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Act.5 「ユア・ハンズ・オンリー 2001」
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2001年のケータイ市場を振り返る
今年も残すところ、あとわずか。2001年も各事業者及びメーカーから魅力的な端末やサービスが数多く登場し、日本のケータイ市場は6000万契約を突破するところまで成長した。しかし、その一方で急速に成長した市場であるがゆえの問題点がいくつも指摘され、2002年への課題も残した。今回は2001年のケータイ市場を振り返りながら、2002年への展望を探ってみよう。
デザインと使いやすさが追求された端末
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元祖折りたたみのNEC製端末(写真はN503iS)
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2001年のケータイ市場にはさまざまな注目ニュースがあるが、まずはじめに、ユーザーにとって最も身近な端末のデザインや機能について見てみよう。
昨年あたりから方向性はすでに見えていたが、端末のデザインとしては、やはり「折りたたみデザイン」が圧倒的な主流になった。たとえば、NTTドコモの50x/2xxシリーズを見てみると、昨年まではN502itやP209iSくらいしか折りたたみデザインの端末がなかったが、503iシリーズでは主要5メーカーの計10モデルのうち、7モデルが折りたたみデザインを採用している。この傾向は他の事業者でもほぼ似通っている。ひと昔前まで「折りたたみのN」と言われるように、折りたたみデザインはNECのお家芸とされていたが、今やほとんどのメーカーが折りたたみデザインを手掛けるようになり、折りたたみデザインはすでにNEC製端末の専売特許ではなくなりつつある。とは言え、NECには折りたたみデザインを10年間、手掛けてきた実績があり、一日の長があることも見逃せない。
逆に、一気に減少したのがフリップ式デザインだ。折りたたみデザインとストレートデザインの良さを兼ね備えたデザインとして、昨年までは一定の支持を集めていたが、今年発売されたモデルを見ると、フリップ式デザインを採用する端末はごく少数になっている。印象に残る端末としては、三菱電機製「D503i」と富士通製「F671i」くらいだ。これに対し、数こそ減ったものの、ユーザーの支持がそれほど失われなかったのはストレートデザインの端末だ。「アンチ折りたたみデザイン」というユーザーもいるが、スーツを着用したビジネスマンなどにとってはストレートデザインの方が携帯しやすいというメリットもある。ストレートデザインの端末は液晶ディスプレイの大画面化が難しいという制約もあるが、こうした制約の中で着実に仕上げた端末は今後も一定のシェアを確保することが予想される。
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FOMA N2001では業界で初となるカラー有機ELディスプレイが採用された
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次に、ケータイを構成する部品の中で最も注目されている液晶ディスプレイについて見てみよう。昨年まではカラー液晶搭載がトレンドと言われていたが、今年はすでにモノクロ液晶を搭載するモデルが数機種しか登場せず、完全にカラー液晶が当たり前の時代になってしまった。海外市場ではまだカラー液晶搭載モデルが数少ない状況を考えると、異常とも言えるほどの普及ぶりだ。ほぼすべてのモデルでカラー液晶が搭載されたことにより、ユーザーの注目は「カラーかモノクロか」からカラー液晶の性能や品質に移行しつつある。たとえば、液晶パネルの方式については、STN液晶からTFT液晶やTFD液晶に移行し、色数も256色から4096色や6万5536色表示が可能な端末が増えてきている。照明は屋外での視認性を考慮し、フロントライトや半透過型が主流になりつつある。iモーションやezmovieのように、動画コンテンツが増えてくることを考慮すれば、今後はTFT液晶やTFD液晶のように、応答性能の高い液晶パネルが主流になることは確実だが、その一方でコストや省電力性を考慮し、STN液晶を改良したGF液晶(シャープ)などが普及モデルを中心に搭載される可能性も高い。
また、NTTドコモがFOMA試験サービスなどで投入したNEC製端末「N2001」には、次世代のディスプレイとして期待されている「有機EL」が搭載された。有機ELは自己発光が可能なため、バックライトが不要になり、薄型化が実現しやすいなどのメリットを持つ。残念ながら、後継モデルの「N2002」では通常の液晶ディスプレイに戻ってしまったが、生産性やコストパフォーマンスが改善されれば、2002年以降にも搭載する携帯電話が登場する可能性は高い。
