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第12回:「インターネット対応ホテル」 渋谷エクセルホテル東急の実力は!?
ゼロ・ハリ ゼロ・ハリ
「日本のモバイルキング」、「中年ガジェットキング」など数々の異名を持つ。数多くのパソコン雑誌に執筆。購入した携帯グッズはそろそろトン単位に突入か?


 筆者の質問にフロントの女性は自信を持って、「はい、当ホテルは全室インターネット対応です!」答えてくれた。ここは東京渋谷、2000年の春に鳴り物入りでオープンし、東京近辺の電車の吊り広告でも、「インターネット対応」を大きく宣伝した「渋谷エクセルホテル東急」の小さなロビーなのだ。横浜在住の筆者は、基本的に関東圏のホテルに泊まる必要性はまず無い。しかし、この連載を見て頂いているかなりの数にのぼる読者は東京近郊にビジネスで出張することも多いはずだ。そこで、ビジネスで上京したサラリーマンになりきって東京都下の出張用ホテルの評価・紹介もできるだけ行なっていきたいと考えている。人もそうだが、ホテルも外観や場所、宣伝だけでは本当の価値はわからない。推薦するつもりで宿泊しても、実際にはその逆になってしまう事もある。


「渋谷エクセルホテル東急」は井の頭線渋谷駅の真上

 渋谷は、まったくよそ者の筆者には、どちらかと言えば、古くからそこに住む人や愛着を持ち続けている人達が小ぎれいに住み、良い街にしようとするベクトルより、他の地域から訪れて、街を汚していくデイトリッパーのベクトルが圧倒的に高い街に映る。しかし残念だが、デイトリッパーが落とすお金で街がある程度潤っているのもまた事実なのだろう。早朝の渋谷駅周辺は、六本木と似て、通りはゴミ箱をひっくり返したようなありさまだ。間違いなく10年前のニューヨークよりダーティーだと思える。東京都にも日本版ジュリアーニ市長の登場が必要のようだ。

 そんな渋谷の「井の頭線 渋谷駅」の真上に「渋谷エクセルホテル東急」はある。筆者がこのホテルを東京編の第1番目のホテルに選んだのは、ごく普通のビジネスマンが出張時に宿泊するには多少値は張るが、2000年春の創業時に、多くのメディアを使った「インターネット対応」という宣伝キャッチフレーズに魅せられたからに他ならない。しかし、冒頭にあるように直接フロントに出向き、受付の女性に詳しく聞いてみると、「インターネット対応」というのは、インターネット対応専用モジュラージャック完備」ということだった。しつこく「専用」の意味する所を確認したところ、「各客室には音声用の一般的な電話回線以外に、もう1本インターネットに接続するための2番目の回線が用意されている」ことだという。納得出来ない筆者は、もう一度フロントの女性に確認したが説明は、変わらず同じだった。


「インターネット対応ホテル」の意味

マークシティイーストにある渋谷エクセルホテル東急は25階建て
 持ち帰ったホテルのパンフレットに挿入されている料金表の英語表記を見て面白いことに気が付いた。そこには、明快に英文で「Two-Line telephones with data-ports」と記載されている。少なくともこのホテルに宿泊する英語圏の外国人達は、確実にその内容がどういうことなのか理解できる表記になっている。このコラムをご覧の皆さんの多くも、この英文表記なら正しく理解出来ると思う。ところが英文と対面してある日本語の表記では、「インターネット専用モジュラージャック」完備と記載されている。電話のモジュラージャックが客室に存在することでインターネット対応と言えるなら、日本はほぼ全所帯がインターネット対応で、日本のほとんどのホテルはインターネット対応、新築のマンションは全てインターネット対応マンションになってしまう。

 一方的な思い込みかもしれないが、ホテルのオープン時のPRにあった「インターネット対応」と言葉から筆者は、名古屋の「サイプレイスガーデンホテル」のような全室イーサネットLANポート装備や、全室ISDN回線装備、あるいはケーブルTVでウェブサーフィンし放題、それとも一流の都市ホテルのビジネスセンターのようにいつでもだれでも使える「インターネットレディ」の設備があったりを想像してしまったのだ。横浜の田舎者の筆者にはまったく理解できないが、どうも渋谷あたりでは、モジュラージャックが1本余分にあることはホテルの大きなアドバンテージなのかもしれないと思ったりもした。

