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Act.12 「今そこにある『おサイフケータイ』」後編
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■ 「おサイフケータイ」始まる!
今年7月からサービスが開始されたNTTドコモのiモード FeliCa。「おサイフケータイ」というコピーとともに、積極的なプロモーションが展開されている。前編ではiモード FeliCaサービスの概要と反響、そのリスクについて説明をしたが、後編では対応端末の機能や実際の利用法などを含めながら、iモード FeliCaの実用性や利便性について考えてみよう。
■ 端末のセキュリティはどうなっているのか
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iモード FeliCa対応の4機種
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前編でも触れたように、iモード FeliCaはソニーが開発した「FeliCa」という非接触型ICカードを搭載し、新しいサービスを提供しようとしている。非接触型ICカードについてはauやボーダフォンも追随すると言われており、これからのケータイを大きく左右するサービスとして期待されている。
では、実際にiモード FeliCa対応端末のセキュリティはどうなっているのだろうか。前編でも触れた通り、今回発売された4機種のiモード FeliCa対応端末は、いずれも電源をOFFにした状態で動作する。NTTドコモとしては利用時にアプリケーションを起動したり、パスワードを入力するといった操作をしなくても使えるようにするため、電源がOFFの状態でも動作するようにしたという。
しかし、紛失や置き忘れなど、本人の手元を離れてしまうと、iモード FeliCaの機能を使われてしまう可能性がある。たとえば、Edyなどの電子マネーサービスを登録した端末を紛失すると、そこに保存されている電子マネーを使われてしまうことも十分に考えられるわけだ。ただ、これは財布を置き忘れたとき、紛失したときと同レベルのリスクであり、iモード FeliCa特有のリスクではないという見方もできる。ユーザー自身の心掛け次第で、対処できることのひとつだ。
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F900iCには、FeliCa機能を使えないようにする「遠隔ロック」「ICカードロック」が用意されている
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こうした置き忘れや紛失に対処するため、4機種の内、F900iCでは2つのICカード関連のセキュリティ機能を提供している。ひとつは「遠隔ロック」、もうひとつは「ICカードロック」と呼ばれる機能だ。
遠隔ロックはすでにPDC方式の端末でも採用されている機能を応用したもので、あらかじめ設定しておいた電話番号から決められた回数の着信があると、端末をロックできる機能だ。F900iCの遠隔ロックでは端末動作だけでなく、FeliCa機能もロックできるため、紛失時などに他人の操作を防ぐことができる。P506iC、SH506iC、SO506iCにも遠隔ダイヤルロック機能が搭載されているが、残念ながら、FeliCa機能をロックすることはできない。
ICカードロックはF900iC上のFeliCaをロックできる機能だ。遠隔ロック機能と連動させることもできるが、端末そのものを操作することでロックすることもできる。ICカードロックが働いている状態では、F900iCのFeliCaの機能は一切、使うことができず、FeliCa対応iアプリも動作しなくなる。もちろん、F900iCを読み取り装置にかざしても何も起きない。ICカードロックを解除するには、暗証番号の入力、もしくは指紋センサーによる認証が必要になる。開発した富士通としては、ICカードロックがされている状態を標準として利用し、FeliCaの機能を使いたいときなどに指紋センサーなどで解除して、使って欲しいと考えているそうだ。
これらのことからもわかるように、F900iCは他のPDC方式のiモード FeliCa対応端末3機種とFeliCa周りの機能や動作が若干、異なる。ただ、これはプラットフォームの違いによるものではなく、元々、iモード FeliCa対応端末に求められる技術要件にこうした端末上のセキュリティ機能が盛り込まれておらず、富士通が一歩、先んじて搭載したようだ。NTTドコモには次期iモード FeliCa対応端末において、こうしたセキュリティ機能の基本的な仕様をきちんと統一し、安心してユーザーが利用できる環境を整えて欲しい。もちろん、他事業者も追随するのであれば、端末上のセキュリティにも十分な配慮を期待したいところだ。
■ おサイフケータイを使うこと=?
