環境、美味しい食事、礼儀正しく親切なホテルマン・ホテルウーマン、それらを総合的に判断し、もし現代の日本でも「サービスがホテルの最大の商品」なら、間違いなく「ホテルオークラ」は、現代日本のトップホテルであると言い切れるだろう。


インターネットアクセスの最初の画面。ここで支払いを了承すればすぐに高速インターネットが利用可能。料金は1日1500円 大きなファイルのやり取りもブロードバンドで楽勝

・ ホテルオークラ
  http://www.hotelokura.co.jp/
・ 関連記事:ホテルオークラ、全室で10Mbpsの接続サービス(Broadband Watch)
  http://www.watch.impress.co.jp/broadband/news/2001/08/20/oukura.htm


(ゼロ・ハリ)
2002/05/22 14:33

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