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ソニー製端末には予測変換機能「POBox」が搭載された。フロントジョグとのマッチングもぴったり
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一方、端末に搭載される機能面はどうだろうか。メール機能やブラウザが搭載されるのは今や当たり前になっており、各端末の工夫はメールやブラウザをいかに使いやすくするかに移行している。たとえば、今年に入って増えてきたのがメールをフォルダで管理する機能もそのひとつだ。PCのメールなどと同じように、フォルダに振り分けることにより、目的のメールを見つけやすくしており、メールアドレスなどから自動振り分けを実現している端末も増えている。メールの一覧をメールアドレスやタイトル、日時などで切り替えて表示できるようにするなどの工夫も見られる。また、メールと同じように、ブックマークについてもフォルダで管理できる端末が登場しているが、携帯電話やPHSで閲覧できるサイトが増えてきた状況を考えると、今後は必須の機能になりそうだ。
しかし、こうしたメール機能やブラウザでの工夫以上に、今年注目を集めたのは日本語入力システムだ。多くの携帯電話・PHSは独自の日本語入力システムを搭載していたが、今年はパソコンなどで鍛えられてきた日本語入力システムを搭載する端末がいくつか登場した。代表的なものとしては、ジャストシステムの「ATOK Pocket」、バックスの「Compact VJE」、オムロンソフトの「モバイルWnn(うんぬ)」などが挙げられる。これらのパソコン環境などから移植された従来の日本語入力システムに比べ、辞書や変換効率が優れており、メール作成なども比較的、快適になる。
これに対し、日本語を入力する方法そのものを大きく変えたのがソニー製端末に搭載された予測変換入力システム「POBox」だ。ボタンをくり返し押して文字を入力するマルチタップ方式に比べ、ボタンを押す回数が明らかに減るため、少ない労力でメールなどを作成することが可能だ。ソニーお得意のフロントジョグとのマッチングが良いこともPOBoxが支持された要因のひとつだろう。どの入力方式が絶対的に優れているとは言い切れないが、パソコンなどに比べ、今ひとつの感が強かった携帯電話・PHSの日本語入力がこれらの新システムや新方式の登場により、大きく変わろうとしている。2002年はユーザーの注目度も高まり、日本語入力が端末選びの重要なポイントのひとつになることが予想される。
Java搭載ケータイの登場
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iモードのiアプリ(写真はF503i標準搭載の「カレンジュール」)。いわゆる「勝手iアプリ」も数多く登場した
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さて、各事業者が提供するサービスについて、振り返ってみよう。2001年の携帯電話市場において、最も注目を集めたサービスと言えば、各事業者がスタートさせた「Java」だろう。NTTドコモが「iアプリ」、auが「ezplus」、J-フォンが「Javaアプリ」という名称でサービスを開始し、同時にJava搭載端末も発売された。
携帯電話におけるJavaは簡単に言ってしまえば、パソコンのようにアプリケーション(機能)を追加するためのものだ。たとえば、昨年あたりは各社の端末に独自のゲームが搭載されていたが、Java搭載端末になれば、ゲームを遊びたいユーザーは公式サイト(もしくは勝手サイト)からダウンロードして、端末上で遊ぶことができる。Javaアプリケーションにはゲーム、待受画面更新ツール、電卓などのアクセサリー、株価などの情報配信ツールなどが公開されているが、容量的な制約もあり、今のところはゲームが主流となっている。
また、各事業者から提供されたJava環境は、考え方の違いも表われた。NTTドコモは容量こそ少ないものの、最初の段階から仕様をオープンにしたことにより、いわゆる「勝手iアプリ」が数多く登場した。しかし、端末ごとに仕様や動作速度が異なったため、開発者は各端末ごとに合わせたiアプリを開発しなければならなかった。これに対し、auやJ-フォンは事業者内での基本的な仕様を統一し、段階的にオープン化を進めている。また、auはエージェント機能、J-フォンは3Dポリゴンとスプライト機能により、NTTドコモのiアプリとの差別化を図っている。なかでも表現力という点においては、J-フォンの3Dポリゴンとスプライト機能が大きなアドバンテージを生み出している。
携帯電話の可能性を大きく拡げられると期待されたJavaだが、2001年はまだ序章に過ぎず、十分な活用ができているとは言い難い。特に、現在提供されているJavaアプリケーションの多くはエンターテインメント系に偏っており、ビジネス系やユーティリティ系があまり提供されていない。今後、携帯電話におけるJava環境がどれだけ普及するのかは、オフィスのパソコンや後述する位置情報サービスとの連携など、ビジネスシーンでも活用できるJavaアプリケーションの登場が必須となると予想される。