では、実際に我々ユーザーは、どのようにiモード FeliCaを使えばいいのだろうか。Edyを例に、具体的な利用シーンを紹介しよう。
まず、今回発売されたiモード FeliCa対応端末には、Edyのiアプリがプリインストールされており、初期設定をすることにより、100円分のEdyギフトを受け取ることができる。つまり、端末を購入し、初期設定さえしてしまえば、Edyが利用できる場所で100円分のお買い物がすぐに体験できるわけだ。
初期設定は非常にカンタンで、Edyのiアプリを起動し、注意事項に同意すれば、Edy番号が発行される。初期設定終了後の画面に「おサイフケータイキャンペーン」という項目があるので、これを選択すれば、100円分のEdyギフトを受け取り、すぐに利用することができる。ちなみに、初期設定を完了する前にEdyのiアプリを削除してしまったときは、ビットワレットの携帯電話用ホームページからダウンロードすることができ、初期設定後はiアプリが端末から削除できない仕様になっている。
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iモード FeliCaにおける「Edy」のサービス概要
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「Edy」のiアプリでは、ユーザーの情報を登録できる
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初期設定が完了すれば、すぐに利用を開始できるが、前編でも解説した通り、Edyレスキューサービスが提供されているので、サービス登録はしておいた方が確実だ。サービス登録では氏名や生年月日、携帯電話番号、メールアドレスを入力するが、このとき、パスワードを登録する必要がある。パスワードは4~12桁の英数字、「-(ハイフン)」、「_(アンダーバー)」が利用でき、オンラインでのEdyチャージや機種変更の際など、ビットワレットのサイトと通信が必要なときに利用する。
次に、クレジットカード番号の登録という項目が用意されているが、これはEdyの電子マネーをチャージするときに利用する。クレジットカード番号を登録しておけば、どこでもEdyのiアプリによる通信を使って、電子マネーをチャージできるわけだ。ただし、このクレジットカード番号の登録は任意であり、必ずしも登録する必要はない。もし、セキュリティなどが不安で、オンラインでのチャージをしたくないのであれば、クレジットカード番号を登録せず、店舗などでのチャージを使うようにすればいいだろう。ただ、Edyを使える店に比べ、チャージに対応している店舗はそれほど多くないので、自分の生活環境にこうした店舗があるかどうかを調べてから決めた方が確実だ。ちなみに、Edyのチャージについては、1回あたり1~25,000円、合計50,000円までチャージできるが、紛失時の心配があるようなら、必要に応じて、数千円程度をチャージするのがいいだろう。
クレジットカード番号を登録することで、不安を覚えるユーザーがいるかもしれないが、クレジットカードからEdyへの入金には前述のパスワードが必要になるため、一定のセキュリティが保たれている。多くのクレジットカードやキャッシュカードは4桁の暗証番号で認証をしているため、より桁数の多いEdyのパスワードはそれよりも安全という見方もできる(多少だが……)。
登録するクレジットカードについては、国内で利用されている大半のものを利用することができるが、クレジットカード国内最大手のJCBは対応していない。ただ、これはiモード FeliCa特有のことではなく、EdyというサービスにJCBが対応していないようだ(一部の提携カードを除く)。余談になるが、NTTドコモはクレジットカード各社と提携して「DoCoMoカード」を発行しており、JCBもその内の一社だ。
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iモード FeliCa端末でEdyを使う場合は、カードタイプと同じ手順となる
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Edyの実際の利用については、従来のカード型Edyと何ら変わるところはない。端末を店舗のリーダライタにかざせば、例のシャリーンという音と共にiモード FeliCaに保存されている電子マネーから支払われる。利用前にiアプリを起動するなど、端末の操作はいらないが、F900iCでICカードロックをしているときは、事前にロックを解除しておく必要がある。もし、電子マネーで足りないときは現金を追加で払うことも可能だ。レシートにはEdyによる支払金額とともに、Edy番号、Edy残高、Edy取引通番などがプリントされる。また、インターネット上でEdyを利用したオンラインショッピングも提供されており、ソニーが販売するパソコン用リーダライタ「パソリ(RC-S310)」を利用すれば、こうしたサービスの支払いにiモード FeliCaを利用することも可能だ。
Edyの残高や登録情報については、iモード FeliCa対応端末にプリインストールされているiアプリで参照したり、変更することができる。利用についての有効期限などもないため、FeliCaそのものが破損しない限り、いつでも使うことができるが、Edyとしてチャージした金額を現金に戻すことはできない。取引の履歴についてもEdyのiアプリで過去6件まで参照することが可能だ。