 しかし、どうしてもまだ納得できない筆者は、インターネットで同社のサイトを探し、実は限定されたフロアらしいが、ケーブルTVインターネットの設備のある客室が相当数あることを知った。これでホテルのオープン時の「インターネット対応」という大宣伝の「謎」がやっと解明できたしだいだ。しかしもう1度、渋谷のホテルまで出向く気力はなく、今度は電話で確認と宿泊予約をしようと考え、ウェブページに掲載されている電話番号にダイヤルしたが、ホテルのスタッフが筆者の電話を取り上げたのは、なんと9回目のリングだった。まさに筆者が、間違い電話をかけたかと思い、受話器を置こうとしたタイミングだ。別の日に、今度はホテルの代表番号に電話をかけたことがある。交換手の出るのは早かったが、交換手から回されたフロントでは、同じく10回近く呼び鈴が鳴っても誰も出ず、再び交換手に戻されるという一幕もあった。これは過去にニューヨークの一流ではないホテルで、時差ボケで目覚めた深夜の3時過ぎににルームサービスを頼んで、係りの人間が応答するまでのリング回数を遥かに陵駕している「ワールドワイドワースト記録」なのだ。


 やっと繋がった電話の向こう側では、相変わらずインターネット関連の話題になると、以前のフロント係と同じく、筆者の質問はほとんど理解できず、一つ一つ受話器を置いて誰かに確認している様子だ。少しは理解していると思われる、電話の向こうで聞かれている当人が電話口に出る余裕もないようだ。しかし、幸いなことに、結論は同社のウェブに掲載されている情報の方がが正しいようだった。何よりも最初のフロントの女性があまりにも自信を持って、「インターネット対応というのは電話回線が2本のことです」と言い切られたので、本来ならその部屋に宿泊し、「あまりにも貧しい東京のインターネット対応ホテル事情」というタイトルの間違った記事を危うく書いてしまうところだった。無駄を省き、できる限り少ない人数でコストを切り詰める経営方針は悪くはないが、ホテルの顔であるフロントのレスポンスや商品知識は、それよりも遙かに重要なはずだ。もう少し余裕のある人数と、素晴らしい設備に見合った教育でホテルの本来の顔を正しく演出すべきだろう。このままでは宝の持ち腐れになってしまう

1階ロビー 3階ロビー
5階にあるホテルのロビーには、マークシティ1階のエレベーター(写真左)か3階のクラブのような、ちょっとクールな入り口(写真右)から上がる
1階ロビー 3階ロビー
綺麗な5階のロビーは日中は結構混雑する。この時は午前7時なのだ 7階~24階の客室にはロビー階で別のエレベーターに乗り継ぐ
1階ロビー 3階ロビー
客室フロア以外のロビー階に集中している自販機室は便利だ 朝刊はエレベーターホールでお気に入りのモノを自由にゲットできる


「一晩のハイな渋谷クルーズ」に最適?

 渋谷地域の大きな総合開発の成果のひとつに、ホテル、オフィス、ショッピングモールが同居する「マークシティ」がある。約3000人が就業する集合オフィスのある「ウエスト」タワーと「イースト」タワーの高層2棟が隣接して建ち、両タワーを繋ぐように「マークシティアベニュー」と呼ばれるショッピング・グルメゾーンが広がっている。イーストタワーにある「渋谷エクセルホテル東急」は日本全国にビジネスホテルを展開する「東急イン」系列のホテルだ。東急インに比較しても少し豪華で、そのためか、宿泊料金も多少高めだ。しかしロビーは狭く、なぜか前述のようにフロントの対応人数を絞っているために、ちょっとチェックイン客が重なると、チェックインで待たされることになる。

 評価できるのは海外のホテル並に「禁煙フロア」を用意しているところだろう。また、専用カードキーを持つ宿泊客だけが、その階でエレベーターを降りられる「女性専用フロア」の存在は、渋谷のこの付近の環境を考えると当然のことなのかもしれないが、100%の完全な安全を保証出来ない限り、「女性専用フロア」の存在は、本来なら宿泊客にのみ知らせて、誰でもが入手できるパンフレット等で、その存在やフロアの在処までを大きく宣伝告知するべき性格のものではないだろう。これでは先進国から日本の安全管理常識やホテル経営者のセンスを疑われても仕方のない状況だ。