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auはGPSを利用した位置情報サービス「eznavigation」をスタート
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Javaと並び、今年、注目を集めたサービスとして挙げられるのが「位置情報」を活用したコンテンツだ。位置情報を活かしたコンテンツについては、すでにDDIポケットの「H" LINK」やNTTドコモのPHSで「いまどこサービス」などで実現されているが、携帯電話では2000年10月からJ-フォンが「ステーション」を一部地域で開始し、今年4月から全国に展開した。NTTドコモも「iエリア」を7月から開始し、J-フォンに追随している。ステーションやiエリアは基地局単位でコンテンツを提供するものだが、ステーションが自動的にユーザーの端末に配信されるのに対し、iエリアは公式メニューにアクセスしなければ、コンテンツを利用することができないという違いがある。いずれもPHSに比べ、カバーするエリアが広いため、現在位置を測定するというより、その地域のタウン情報などを見るという位置付けになっている。ただ、基地局の密度が1.5GHz帯を利用するJ-フォンと800MHz帯を利用するNTTドコモで異なるため、コンテンツとしての細かさや完成度はステーションの方が一枚上手と言えそうだ。
これに対し、位置をきちんと測定し、カーナビならぬ「人間ナビ」に近い位置情報サービスを可能にしたのがauの「GPSケータイ」だ。GPSケータイは米Qualcommが開発した「gpsOne」の技術を利用したもので、最も状態が良ければ、数メートルの誤差で現在位置を捕捉することができる。そのため、端末上に地図を表示して、目的地までの道案内をするといった高度な位置情報の活用が可能だ。まだコンテンツが充実していないが、現時点で最も注目度の高いサービスであることは間違いない。こうした位置情報をベースにしたコンテンツは、これからの携帯電話の進化に欠かせないものと見られており、2002年は各社とも本格的に位置情報を活かしたコンテンツやサービスを提供してくる可能性が高い。
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NTTドコモはFOMA向けの動画配信サービス「iモーション」を開始した
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また、コンテンツでは従来から着信メロディや待受画面などが人気を集めていたが、この年末から動画の再生が可能なコンテンツが提供されている。NTTドコモがFOMA向けに提供する「iモーション」、auが提供する「ezmovie」だ。いずれも10~15秒程度の動画を転送し、端末上で再生することができる。映像圧縮の方式はともに「MPEG4」を採用しているが、音声圧縮の方式が異なるため、互換性はない。通信料は動画データのサイズや契約する料金プランなどによって異なり、およそ20~200円程度となっている。実際に試してみると、待受画像を見るときと同じ感覚で手軽に見ることができる。コンテンツの内容次第では来年、ブレイクする可能性大だが、逆に料金プラン次第ではアッという間にパケット通信料がかさんでしまいそうな危険なサービスとも言える。
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DDIポケットは定額制のデータ通信サービス「AirH"」をスタート
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データ通信の分野では、後述する次世代携帯電話サービス「FOMA」で最大384kbpsという高速パケット通信サービスが実現されたが、それ以上に話題になっているのがDDIポケットの「AirH"」だろう。月額5800円を支払えば、データ通信が使い放題になるというサービスは通信速度が32kbps(パケット通信)とあまり高速ではないものの、モバイルの利用スタイルを大きく変える可能性を秘めている。サービス開始当初に伝えられたパフォーマンス不足も徐々に解消されており、法人利用なども拡大しているという。携帯電話でも将来的に定額制の導入が検討されているが、実質的にはパック料金などを併用した準定額制(一定時間まで定額で利用可能)になると見られており、当面はモバイルでの定額制サービスはAirH"の独壇場になる可能性が高い。
次世代携帯電話サービスは始まったが……
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いよいよ始まったNTTドコモの次世代サービス「FOMA」。まずはネットワークの整備が必要
