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ゲストが泊まってデザインが完成するホテル「イル・パラッツオ」
ゼロ・ハリ ゼロ・ハリ
「日本のモバイルキング」、「中年ガジェットキング」など数々の異名を持つ。数多くのパソコン雑誌に執筆。購入した携帯グッズはそろそろトン単位に突入か?


千歳空港から福岡まで、2時間半のフライト

 生まれて初めて、北海道千歳空港から福岡まで全日空の直行便で移動した。2時間半のフライトを国内で体験できるのは、沖縄便を除いてこのルートくらいだろう。国内便にしては長時間のフライトだったが、南風の季節だったので、広島を越え、玄界灘方面からまっすぐ福岡空港に着陸する、最短かつ快適な飛行だった。筆者にとって福岡空港は、大雨の中、3度目の正直でようやく着陸したり、北風の真冬の季節に大きくUターンしながら失速感覚を体験したりなど、何度か散々な目に遭ったところなので、どうしても不安が先に立つ目的地なのだ。


日本のデザインホテルの先駆け「イル・パラッツォ」

映画化されたシェークスピアの「タイタス」を想像する
 博多での宿泊は、いつも駅前の大通りからキャナルシティあたりのホテルの多い地域と決め込んでいたが、今回は初めて夜になると屋台で賑やかな那珂川を越えた。目的のホテル「イル・パラッツオ」は、イタリアの建築デザイナー、故アルド・ロッシ氏が中心になって博多に建設した日本における「デザインホテル」の先駆けだ。国体道路を西鉄「福岡駅」方面に向かって那珂川を渡り、蟹料理専門店「かに通」の正面の一方通行道を左側に入ったところにホテル「イル・パラッツオ」は静かにたたずんでいる。一方通行をそのまま行き過ぎると、川沿いにラブホテルがズラーと並ぶ怪しい雰囲気になってくるので、必ずしも環境はベストとは言い難いロケーションではある。

 図鑑で見たことのある「木星の地肌」のような柄のコンクリートと、グリーンの塗装をされた「剥き出しの鉄骨」とのコンビネーションは、ホテルというより、どこか海外の美術館や劇場に来たような印象を強く受ける。先頃「ライオンキング」の演出家であるジュリー・テイモアが担当し、先頃DVDも発売になったシェークスピアの37戯曲中、最もショッキングな作品である「タイタス・アンドロニカス」の中にイメージとして登場する「ムッソリーニの四角いコロシアム」に雰囲気はそっくりだ。15段の階段を登って正面入り口からホテルに入ると、そこはこぢんまりした重厚なロビーだ。まっすぐ正面奥にはイタリア料理店の「リストランテ・イル・パラッツオ」、右側には巨大な石の柱を隔てて大きな石のテーブルのあるロビー、左側にはチェックイン・カウンターが位置する。インターネットで予約した当日の宿泊は、4階のツインの客室のシングル利用になっていた。


レストランまで見通しの利く印象的なエントランス こぢんまりしたロビーに大きな石の柱、大きな石のテーブル

イタリア風インテリアで広い部屋がより広く豪華に

ドアを開けると外光が差す広い客室の一部が姿を現す
 各階のエレベーターホールから客室に至る廊下のコーナーには、インテリアとしての時計が設置されているが、出かけたり、部屋に戻ってくる時に時間を知るためにも便利に利用できそうだ。客室に入って印象的なのは、大きな幅広のデスクとベッドを始め、全体に低位置に設定されたイタリア感覚のインテリアだ。これらの効果で広い部屋がより広く豪華に見えるから不思議だ。ほとんどのビジネスホテルはもちろんだが、大手の都市ホテルでも、これだけのサイズのデスクを備えているホテルは珍しい。筆者は、最近モバイルPCの枠を越えて、「パソコンによる超整理法」を実践しようと考え、完全に広げると、大きな「TransNote」を持ち歩いている。TransNoteをデスク上でフルオープンしても、全く邪魔にならないホテルのデスクを初めて経験した。これは貴重な体験だ。


広い大きなテーブルと全般に低く作られた家具が特徴だ 大きなテーブルはTransNote全開でも十分な広さ

客室にモジュラージャックやデータポートがない!