 渋谷エクセルホテルは、都会の雑踏やダーティな近隣が気にならない非リピーターの出張者や、東京見物や近隣でのショッピングが目的の女性グループにとって、「一晩のハイな渋谷クルーズ」にはベストロケーションかもしれない。筆者の宿泊した日にも、やけに関西からの女性客グループが目立った。


ラッキーにもツインの角部屋になった。遠く新宿の高層ビルも見える アジアンテイストの街「渋谷」。でも人は多すぎる

お目当てのインターネット接続の使用感

 では、本題のインターネット環境や客室の紹介に移ろう。筆者の宿泊したのは、比較的低層階で、真下に渋谷駅のハチ公や道玄坂を見下ろせるコーナーのツインルームだった。深夜になっても自称ストリートミュージシャン達の演奏がどこからともなく聞こえてはくるが、睡眠の妨げになるほどではない。部屋は狭過ぎず、広過ぎず、シャワーも弱過ぎはしないが、疲れが取れる程パワーのある快感はない。窓に最も近い場所に小さなデスクが備え付けられており、ACコンセントと外線へのRJ11モジュラージャック、そして目的のケーブルTVインターネットに接続するための、RJ45ジャックがデスクのコーナーに用意されている。すでに自宅や会社などで、ルーター経由でインターネットを接続するように設定済みのモバイルノートなら、単にイーサーネットカードからのケーブルをデスクのRJ45ジャックに挿入するだけで即、高速インターネットが利用できて快適だ。出張用に短いカテゴリー5のケーブルを用意していればより便利かもしれない。筆者は、普段からモバイルノートPC本体のUSBポートに接続する「USBイーサネット・アダプタ」を使用しているが、ごく普通のイーサネットPCカードでも操作は同様だ。渋谷エクセルホテル東急でケーブルTVインターネットを利用するには、「モバイルノートPC」、「イーサネットカードかUSBイーサネット・アダプタ」そして、適度な長さの「カテゴリー5ケーブル」の3つがあれば大丈夫だ。


イーサネット経由でケーブルTV高速インターネットが体験できる デスクにあるRJ45ジャック、壁面にはRJ11とACコンセント

ツインルームのベッドは極めて標準サイズだが、清潔で気持ちよい 冷蔵庫の中身は飲み放題だが、ビールを飲まない筆者にとっては……

 残念ながら、普段は超高速のケーブルTVインターネットでも、23時を過ぎ、テレホーダイタイムが始まる頃からは、ケーブルTVネットワークの外側は急激なインターネット人口の増加の為に、身動きが取れない程混み合ってしまう。結局のところ、運が悪ければ、ごく普通のISDN回線や56kbpsモデム以下の通信スピードになってしまうのである。大きなプログラムファイルのダウンロードや画像満載のプレゼンテーションファイルのアップロードなどは、時間帯を選んで行なう必要があるのは、どこにいても変わりないようだ。  ビジネスでインターネットを長時間快適に使いたければ、深夜よりも、渋谷に唯一の静寂が訪れる早朝が得策だ。人が多く、奇をてらった店名やこけおどしのウンチクが多く、筆者の好みではないが、夜は、ホテルのすぐ下の4階にあるマークシティアベニューで時間を潰すのも策かもしれない。ショッピングと食事の両方を同時に楽しめる。もちろん、へそ曲がりの筆者は道玄坂上辺りにある無国籍料理レストラン「ガネーシャ」で友人達と食事をした。朝食は、常に宿泊ホテルのレストランでとるのが原則の筆者だが、ホテルのロビーに置いてあったパンフレットで見た最上階のレストランが窮屈そうだったので、生まれて初めて、ホテルと同じイーストタワー3階にある憧れの「スターバックスコーヒー」に入ることができた。これで、筆者も巨大都市東京「サイバーメトロ」のロードウォーリアだぜい!! ……。

 では次回も「はぶふぁん!!」

バスローブ カフェ
部屋に備え付けのバスローブと寝間着、リラックス出来て快適だ ブレックファーストにふさわしいカフェは午前10時から営業、残念

※ 編集部注:この原稿は9月に筆者が宿泊した時点で執筆したもので、ホテルの対応については、あくまで筆者宿泊時の事実を述べたものです。現在、時間の経過によってホテルの対応などが向上している可能性もあります。



■URL
・渋谷エクセルホテル東急
http://www.tokyu.co.jp/inn/hotel/shibuyaex.html



(ゼロ・ハリ)
2000/12/19 00:00

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