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今年の移動体通信業界において、世界中から注目を集めたものと言えば、やはり、NTTドコモの次世代携帯電話サービス「FOMA」だろう。当初は通常サービスとして開始されることが予定されていたが、実際には今年6月からの試験サービスを経て、10月から通常サービスとして提供されている。
次世代携帯電話については、ここ数年、一般雑誌や新聞、テレビなどで、随分と騒がれてきたが、いざフタを開けてみると、かなり厳しい状況と言わざるを得なかった。メディアでさまざまな夢物語が語られてきたが、それが現実となって見えてきたとき、あまりのギャップの大きさに驚いた影響が出たのか、本誌のアンケートでは64%の読者が「現時点でFOMAを買うつもりはない」と答えている。さんざん煽り立てたメディアのコメントでも聞いてみたいものだ(笑)。
そんなイジワルな話はともかく、FOMAについてはまだまだ課題が多い。試験サービスのときよりも改善されたとは言え、ハンドオーバーはまだ不安定であり、iモードの接続も失敗することが非常に多い。これが「ときどきつながらない」のではなく、「つながらないことの方が多い」というレベルだから困る。もちろん、利用できるエリアもかなり限られており、当分の間は全国レベルで使うことができない。注目のテレビ電話も面白いサービスではあるが、接続できる相手が限定されているのが難点だ。たとえ、相手がFOMAであったとしても必ずしも対応端末を使っているとは限らないからだ。
FOMAが不安定である要因には、さまざまなものがあると言われている。基本的に電波は周波数が高くなればなるほど、直進性が強いという特性を持っており、FOMAで利用されている2GHz帯は従来のPDCデジタル携帯電話の800MHz帯よりも障害物の影響を受けやすく、不感地帯ができやすい。また、FOMAで採用されているW-CDMA方式は、新しい方式であるため、技術的な蓄積がまだ少なく、端末などに搭載される半導体なども新たに開発されたものが多い。つまり、約10年間、利用されてきたPDCデジタル携帯電話とは、とても同じ土俵で語ることができるレベルにないわけだ。
FOMAには最大384kbpsのパケット通信やテレビ電話など、魅力的な面もあるが、少なくとも現時点では国内でサービスされている携帯電話・PHSの中で、最も不安定かつ厳しいサービスという印象は否めない。もちろん、「だから次世代はダメ」ということではなく、周波数利用効率の面などから考えても将来的に次世代携帯電話が主流になることは間違いない。しかし、そのためにはネットワークの改善が必須であり、サービスやコンテンツもPDCデジタル携帯電話に遜色のない程度に充実させる必要がある。
課題の多かった2001年
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今年一番の問題は「迷惑メール」。2002年は業界を挙げて、この問題に取り組まなければならない
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新しい端末やサービスが次々と登場した2001年だったが、その一方で課題も数多く指摘された1年だった。
まず、課題の筆頭格として挙げられるのは、いわゆる「迷惑メール」の問題だ。今年の春頃までは「出会い系サイトの宣伝メールが増えてきたね」というレベルだったが、最近では実用に支障を来たすほどの迷惑メールが届く。ちなみに、筆者が所有するNTTドコモの契約回線の内、1つを意図的に「電話番号@docomo.ne.jp」の形式にしておいたが、11月末には1日に100通もの迷惑メールが届いている。もちろん、今どき「電話番号@docomo.ne.jp」で使う人はほとんどいないだろうが、「任意の文字列@docomo.ne.jp」に変更しても数十通の迷惑メールを受信しているというケースもあり、もはやiモードのメールは実用性を失いつつある。
こうした状況に対し、ユーザーが発信元メールアドレスを指定して、受信を拒否するなどの対策をできるようにしているが、迷惑メールの発信元も巧妙化しており、指定受信拒否だけでは対抗できなくなりつつある。各通信事業者もサーバの段階でブロックしたり、法的手段に訴えるなどの対策を講じているが、実際には迷惑メールはなかなか減っていないのが現状だ。行政レベルでは迷惑メールを禁止する法案を準備していたり、既存の法律で発信する業者を処罰しようとする動きも出てきている。
迷惑メールに対抗する特効薬はなかなか見つからないが、2002年は業界を挙げて、この問題に取り組まなければならない。たとえば、現在は各事業者が個別に対策を講じているが、事業者が相互に連絡を取り、発信元の情報をデータベース化したり、各事業者が共同で法的手段に訴える方法も考えられる。また、迷惑メールの発信元のプロバイダを通じて、発信者に警告を促したり、サービスの利用を停止させることもできるはずだ。こうしたプロバイダの段階での発信抑制は、すでにNTTコミュニケーションズが同社のサービス「OCN」で窓口を開設している(残念ながら、ホームページ上で積極的にはアナウンスしていないが)。今後、他のプロバイダも同様の対応を取ることが期待される。
