NTTドコモは、31日に開催された決算会見の中で、「新たな成長を目指したドコモの変革とチャレンジ」と題したプレゼンテーションを行った。2012年度までを一区切りとした端末・サービス開発の方向性が示された。
NTTドコモ 代表取締役社長の山田 隆持氏は冒頭、「モバイル市場は変革点を迎えている。量的な飽和の一方で、質的には進化の余地がある。成熟期にどう満足度の向上につなげていくのか。端末・ネットワークの進化とともに、質的な面でまだまだ市場は伸びていく。オープンでグローバルな、多種多様なプレイヤーが参加し、市場が高度化・多様化されることを事業機会ととらえている。そうした2012年度に向けた取り組みをまとめた」と語り、今後4年の取り組みと方向性を示した。
ドコモは2008年の4月に「新ドコモ宣言」を発表し、ブランドロゴの刷新から全国1社体制への移行まで、大きな見直しを実施している。これらの取り組みを進める上で、山田氏は「2010年度には顧客満足度第1位を獲得することが目標」とし、直近では11月5日に開催予定の新端末発表会などに加え、エリア品質の向上、アフターサービスの拡充など、ユーザー視点でのマーケティングで引き続き施策を実施していくとした。
■ サービスは行動支援型、パーソナル化へ
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行動支援型サービスを開始する
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LTE世代では端末とネットワークで機能を分担
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山田氏は、新端末の発表に合わせて、エージェント機能のサービス「iコンシェル」の投入にも言及。これを、おサイフケータイで提供した生活支援型サービスの次のステップとして、行動支援型のサービスと位置付けた。
行動支援型という新たな取り組みを進めることに加え、今後、同社がチャレンジしていくというサービスでは10の方向性が示された。
「サービスのパーソナル化」では、行動支援型サービスの提供や、柔軟なカスタマイズへの対応、情報をサーバーで管理するなどのサービスにより、「○○できるケータイから、○○してくれるケータイへと進化する」と説明。ユーザーと携帯電話の間のプッシュ・プルの関係に変革をもたらすことで「アラジンの魔法のランプのような究極のケータイを目指す」と意気込みが語られた。
「ソーシャルサポートサービスの推進」は、環境・エコロジーや健康管理の分野で事業展開を行うもので、5400万件というユーザー数の強みを生かして解決すべき課題に取り組んでいく。健康管理分野での例では、健康に関する情報を医療機関に提供し、アドバイスを効率的に受けられるようなサービスが示された。
「融合サービスの提供」では、産業機器から自動車、情報家電、放送、固定通信網との融合により、シームレスな連携で便利なサービスを提供していく。
「動画サービスの進化」では、従来より提供しているエンターテインメント系動画に加えて、道案内や緊急時の医療など、パーソナル化されたサービスでも活用できるような動画を提供する。
「LTEによるモバイルブロードバンドの推進」では、2010年から導入する予定のLTEでネットワークを構築する。同氏は決算会見で、当面の間は年間7000億円規模の設備投資を継続するとしており、動画サービスの進化などにも対応させていく。一方、W-CDMA方式を世界に先駆けて導入した点を「先頭集団から飛び出してしまった」と振り返り、LTEの導入においては世界の先端を行くキャリアと協調しながら規格の標準化に寄与していくとした。
「端末の進化」では、端末単体の進化の方向性を示唆。LinuxやSymbianなど導入実績の多い端末も、ドコモ向けソフトウェアのパッケージ化で端末プラットフォームのグローバル化に貢献するとしたほか、Android、Windows Mobileといったオープンプラットフォームも導入する。機能面では、各種のセンサーや3D液晶、電子ペーパーなど、デザインやユーザーインターフェースを多様化・高機能化させる技術の搭載を後押ししていく。
「端末とネットワークのコラボレーション」では、LTEの導入を前提に、シンクライアントの概念を推し進めたサービスを展開する。端末とネットワークで機能を分担し、従来に無い高度な機能・サービスを提供するもので、例えば、周囲を撮影した写真から飲食店の場所を示したり、リアルタイムの音声自動翻訳機能を提供したりできる。
このほか、社会・産業の発展に寄与する基盤の研究や、国際ビジネスの推進、国内出資・提携の推進によるコラボレーションの拡大が挙げられている。
■ パケットARPU向上への取り組みで、総合ARPUも上昇へ
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ARPUはパケットと音声が逆転
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山田氏はまた、新サービスへのチャレンジとは別に、コア事業への取り組みにも言及した。収益基盤の1つとなるARPUでは、動画サービスの普及とパケット定額制で、パケットARPUの向上を目指す。これにより、目標として2011年度にパケットARPUと音声ARPUが逆転、総合ARPUが下げ止まり、上昇に転じると予想する。加えて、データ通信などでスマートフォン、データ通信端末の2台目需要を拡大させ、法人事業、クレジット事業の強化も図っていくとした。
山田氏は最後に、2012年度に営業利益9000億円以上とする業績目標を明らかにした上で、「今後もいろいろな方とコラボレーションしなければいけないが、こういった発表を行うことで機会も増えると思う」とし、「たゆまぬ努力でしっかりとやっていきたい」と意気込みを語った。
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■ URL
ニュースリリース
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/081031_00.html
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(太田 亮三)
2008/10/31 21:54
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