端末の機種変更の際の対応については、すでに報じられている通り、変更前に電子マネーをビットワレットに預け、変更後に新端末に戻すという手順を踏む。この際、お預かり手数料として105円が掛かり、お預かり期間は90日間までとなっている。FOMA端末でFOMAカードを差し替えたり(今のところ、F900iC一機種しかないが)、FOMAのデュアルネットワークサービスで複数の端末を切り替えながら利用する場合については、特別な手段が用意されていない。そのため、回線が有効になっていない状態でiモード FeliCa対応端末をそのまま使うか、この機種変更の手順を使い、端末間で電子マネーを移動するしかない。やや不便な印象は否めないが、ユーザーもよく使い方を考える必要があるだろう。
ところで、iモード FeliCaではさまざまなサービスプロバイダがサービスを提供しているが、金銭の決済を伴うものの多くは、このEdyが採用されている。少し歪んだ見方をすれば、「すべての道はEdyに通ず」に近い状況になっており、当面、一般ユーザーにとっては「おサイフケータイをどう使うか≒Edyをどう使うか」とも言えるわけだ。
■ 求めるセキュリティと求められるセキュリティ
ここではNTTドコモがサービスを開始したiモード FeliCaについて、今のところ、わかっていることを中心に説明を進めてきた。これらの情報の多くはすでに報じられているもので、基本的にはそれらを整理したに過ぎない。こうした情報が提供されているにも関わらず、ユーザーから「おサイフケータイはセキュリティが不安だ」という声が上がっているのはなぜなのだろうか。
筆者が見たところ、こうした不安はサービスを提供するNTTドコモとユーザーの間で、セキュリティに対する意識や理解度が異なることに起因しているようだ。NTTドコモは基本的にiモード FeliCaというプラットフォームを提供するのみで、それ以外のセキュリティに関しては対応サービスを提供するサービスプロバイダや端末を開発するメーカーに判断を委ねている。しかし、ユーザーの視点から見れば、端末はNTTドコモが販売しているものであり、対応サービスもサービスプロバイダとNTTドコモが共同で提供しているように見えている。この基本部分の解釈の違いから、セキュリティに対する不安が残っているのではないだろうか。
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「ケータイお題部屋」で行なった「iモード FeliCa、セキュリティの不安は?」(7月2日出題)の結果。約7割の回答が不安を訴えていた
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たとえば、Edyのようにレスキューサービスを提供し、セキュリティに関する情報を提供しているのであれば、ユーザーは情報を集めることで、ある程度、不安を解消したり、それに見合った使い方を工夫することができる。端末によって、ICカードロックや遠隔ロック機能が搭載されていることを知れば、その端末を選び、セキュリティ機能を活かした使い方もできるだろう。
しかし、こうしたセキュリティ対策が提案されていない環境では、どうしても不安がつきまとってしまう。たとえば、量販店などのポイントサービスの会員証をiモード FeliCaに取り込むサービスが計画されているが、端末側にICカードロックなどの機能がなければ、紛失時にポイントが使われてしまう(買い物をされてしまう)可能性もある。量販店側が何らかの本人認証をすれば、ある程度の歯止めが掛かるだろうが、常に本人認証が取れるかどうかは疑問が残る。こうした部分のリスクはユーザーだけが負うものでもないだろうし、サービスプロバイダ任せというのもやや無責任な印象が残る。
また、我々ユーザーもiモード FeliCaを利用するときは、ケータイに対する認識を改める必要があるだろう。今までのケータイは通話やメール、コンテンツ閲覧などの道具だったため、比較的、気軽に扱うことができた。しかし、iモード FeliCaはおサイフの一部が含まれているということを常に意識し、それに見合った扱い方をしなければならない。裏を返せば、iモード FeliCaは利用するユーザー自身にもセキュリティ対策が求めらていると考えた方が賢明だ。特に、今後、iモード FeliCaにクレジットカードやキャッシュカードの機能を搭載するサービスが提供されるときは、さらなる意識の変革が必要になるだろう。
もちろん変わらなければならないのは、ユーザーだけではない。キャリアもまた意識を変える必要があるだろう。iモード FeliCaのように、より高いセキュリティが求められるサービスでは、今までと違ったスタンスが求められる。ユーザーに対して、リスクを含めたサービス内容をしっかりと説明し、使い方や付き合い方を含めた提案をする必要があるはずだ。もちろん、端末にも十分なセキュリティ対策を求めたいところだ。
iモード FeliCaをはじめ、ケータイ業界は非接触型ICカードを利用したサービスに大きな期待を寄せており、これからのケータイの発展や進化に大きな影響を及ぼす可能性を秘めている。しかし、かつて迷惑メールがそうであったように、何か問題が起きてから対処をするといった形では遅い。NTTドコモをはじめ、各携帯電話事業者は、サービスプロバイダや、端末メーカー、そしてユーザーにセキュリティ対策を委ねるのではなく、事業者としての責任を十分に意識して、安全かつ便利に楽しく使える環境を提案してもらいたい。利便性に対価を払うのはかまわないが、それ以上にリスクを負うようなサービスにならないことを切に願いたい。
■ URL
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
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(法林岳之)
2004/09/08 15:47
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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