ただ、発信元の特定には、メールのヘッダ情報が必要になる。auとツーカーが提供するEZweb(ezweb@mail/ezwebmulti)は届いたメールを他のメールアドレス(プロバイダなどのメールアドレス)に転送できるため、ヘッダ情報を確認しやすいが、iモードメールやJ-スカイメールはヘッダ情報を削除して配信しているため、正確なヘッダ情報を知ることができない。できることなら、NTTドコモとJ-フォンも同じように転送サービスを提供して、正確なヘッダ情報を得られるようにできないだろうか。
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度重なる回収で話題となったSO503i。バグへの対処法も検討しなければならない
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迷惑メールとともにクローズアップされたのが端末の不具合と回収だ。今年の本誌のバックナンバーを検索してみると、不具合発生の情報はNTTドコモが10件、auとツーカー、アステルが各1件となっている。また、不具合とは言えないが、auは次世代サービス「CDMA2000 1x」の導入に伴うネットワークの改善により、一部の端末でPacketOne64が利用できなくなるため、過去に販売した15機種のソフトウェアの改修も行なっている。
こうした端末の不具合が起きる原因として、携帯電話・PHSのサービスが高度化するとともに、端末が複雑化していることが挙げられている。「今の携帯電話はパソコン以上に複雑な部分がある」とこぼす開発者もいるくらいだ。ユーザーとしてみれば、不具合が起きないことを願いたいものだが、よく「バグのないプログラムはない」と言われるように、不具合を完全になくすことはなかなか難しい。今年の不具合情報の頻度から考えれば、発売日直後に最新端末を購入するのもややリスキーな印象が残り、購入する際には少し様子を見てからの方が賢明と言えそうだ。
しかし、こうした不具合が発覚した場合、問題になるのはその対処方法だ。NTTドコモは一連の不具合が起きた端末を「交換」という形で対応したが、その際にユーザーがダウンロードした着信メロディや待受画面、iアプリなどのコンテンツが失われてしまうという問題が指摘された。失われるコンテンツの代償として、購入者に対して送られるダイレクトメールには500円の図書券などが同梱されていたが、ユーザーとしては正当な対価を支払って、コンテンツを購入したにも関わらず、事業者側の都合でコンテンツが失われるという理不尽な状態が続いていたわけだ。ちなみに、auやツーカー、DDIポケット、アステルは、ファームウェアの更新という形で対処しており、基本的に購入したコンテンツは失われない。ユーザーからの不満がかなり大きかったのか、NTTドコモは11月末に「今後、不具合が発生した場合はドコモショップなどでファームウェアを書き換えることで対処したい」という方針を明らかにしており、今後はユーザーが購入したコンテンツも保護されるようになると見られている。
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SDカードスロットを装備したJ-SH51(2002年初頭発売予定)。
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ここ数年、携帯電話やPHSは高機能化したことにより、端末にはいろいろなデータが保存されるようになっている。コンテンツの著作権保護は当然だが、事業者の都合でユーザーに不利益が発生するような事態は避けなければならない。2002年はじめにも発売されるJ-フォンの「J-SH51」ではSDメモリカードを搭載することで、著作権を保護しながら、購入したコンテンツを保存できるようにしているが、今後、こうした外部記憶メディアにデータを保存できる機能を搭載する端末が増えてきそうだ。
ただ、ユーザーとしては、コンテンツ以外にも保存しておきたいデータはいくつもある。たとえば、メモリダイヤルやメール、ブックマークなどだ。これらのデータは市販の携帯電話メモリダイヤル編集ソフトで保存できるが、必ずしもすべての機種で利用できるわけではない。なぜなら、ソフトウェアベンダーは端末を自力で解析することによって、データの読み書きを実現しており、多くの場合、事業者やメーカーからは何も情報が提供されていない。できることなら、事業者やメーカーはソフトウェアベンダーに門戸を開き、一定条件の下で契約を結び、きちんとした情報開示ができるような仕組みを作ってもらいたいところだ。
2002年の各事業者へ
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来春にはFOMAとPDCのネットワークを1つの電話番号で利用できる「デュアルネットワークサービス」もスタートする?
