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W42K
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KDDIと沖縄セルラー、京セラは、2006年に発売された京セラ製端末「W42K」の電池パックに不具合があることを明らかにした。電池パックが発熱、膨張し、13件の事故が報告されている。3社では、電池パックの回収・交換を実施する。
回収の対象となるのは、製造番号にKY-YEA、KY-YFA、KY-YGA、KY-YHA、KY-YIA、KY-YJA、KY-YKA、KY-XDA、KY-XEA、KY-XFA、KY-XGA、KY-XIA、KY-XLA、KY-WAAと記載されている電池パック。製造番号がKY-YDAのものは安全が確認されているという。
「W42K」は、2006年6月に発売された京セラ製の折りたたみ型端末。3月26日現在の稼働台数は21万4,349台。全ての「W42K」ユーザーに対し、電池パックの交換が行なわれ、対象ユーザーには29日より順次、電池パックが送付される。該当の電池パックを利用している可能性が高いと見られるユーザーは約18万人と推定されており、それらのユーザーから先に電池パックが送付される。また、店頭在庫は約600台あったが、全て販売停止となっている。
送付完了までは2週間ほどかかる見込みだが、KDDIでは、該当の電池パックを利用している場合、傷やへこみがあれば、すぐ窓口へ連絡するよう呼びかけている。
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電池パック上での製造番号の記載位置
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■ 原因は電池パック
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謝罪するKDDIの井上氏(右)と京セラの山本氏(左)
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W42Kと電池パック
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KDDIと京セラは28日、会見を開催。KDDI執行役員常務 コンシューマ技術統括本部長の井上 正廣氏と、京セラ 執行役員 通信機器関連事業本部 移動体通信機器統括事業部長 兼 通信システム機器統括事業部長の山本 康行氏が事象の原因やユーザーへの対応などの説明を行なうとともに「迷惑をおかけし、深くお詫びする」と謝罪した。
両社によれば、今回の事象は電池パックに傷やへこみが付くような力が加わるとセパレータ(絶縁シート)が損傷。その後、充電・放電を繰り返すと機能が低下し、ショート(短絡)に至り、発熱や膨張するという。
「W42K」は2006年6月に発売されたモデルだが、初期ロットに搭載された電池パックと、発売から2カ月ほど経った2006年7月~8月頃に製造された「W42K」の電池パックは異なる製品になる。安全が確認された電池パックは、初期ロット搭載版の電池パック。京セラ、および電池パック内部のセルとセパレータを製造するNECトーキンで原因を再現試験などを行なった結果、初期ロット搭載型の電池パックでは、今回の事象は発生せず、後期型では発生した。そのため、対象となる電池パックでは「事故が発生しないような余裕(マージン)を持たせるべきだったが、それが足りなかった」と判断された。京セラによれば「当社製の携帯電話で採用する電池パックの中では。最もマージンがなかった」という。
また発売から1年以上経ってから判明した理由については、セパレータ損傷後に繰り返し充放電を行なったことが影響していると推定されている。
原因は電池パックとされているが、その内部にあるセルとセパレータはNECトーキンが製造したもの。会見では「初期ロットの電池パックが、別の電池パックに入れ変わったのは、製造メーカーから納期の都合上、どうしても採用してくれという話になった。京セラではクリアすべき仕様を提示し、試験データの提出を求めた上で、データ上は問題ないことから採用することにした」と説明している。
NECトーキンでは「電池パックに原因があると判断したが、セルとパッケージのどちらに原因があるかは、今後解析することになる。事故解析したところ、当社側での不具合は見つかっていない」としているが、会見では京セラ側が「当面NECトーキンの製品を採用する予定はない」「電池パック回収・交換にかかる費用や補償について、NECトーキンと話しあうつもり」とも述べていた。また、KDDIは「費用分担は今後検討する」と説明した。
■ 13件の事故と経緯
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発熱・膨張した電池パック(KDDI資料)