通信電話回線の確保が無理だったのでPHSで通信
 残念ながら、「イル・パラッツオ」はインターネット接続サービスに関してはごく一般的な昨今の安価なビジネスホテルを遙かに下回る環境だった。広大なデスク周りにも、ベッドのサイドテーブルの周囲にも、その上にある電話機にもモジュラージャックやデータポートが一切存在しない。

 全般的な設備やインテリアデザインのセンスから考えれば、NYCのアッパーウエストあたりのデザインホテルに近く、ブロードバンドサポートは当たり前、室内にはイーサネットポートが2カ所ぐらいあっても当然といったイメージであるだけに残念だ。

 幸いにもホテルの客室ではPHSの電波の強度が十分だったので、この日はP-in Comp@ctで間に合わせてしまった。もしもP-in Comp@ctを持っていなくて、客室内の電話機本体からモジュラーケーブルを抜き取ることができたなら、ケーブルを抜き取りパソコンのモデムポートに挿入するという、ここしばらく体験したことのない原始的な方法を取らざるを得ない状況だった。


ベストな高さのベッドは寝起きが楽だ ナイトテーブル上の電話機にもデータポートは発見できなかった

バスルームは超快適

洗い場の広いバスルームは快適そのもの
 インターネット接続環境ではかなり愕然としたが、ホテル「イル・パラッツオ」のバスルームの快適さはそれを差し引いてもお釣りがくるくらい快適だ。標準的なサイズのバスタブとその何倍もある洗い場のスペースが最高だ。普段はエコノミーなビジネスホテルも決して悪くはないが、バスタブにお湯を張ってゆっくり温もろうとしても、トイレの便器が目と鼻の先に位置することも珍しくない。これでは、疲れは取れそうにないか、シャワーだけで早々に入浴は切り上げたい気分になるのが普通だろう。ホテル「イル・パラッツオ」の浴室ではトイレを眺めることなく、広い洗い場でゆっくりと体を洗い、バスタブでゆったりとした時間を過ごすことが可能だ。


ホテル内「宮越屋珈琲店」でネルドリップのコーヒーを味わう

 ホテルのコーヒーショップでこだわりを持っているところは少ないが、ホテル「イル・パラッツオ」には、札幌で自家焙煎工場を持つ本格的珈琲店として有名な「宮越屋珈琲店」がある。世界のブランドメーカーから選んだカップで飲むネルドリップの珈琲は格別だ。翌日の朝食は冒頭でご紹介した「リストランテ・イル・パラッツオ」でとることとなった。天井が高く、中央にオープンキッチンを備えたダイニングレストランだ。和食を選択した筆者に出されたのは地元の名物である辛明太子を添えた一風変わった「イタリアンテイストの和朝食」だった。筆者にはちょうど適量だったが、朝から豪快に食欲のあるロードウオーリアには少し物足りないだろう。

 ホテル「イル・パラッツオ」はこじんまりとしてこだわりをもった日本では珍しいデザインホテルのひとつだ。今後は、ホテル業界と言えども避けては通れない「顧客サービスの為のIT化」が大きな課題となるだろう。ひとまずはゲストルーム内にモデムポートの設置と、できれば近い将来、より高速のブロードバンドネットワークやワイヤレス通信をサポートして欲しい。

 はぶふぁん!!


調理場を中央に位置したキャパのあるダイニングでの朝食は快適 よーく考えると変な和朝食だが、まあこの際だから良いか……

・ ホテル「IL PALAZZO(イル・パラッツオ)」
  http://www.jasmac.co.jp/hotel/illpalazzo/index.html


(ゼロ・ハリ)
2001/11/02 15:01

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