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ここまでは端末とサービスについて、2001年の総括と2002年への展望を紹介してきたが、切り口を変えて、各事業者別に課題と展望を見てみよう。
まず、NTTドコモについてだが、今年は何かと話題になることが多かった。その話題もここまで紹介してきたように、明るいものばかりではなく、問題や課題として指摘されるものも多かった。「最大シェアを持つNTTドコモだから、しかたがない」と見る向きもあるが、業界の盟主であるからこそ、しっかりしてもらいたいという思いも強い。たとえば、一連の不具合騒動や迷惑メール、このコラムでも紹介した「sigmarion II」の問題などを見ていると、NTTドコモが予想以上にユーザーの反応に無神経であることに驚かされる。何か問題が起きたとき、どのような対処をすると、ユーザーがどのように思うかという部分について、NTTドコモはあまりシビアに考えていないのではないだろうか。iモードをはじめ、NTTドコモはユーザーに回線を使わせることについては長けているのだが、ユーザーに対する優しさという点については今ひとつ疑問を持たざるを得なかった。便利で楽しいサービスを提供することは大事だが、ユーザーにどう思われるのかという点についても今一度、考え直してもらいたい。
NTTドコモは2002年早々にもすでに噂されている504iシリーズを投入する見込みだ。FOMAについてもおそらく新端末が登場するだろう。新機種情報については正式に発表され次第、本誌でもニュースとして取り上げる予定だが、気になるのはやはりFOMAの行方だ。
NTTドコモは2002年3月以降、FOMAのサービスエリアを全国主要都市に拡大するとしている。しかし、前述のように現行のPDCデジタル携帯電話のサービスと同等になるにはまだまだ時間を必要とする。全国に広がったからと言って、すぐに「買い」の時期にはならない。ただ、ひとつのターニングポイントになると予想されるのが同社が計画を明らかにしている「デュアルネットワークサービス」の導入だ。デュアルネットワークサービスは1つの電話番号で、FOMAとPDCデジタル携帯電話の端末を利用できるようにするサービスで、試験サービス開始前から計画されていた。実際にどのように両方式を使い分けるのかなど、気になる点は多いが、このサービスが導入されれば、現行サービスから移行しやすくなるはずだ。
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今年前半、最も人気が高かった「C406S」。早々に販売が打ち切られてしまったのが残念
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12月から「次世代サービス」を開始させたauについては、幸か不幸か、今年はあまり表立った課題や問題が表面化しなかった。端末のソフトウェア改修も次世代ネットワークのためのものであり、それほどマイナスイメージは大きくない。cdmaOneのサービス開始以来、2度目となるメールシステムの変更(ezweb@mailからezwebmulti)もメールアドレスがそのまま継承されるなど、移行しやすい環境を整えている。
ただ、端末のラインアップについては、かなり疑問が残る1年だった。たとえば、今年前半、最も人気が高かったソニー製「C406S」の販売を早々に打ち切り、夏から秋に掛けては東芝製「C415T」や日立製「C451H」、カシオ製「C452CA」などが主力として販売されていた。NTTドコモのラインアップに比べると、今ひとつ選択肢が少なかった感は否めない。J-フォンのシャープ製「J-SH07」が6月に発売しながら、年末商戦でも人気機種の地位を保っている状況と比べてもさみしい印象だ。
また、auの端末については正式な発売日が確定していないこともマイナス要因ではないだろうか。せっかく新端末が発表されたのに、誰も知らないうちに五月雨式に出荷されるようでは、ユーザーとしても購入のタイミングを計りにくい。同じ地域の事業者系販売店でも発売日にバラツキがあることが多い。取材している我々でも「あれ? まだ出荷されてないの?」「あ、今日発売だったのね」と戸惑うケースが何度もあった。ぜひ、来年は魅力的な端末をハッキリとした日付で出荷し、着実に販売してもらいたいというのが正直な感想だ。
