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代表取締役会長となった佐藤氏(左)と、代表取締役社長兼CEOに就任した尾下氏(右)
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エフルートは、社長が交代した新体制を明らかにし、検索とソーシャル・ブックマークを組み合わせた新サービスの展開など、今後の事業戦略を明らかにした。
携帯向けの検索ポータルサイトを提供するエフルートは、8月26日に開催された株主総会・取締役会において、取締役副社長の尾下 順治氏が代表取締役社長兼CEOに就任し、これまで社長を務めた創業者の佐藤 崇氏が、代表取締役会長に就任するなどの新体制を明らかにした。新体制へ移行した意図や、今後の戦略について、佐藤氏と尾下氏に伺った。
■ 佐藤氏が会長になり「今まで以上にとがったサービスを出す」
エフルートは、検索ポータル事業を軸にした会社「ビットレイティングス」として2003年に創業した。EZweb向けの公式サイトと一般サイトで、携帯電話向けに特化した検索サービスを提供し、2006年にはiモードの検索機能強化に伴い検索機能の提供を開始。現在では社名をエフルートに変更し、月間ユニークユーザーが400万人を超える検索ポータルサイト事業を展開している。
ベンチャー企業としてスタートし創業から6年目を迎えた同社において、創業者である佐藤氏が社長を退いて会長となる意図について、新たに社長となった尾下氏は、「会社組織としてサービスを提供することと、世の中にない新しいサービスを提供していくこと、この2つをどう会社に内在させていくかを考えた結果、マーケットインの志向でサービス開発に一番強みを持っている佐藤を会長にして、今まで以上にとがったサービスを世の中に出していこうとするもの」と説明する。
会社経営にかかわる実務を新社長の尾下氏が担当し、サービス計画は会長となった佐藤氏が推進するという今後の体制は、従業員が50名を超えた同社がさらに発展していくために重要という。尾下氏は、「ステージによって、トッププレイヤーを変えていかなければならない。会社にとって必要なカルチャーを残しながら、今回の体制に移行した。各事業を任せられる役員がいるのも大きい」と新体制の利点を語る。
佐藤氏は、「検索エンジンは理想に対して未完の部分もある。これまでと少しやりかたを変えていきたい」とこれまでと違う展開への意欲もみせる一方、「会社として事業内容がすぐに大きく変わるわけではないが、検索にフォーカスしていても、検索以外のサービスもいかに膨らませていくかが重要。以前は小さい規模だったサービスでも大きく成長しているものもある」と語る。
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エフルート 代表取締役社長兼CEOの尾下 順治氏
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同社は検索ポータルの「エフルート」を前面に出して展開しているが、売上など経営面での割合は大きく異なる。尾下氏によれば、売上げの比率ではコンテンツ配信事業が7割、広告配信事業が2割、検索系サービスが1割とのこと。最近は電子書籍の伸びが顕著で、直近では“乙女ゲーム”系コンテンツが急伸しているとのことだった。大きくアピールされていないが、同社の公式コンテンツ事業部では57の公式サイトを9名で運営しているという。「ローコストオペレーションでも、何かを犠牲にしているわけではない。収益源として伸び盛りではないと言われ始めている公式サイトにおいて、新サービスなどのリスクをとれ、競合他社に対する強みになっている」(尾下氏)としており、同社の収益源として大きな位置を占めている。
検索をとりまく環境の変化などもあり、同社は他社サービスへの検索機能の提供も積極的に展開しているが、「検索連動型広告とレベニューシェアなどといった現在のビジネスモデルは不完全」(尾下氏)で、同社では大きな収益源とはなっていないのが現状という。同社では音楽コンテンツの検索サービスとして、検索結果をすべて広告としたサービスを提供、専門検索のサービスとして収益に寄与するサービスも開発している。
■ 検索のソーシャル化、海外展開
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エフルート 代表取締役会長の佐藤 崇氏は、海外展開への意欲もみせた
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同社がこだわる検索関連サービスでは、携帯専門のソーシャル・ブックマークサービスを買収するといった、新たな動きもある。秋頃をめどに新サービスが展開されるとのことで、尾下氏は「検索と組み合わせてソーシャル・サービスを展開したい。携帯でソーシャル・ブックマークとの手軽な連携は難しい面もあるが、ユーザーによるレーティングをさかんにしていきたい。検索がソーシャル化している姿を、将来お見せできると思う」と自信を語るとともに、「Googleの携帯向け検索サービスなどは、携帯に完全に特化されていない。Googleを導入した企業が本当に満足しているかも疑問。そういったところに我々の入る余地がある。Yahoo!とGoogleの支配に一石を投じられるような新たな展開も行いたい」と携帯専門サービスを提供する同社のスタンスを明らかにした。
尾下氏はこのほか、海外展開の展望についても触れた。新体制が落ち着いたころから本格的に検討を始めるとのことで、「どこに展開するかはまだ決定していないが、アジアか北米。もう少し時間をかけて調べたい」と計画の一旦を示すとともに、「体制として一番良いのは、佐藤が海外に行ってサービス展開を手掛けること」という考えを明らかにした。今回の新体制についても「佐藤抜きでビジネスがまわる環境をつくるのが重要。日本のサービスを切り出して海外に持って行くだけではだめ。現地で肌で感じながらサービスに昇華できるとしたら、今は佐藤しかいない」という新体制に隠れた意図も明かした。
佐藤氏は、「個人的にゼロからサービスを立ち上げるのは3回目で、怖いわけではない。例えばアメリカでサービス展開するなら向こうの文化を知らなければだめ。担当者を派遣するのもいいが、自分が行ってやるのもひとつの道で、新しい経験になるなら楽しいのではないか」と海外展開に前向きな姿勢を示した。
■ URL
エフルート
http://froute.co.jp/
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(太田 亮三)
2008/09/04 14:36
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