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モバイルビジネス研究会、報告書案まとまる

会合の冒頭のみ、総務大臣の菅義偉氏が出席した
 6月26日、総務省において「モバイルビジネス研究会」の第8回会合が開催された。今回は、これまでの議論をふまえて総務省がまとめた報告書案が披露された。

 モバイルビジネス研究会では、携帯電話を取り巻く市場のさらなる活性化に向けて議論を深めてきた。「モバイルビジネス研究会報告書 --オープン型モバイルビジネス環境の実現に向けて--」と題した今回の報告書案では、モバイルビジネス市場の状況や端末の販売方法のあり方、携帯電話事業者から通信網を借りて携帯電話事業を行なう「MVNO」の新規参入促進の検討、次世代の高速通信網が整備された状況での市場環境整備の推進策など、モバイルビジネスの活性化に向けた総合的な報告がなされた。この中では、販売報奨金(インセンティブ)やSIMロックといった携帯電話の販売手法についても言及している。


段階的に公正なモバイルビジネス環境を

会合の模様
 報告書ではまず、モバイル市場の現状として、PHSを含めた国内の携帯電話加入者数が約1億人、このうち9割弱のユーザーがインターネットに接続可能で、7割が3G端末だと報告。ネットだけでなく少額決済や音楽、アプリ、GPS機能、SNSなども利用可能で、サービスが多様化し高度化している現状を示した。また、こうした現状の携帯電話市場の主流が、携帯電話事業者が主導して展開される垂直統合型のビジネスモデルとした。

 さらに、成熟した国内の携帯電話市場の特徴として、携帯電話事業者のシェアの固定化、料金プランの複雑化、端末とサービスが一体化したビジネス展開、高機能型端末中心の市場である点などが挙げられた。報告書では、市場の構造は、固定通信と移動通信で大きな差があり、消費者に対して多様な選択肢を用意するオープン型のモバイビジネス環境を実現することで、市場のさらなる発展に期待できるとされた。

 なお、市場活性化に取り組むフェーズを2段階に設定。すぐに取り組む措置を第1フェーズ、3.9Gなど下り最大100Mbpsが実現するといわれている2011年を第2フェーズとし、段階的に移行するとされた。

 また、報告書では「オープン型」と表現され、「オープン化」とはほとんど記載されていない。これは、「オープン化」という言葉に、開放義務があるかのようなニュアンスが含まれるためで、総務省では、オープン化ではなく、プラットフォーム間の連携や透明性の確保といった公正な競争環境の構築を図りたい考えだからだ。

 報告書では、オープン型のモバイルビジネス環境のイメージとして、ネットワークを意識せずに端末を利用できる環境、端末に自由にアプリケーションが搭載可能で、ユーザーが希望するサービスを自由に選択できる環境、端末と通信サービス、コンテンツなどの料金がそれぞれわかりやすく提示されている環境の3つを挙げている。


端末の販売方法の現状

報告書案を読み上げたのは、総務省 料金サービス課長の谷脇氏
 携帯電話の販売方法はどのような形が良いのか? 報告書ではまず、その前段となる現状認識が示された。

 携帯電話は現在、携帯電話事業者が端末ベンダー(端末メーカー)から携帯電話を買い上げて、それを携帯ショップなどの販売代理店などを通じて販売している流れになる。その際、販売代理店側には販売奨励金(報奨金、インセンティブ)が支払われており、この奨励金があるために端末が無料もしくは低価格で購入できる構造で、奨励金で支払った分は、ユーザーの毎月の携帯電話利用料に上乗せする形で回収している。

 国内の3G端末にはSIMカードが採用されているが、このSIMカードは本来、同じ通信方式であれば、SIMカードを差し替えると異なる通信事業者間の携帯電話でも利用できるものだ。ただし国内では、販売奨励金として支払った分の端末代金が回収できなくなるため、いわゆる「SIMロック」がかかっている。

 報告書では、諸外国の販売奨励金やSIMロックの現状を記載した上で、メリットとデメリットを精査し、日本の市場環境に対応した新しいビジネスモデルを創造し、ユーザーの利便性向上やモバイルビジネス全体の市場拡大を図る視点が必要とされた。


販売奨励金の是非には踏み込まず

斉藤座長
 さらに、販売奨励金のメリットとして、高機能端末が低価格で利用できる点や、端末の買い換え需要の創出、新端末の開発資金の確保、端末とサービスのバンドル化によって付加価値の高いサービスが低価格で提供できる点などを指摘。その一方、留意する課題も報告されており、販売奨励金という名前の端末販売コストの一部が、通信料金としてユーザーから回収されている現状をユーザーが認知していない点や、携帯電話を頻繁に買い換える人とそうでない人のコスト負担の公平性が担保されているとは言えない状況が示された。

 ただし、端末の買い換え頻度と機能性、ARPUなどの要素を総合的に見ると、特定のユーザー層に偏った不公平な部分があるとは言えないとされた。これまで、高機能な端末を頻繁に買い換えるユーザーが得をしているかのような一部報道がなされてきたが、今回の報告書では、特定の層に利があるとは言えず、不公平感の原因が料金体系の不透明さにあるとしている。