また、注目の次世代サービスについては、本誌の読者アンケートを見てもわかるように、非常に注目度が高い。特に、GPSケータイについては冒頭でも触れたように、大きな可能性を秘めている。これをどう活かすかはコンテンツ次第であり、EZwebでの有用なコンテンツが充実することを強く期待したい。ezplusについては他社に比べ、今ひとつコンテンツが充実しておらず、セールスポイントのひとつであるエージェント機能も十分に生かし切れていないという印象が残る。GPSケータイ同様、auのサービスはコンテンツが勝負のポイントになるだろう。ちなみに、auでは来春から最大144kbpsでの高速パケット通信が可能な「CDMA2000 1x」のサービスを開始する。W-CDMAを採用したFOMAに比べ、現行サービスのcdmaOneの上位互換になるため、FOMAのような混乱は起きないと言われている。ただ、これも始まってみないことには何とも言えないというのが正直なところだ。
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本誌読者の間でも最も評価が高かった「J-SH07」。他のメーカーにもがんばってほしい
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J-フォンの2001年は地域会社を統合したり、英Vodafoneグループ傘下に入るなど、会社としては非常に慌ただしい1年だった。しかし、市場での反響は上々で、昨年から展開していたモバイルカメラ内蔵端末による「写メール」も着実に浸透した。なかでも今年6月に発売した「J-SH07」は安定した人気を獲得し、初代カメラ付き端末の「J-SH04」以来のヒット作となった。Javaアプリについても前述のように、3Dポリゴンとスプライト機能を搭載したことにより、他社のJavaアプリよりも表現力豊かなアプリケーションの開発を可能にしている。ただ、その一方で今年後半に入ってからメールの遅延が伝えられるようになり、ユーザーからの不満もかなり聞こえてきている。遅延の原因は迷惑メールにあるとされているが、昨年のNTTドコモのiモードのように、サービスの提供そのものに大きな影響が出ないようにする必要があるだろう。写メールの市場に飛びついているのは、熱しやすく醒めやすい世代が中心であることを忘れないようにしたい。
また、端末のラインアップを見た場合、J-フォンも少し調整が必要という印象が残った。現在のJ-フォン端末の主力は写メール対応モデルで、現在は6機種が販売されている。しかし、市場での売れ行きはJ-SH07が突出しており、それ以外のメーカーは横並びの状況に近い。できることなら、シャープ製端末とトップを競い合うような端末の登場を期待したい。ユーザーの選択肢が広がることで、写メールの世界もさらに幅広い層に普及する可能性が高いからだ。
J-フォンは2002年、いよいよ次世代携帯電話サービスの提供を一部のエリアで開始する予定だ。今年後半に入り、一部で「延期するのではないか」といった報道がなされており、その行く末が非常に気になるところだ。次世代携帯電話サービスについては、FOMAの例を見てもわかるように、あまり急いで開始してしまうと、逆にマイナスイメージが尽きかねない。ぜひとも十分な試験運用を行ない、どんなユーザーが移行すべきなのかをハッキリさせた上で、サービスを展開してもらいたい。
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モバイルカメラを内蔵した「TS11」。28.8kbpsのパケット通信にも対応している
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浜崎あゆみをキャラクターに据えることで、若年層への浸透を図ってきたツーカーは、新しい課金システム「P@bit(パビット)」の導入やパケット通信サービスのスタート、64和音対応端末「funstyle(ファンスタイル)」などが話題になった。
funstyleについては非常に興味深いサービスであるものの、特定の端末でしか利用できなかったため、爆発的なヒットには至っていない。P@bitとパケット通信サービスの開始は、これからのツーカーの行く末を担う重要なポイントだったが、タイミングがずれてしまったため、今ひとつユーザーには理解しにくい形になってしまった。しかし、28.8kbpsのPDCパケット通信サービスはEZwebのコンテンツを閲覧する環境として最も高速なもの(auのC5001Tを除く)であり、パケット通信と疑似パケット通信を組み合わせることにより、幅広い環境での快適性を実現している。さらに、端末もモバイルカメラを内蔵した三洋電機製「TS11」を投入することで、同じ1.5GHz帯でサービスを提供しているJ-フォンに対抗しようとしている。