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28日の会見では、「W42K」の電池パックが原因で発生した事故13件を把握していることが明らかにされ、その概要も紹介された。このうち、2007年中には10月~12月にかけて、毎月1件ずつ事故報告があったものの、両社ではいずれのケースでも電池パックに傷やへこみがあることから、通常の利用では発生しない特殊な事故と判断していた。
ところが、年が明けて2008年1月にも同様の事故が3件報告され、異常の可能性が高いと判断して調査を開始。その後2月に3件、3月に4件の事故が報告された。2007年分とあわせて、13件の事故となるが、このうち3件は火傷(うち1名は1週間程度の症状)、残り10件は発熱や発煙、破裂で、床やカーペットが焦げ、そのうち消防署により火災と認定されたものが2件ある。再現実験では、内部温度が500度近くになることが確認されたという。いずれの事例も京セラから経済産業省に、KDDIから総務省に対して報告が行なわれた。
「破裂」と表現されている事故もあるが、「通常、電池内で異常が発生し、内部圧が上がるとガス排出弁でカバーするが、今回は排出弁の開きが膨張速度に追いつかず、裂けていった」とのことで、はじけ飛ぶようなものではなかった。また、確認された事故のうち、一部ではバッテリーカバー側にも打痕が認められており、落下、あるいは角にぶつけたりするといった衝撃で、電池パックに傷やへこみが付いたと見られている。
KDDIと京セラは個別のケースについて、発生日や地域、状況を明らかにしている。詳細は以下の通り。
発生日 |
地域 |
状況 |
2007/10/19 |
愛知県 |
充電中に電池パックが破裂。床が焦げ、火災認定 |
2007/11/20 |
北海道 |
女性ユーザーがジャージのポケットに入れていたところ発火。太ももは赤くなる程度の火傷。消すために足で踏み、足の裏も赤くなった |
2007/12/28 |
大分県 |
充電中にメール打っていたところ、電池パックが発火 |
2008/1/10 |
青森県 |
充電中に電池パックが破裂。女性ユーザーの左肩に1週間の火傷。床が焦げ、火災認定された |
2008/1/21 |
神奈川県 |
充電中に電池パックが破裂、発火 |
2008/2/8 |
茨城県 |
充電中に電池パックが焼損 |
2008/2/13 |
神奈川県 |
卓上ホルダでの充電中に破裂 |
2008/2/14 |
愛知県 |
EZweb利用中に電池パック破損 |
2008/3/9 |
岩手県 |
電池パックから発煙 |
2008/3/7 |
千葉県 |
充電中に電池パックが破裂 |
2008/3/17 |
秋田県 |
充電中に電池パックが破裂 |
2008/3/18 |
宮城県 |
電話本体が急に熱くなり、男性ユーザーの右太ももに火傷 |
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原因究明の調査は京セラ、そして電池パック内部のセルを供給するNECトーキンによって行なわれ、3月14日に事故原因が判明したと判断した。その段階では公表しなかったのは、交換用の電池パックを製造・確保するためで、今回ユーザーへの対応準備が整ったことから発表に至った。
会見中に「3月14日に事故原因判明、その後2件の事故が発生」ということが明らかになり、報道陣からは「いち早く発表すべきだったのでは」と問う声も上がると、KDDIの井上氏は「確かに原因判明後に事故が発生したことになる。決して3月という商戦期を意識して遅らせたのではない。携帯電話が使えない期間を発生させることなく、きちんとサポートできるよう電池パックの準備を行なったため。そのあたりの対応の遅さは、誠に申し訳ない」と陳謝した。
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京セラ山本氏
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KDDI井上氏
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■ URL
KDDI ニュースリリース
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2008/0328c/
京セラ ニュースリリース
http://www.kyocera.co.jp/news/2008/0306.html
NECトーキン 一部報道について
http://www.nec-tokin.com/top/news.cgi?mode=body&id=120
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(関口 聖)
2008/03/28 16:04
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