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ソフトバンク、LTEのフィールドテストを公開

 ソフトバンクモバイルは5月29日、茨城県水戸市で行われている次世代通信方式「LTE」(Long Term Evolution)のフィールドテストを報道関係者向けに公開した。

 同社では今年2月に水戸市内でLTEのフィールドテストのための実験局免許を取得して実験を開始している。今回公開されたのは、2月より行われているフィールドテストの一部となる。


フィールドテストの仕様は2.88MHz幅の2×2MIMO

フィールドテストのシステム概要

フィールドテストシステムの制約
 LTEは、4G(第4世代)の移動体通信方式の一歩手前にあたる、3.9G(第3.9世代)に位置づけられる通信方式。ソフトバンクモバイルやNTTドコモが3Gサービスで利用する通信方式「W-CDMA」の発展版とされる。

 実験の公開の前に、ソフトバンク モバイルの技術総合研究室 無線システム技術開発センター センター長の竹中 哲善氏らが今回の実験におけるLTEのスペックなどを説明した。

 今回の実験では、2GHz帯で10MHz幅の帯域をアップリンク用とダウンリンク用で2本使っている。ちなみにこの帯域はソフトバンクの商用3Gサービスの帯域から間借りしているもので、フィールドテストエリアではその分、3Gサービスの帯域が少なくなっているという。水戸市がフィールドテストの地域として選ばれているのは、利用者がそれほど過密ではなく、帯域が少なくても3Gサービスに悪影響が出にくいことが理由の一つになっているという。また帯域としては現行の3Gサービスのものと隣接しているが、とくに現行サービスへの影響はないという。

 本来のLTEのスペックでは、10MHz幅の帯域であれば50個の「リソースブロック」(1個あたり180kHz幅)に分割される。しかし今回のフィールドテストでは使用する機器の制約から、16個のリソースブロックしかサポートされない。使っている帯域は2.88MHz幅のみで、速度も理論値で50分の16、つまり約3分の1となっている。

 さらに今回の実験では、2×2のMIMOが使用されている。これも理論値ではあるが、4×4のMIMOに比べると速度は2分の1となる。高次変調方式は、LTEのスペック通り、最高で64QAMまで使用する。

 16個のリソースブロックと2×2のMIMOという条件で、理論値のピークレートはダウンリンク側で30Mbps、アップリンク側で38Mbpsとなっている。

 ソフトバンクの実施してきたテストでは、最大で約17Mbpsを計測したという。これは50個のリソースブロックをすべて使った場合の53Mbps、さらに4×4のMIMOを使った場合の106Mbpsの実効速度に相当するという。

 今回のフィールドテストで使われている機材は、2年ほど前のテスト用機器のため、ハンドオーバーの一部機能が実装されていないなど、完全な仕様にはなっていない。また、LTEの仕様は5つのカテゴリーに分類されているが、今回のフィールドテストで使われているLTEは、どのカテゴリーにも該当しないものとなる。


バスに実験用移動機を搭載してフィールドテストを実施

 今回の報道向け公開では、実験機材(移動機側)をバスに搭載し、移動しながら通信をする形式で行われた。通常時はもっと小さな車両に機材を搭載して実験を行っているが、そちらは大人数が乗車することができないため、今回の公開ではチャーターバスを使用している。

 フィールドテストが行われたのは、茨城県水戸市の赤塚駅周辺。4kmくらいの範囲に3つのLTE基地局が設置されている。周囲は田畑が多く建物もそれほど多くはなく、かなり開けた環境だった。

 LTEの基地局は通常の3G向け基地局鉄塔にLTE用のアンテナと無線機を追加したものとなっている。1つの基地局あたり3セットのアンテナがそれぞれ別方向に向けられ、3つのセルを構成している。3つの基地局があるため、合計で9つのセルがフィールドテストエリア内に展開されている。また、MIMOやダイバーシティのために、1つのセルあたり2本のアンテナが設置されている。ちなみにコアネットワーク機器は、ソフトバンクの本社である汐留に設置されているという。


今回の公開で使われた車両。車内に機材が積み込まれ、天井にアンテナも設置されている 基地局。頂上部のアンテナが2段になっているが、上の段が通常の3Gアンテナで下の段がLTEのアンテナとなる

テストのモニター画面。地図上に車両の移動軌跡がその場所での電波状況を示す色でプロットされている
 今回の公開では、まずフィールドテストエリア内を広く移動し、速度がどう変わるか、ハンドオーバーがどう行われるかが披露された。最初は2×2のMIMOではなくダイバーシティで通信することで、2つのアンテナを通信速度を上げるために使うのではなく、感度を上げるために使用していた。

 リアルタイム測定のグラフを見る限りは、だいたい平均速度は4Mbps~8Mbpsで激しく変動し、最大では10Mbps前後、ハンドオーバーに失敗したときなどはほぼ切断状態となっていた。実験機材では搬送波(リソースブロック)ごとの高次変調方式もリアルタイムで観察できるようになっていて、こちらは64QAMで通信することが多く、電波をとらえにくい環境で16QAMやQPSKになる、といった様子が見られた。

 フィールドテストエリアを移動中、数回のハンドオーバーが行われたが、失敗も見られた。これは実験機器にハンドオーバーのための仕様が完全に盛り込まれていないためだという。

 続いて静止環境での実験として、バスを停車し、2×2のMIMOによる通信も行われた。しかしバスが停車した位置から基地局が見通せなかったことなどからも、あまり強い電波を得ることができず、やはり最大でも10Mbps程度の速度にとどまっていた。変調方式もすべてが64QAMになることは少なく、車両がゆっくり移動しただけでも激しく通信速度が変わっていく様子も見られた。


変調方式は16個のリソースブロックごとに別々に制御され、かなり短い周期で更新されていくため、通信速度もダイナミックに変化が見られる スペクトルアナライザの画面。2GHz帯なので、他社を含め非常に近くにほかのサービスの電波が飛んでいる

トライアルの目的
 現在ソフトバンクが実施しているフィールドテストは、OFDMAやMIMO、適応変調、ハンドオーバーといったLTEの基本的な要素や、通常の3Gシステムへの影響をなど評価するためのもので、LTEの一部仕様が取り込まれていない。またチューニングもまだ完璧ではなく、そもそも利用できる周波数帯が少ないためセル干渉が起きるなど、性能もまだ十分には発揮されていないという。


これまでのフィールドテストで得たこと ソフトバンクのLTEまでのロードマップ


URL
  ソフトバンクモバイル
  http://www.softbankmobile.co.jp/

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(白根 雅彦)
2009/06/01 11:56


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