ツーカーは次世代携帯電話サービスを提供せず、現行サービスを拡張していくことで、市場での生き残りを図ろうとしている。FOMAを見る限り、次世代携帯電話サービスには問題が山積しており、当分は現行サービスと入れ替わりそうにない。そういう意味ではツーカーの戦略も間違っていないことになる。しかし、日本はハイエンド指向の強い市場であり、ユーザーの興味を引くための戦略も必要だ。キャラクターだけではなく、ユーザーが興味を持てるようなサービスもぜひ拡充して欲しいところだ。
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久しぶりに発売された通常端末「KX-HV200」。AirH"にも対応しているが、今はまだこの端末でAirH"を利用することはできない
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PHSの市場で最大シェアを持つDDIポケットは、昨年末のfeelH"の勢いを活かしながら、今年の春頃までは順調に推移した。夏には定額サービスAirH"をスタートさせ、予想を上回る反響を得ている。また、DDIポケットのネットワークを利用したMVNO(Mobile Virtual Network Operator/仮想移動体通信事業者)として、日本通信がサービスを開始している。
データ通信の分野では好調なDDIポケットだが、音声通話やコンテンツ閲覧など、通常端末でのサービスについては課題を残している。たとえば、この年末に九州松下電機製「KX-HV200」が発売されたが、通常端末としては約半年ぶりの新製品ということになる。携帯電話のように、毎月、新端末がリリースされるのもやや異常な印象があるが、あまり間隔が空きすぎると、ユーザーから飽きられてしまうリスクを伴う。データ通信端末で着実に収益を挙げることも重要だが、音声通話やコンテンツ閲覧などが魅力的でなければ、国内の移動体通信市場を勝ち抜いていくのは厳しいだろう。特に、コンテンツ閲覧については、そろそろ次の一歩を踏み出して欲しいところだ。2001年に築き上げたデータ通信需要という下地をどのように音声通話の需要やコンテンツ閲覧の需要に昇華させていくのかが2002年のDDIポケットの課題と言えそうだ。
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まぼろしとなった「VisorPhone」(SMARTCOM)。
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電力会社系通信事業者への事業譲渡が相次いだアステルだが、地域によっては定額制のデータ通信サービスなどがスタートしており、法人向けサービスなども開拓されているという。期待された「VisorPhone」の開発が見送られるなど、明るいニュースがあまりないのは残念だが、電力系通信事業者の連携も発表されており、今後は地域に根ざした新しいサービスが提供されることを期待したい。
最後に
随分と長い原稿になってしまったが、今回は2001年の総括と2002年への展望について、いろいろな角度からコメントをしてみた。明るいニュースもあれば、さまざまな課題や問題も指摘され、何かと話題の尽きなかった1年だった。「携帯電話市場は頭打ち」と分析する向きもあるが、今後が楽しみなニュースも数多くあり、まだまだ我々を楽しませてくれることになりそうだ。ただ、契約者数が6000万を超え、日本の移動体通信の市場がひとつの曲り角に来ていることは間違いなく、今まで以上の工夫が必要になるはずだ。
ところで、来年は日本と韓国でサッカーのワールドカップが開催される。移動体通信の市場にはあまり関係のない話を考えられがちだが、実はこれが日本の成熟した移動体通信を世界にアピールするいい機会ではないかと見ている。ワールドカップには世界各国から応援のためにサポーターや関係者が来日するが、こうした人たちに日本の携帯電話やPHSを使ってもらい、知ってもらうことができないだろうか。契約が難しければ、プリペイドやレンタルなどの手段も考えられるはずだ。現在のプリペイド式携帯電話は通常端末に比べると、機能が乏しく、端末もバイリンガルのモデルが非常に少ない。しかし、端末は元々、英数字は表示できるわけで、ちょっとした工夫をすれば、外国人向けの端末や期間限定のサービスを実現できるはずだ。もし、ワールドカップに際し、高度な日本の携帯電話・PHSを体験してもらうことができれば、将来的に日本の事業者やメーカー、コンテンツプロバイダが世界へ打って出るきっかけになるかもしれない。
(法林岳之)
2001/12/27 11:13
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