 さらに、販売奨励金が端末販売関連の事業収支ではなく、電気通信の事業収支に計上されている点を指摘。電機通信事業収支には他社への接続料も含まれるため、公正な競争確保の面からも検討する必要があるとされた。販売奨励金を端末販売奨励金と通信販売奨励金に分けて、端末販売奨励金については附帯事業収支に計上することが望ましいとされた。

 こうした会計上の販売奨励金の取り扱いについては、2007年度を目途に電気通信事業会計規則を改正して対応する方針。

 なお報告書は販売奨励金の是非については踏み込んでいない。携帯電話事業者が経営判断として行なうもので、一般的な商慣行として他分野でも採用されているため、販売奨励金の廃止といった法的措置に妥当性はないとした。

 「検討が適当」とされたのは、【1】端末価格と通信料金の区分を明確化、【2】接続料原価などの適正性の確保、【3】端末の多様化とSIMロックの在り方を見直しするという3点にとどまった。


分離プラン

 不透明な端末価格と通信料金を明確にするための施策として、通信料と端末価格を分離させた料金プラン(分離プラン)の導入が検討されるべきとされた。

 分離プランでは、これまで料金プランに上乗せされていた端末代金(販売奨励金)を端末価格として明確化するというもの。ただ、「事業者の自主的な判断で行なわれることが必要」とされ、行政側が音頭をとって、各事業者が同時期に実施するものと見られる。

 なお、分離プランにおいても、ユーザーの利便性の観点から、端末価格と通信料金を一括して請求した方が適当だが、ただし、その場合も請求書内では通信料金と端末価格を明確に分けて記載するべきとされた。


利用期間付き契約

 さらに、利用期間付き契約の導入にも言及。この制度は、一定期間中に端末価格の回収が終わるように料金プランを組めるもの。ユーザー間の不公平感を縮小できるとしており、現行の端末買い換えサイクルよりも短いものや、さらに長期の設定もあり得るため、多様なニーズに応えられるプランの検討が期待されるとなった。

 これら分離プランや利用期間付きの契約を導入する目的について、報告書は高い端末価格や安い通信料金の組み合わせを目指すものではないとしている。あくまでも端末価格と通信料金の透明性の確保が目的としており、販売奨励金の廃止などを直接的に求めるものではないとしている。

 各携帯電話事業者は、分離プランなどの導入ついて、原則として2008年度を目途に段階的な実施を行ない、分離プランの市場への影響などを見極めつつ、適用範囲の拡大措置を講じていくことが望ましいとされた。報告書では、遅くとも2010年までに総合的な評価を行なって本格的な導入に向けた結論を得ることが適当としている。

 ちなみに、分離プランの本格的な導入については、ソフトバンク(報告書では一部の事業者)が現在導入している割賦販売の手法、つまり、端末価格の一部を端末機種に応じて通信料金から割り引く方法についても見直しが必要になるとしている。


SIMロックの解除

 さらに、分離プランの導入に併せてSIMフリー端末の投入で、端末メーカーの直販など、販売ルートが多様化し、ユーザーの選択の幅が拡大するとされた。SIMロックがかかっているのは、端末販売奨励金が回収されるまでの期間はユーザーをつなぎ止めておく必要があるからだ。報告書では、前述の利用期間付き契約を導入し、販売奨励金相当額の回収が行なわれればSIMロックの行なう意味が失われるとされた。

 ただし、SIMフリーの端末を投入した場合でも、国内ではW-CDMAとCDMA2000の2つの方式が存在し、各携帯電話事業者のサービスは利用できないために、共通して利用できるのは、音声通話とSMSなどの一部の機能だとしている。その場合、ユーザーの利益が限定されるため、無制限にSIMロックを解除すると事業者間競争をゆがめる可能性があるとされた。報告書では、SIMロック解除によって利用できる機能が限定されてしまうことがSIMロック継続の根拠にはならないとしている。

 SIMロックの解除には2段階にフェーズを分けて考える必要があり、FMCなどが実現している第2フェーズの状況下では大きな意味を持つとされた。これを受け、SIMロックは原則解除が望ましいが、当面その動向を注視し、2010年の時点で最終的な結論を得ることが適当と結論づけており、SIMロックについては先送りされた形になった。


MVNOについて

 MVNOの新規参入については、固定通信市場と同様に設備競争とサービス競争の適正なバランスを図りながら、多様で公正な競争環境の整備が必要とされた。

 そのための施策として、携帯電話事業者側がMVNOに対して開示する情報の標準プランなどを策定することが望ましいとされ、MVNOのガイドラインの見直しが必要とされた。行政側は携帯電話事業者に対してMVNOとの協議の状況を必要に応じて報告を求め、円滑な協議が進むようにモニタリングすることも検討に値するとされた。

 また、新規の周波数割り当てられた際には、あらかじめMVNOとの連携を想定したネットワーク構築を計画することで、コスト負担や技術的要件の明確化が図られるのではないかとしている。

 さらに今後、WiMAXなどの次世代高速通信サービスが普及することでモバイル通信が多様化すると予測される。ユビキタスネットワークにおいて、シームレスな認証を実現するために、共通のユーザーIDを活用したシステムが期待できるとされた。たとえば、SIMカードがユーザーIDカードのような役割を果たし、携帯電話に限らずさまざまなネットワークにアクセスするためのツールとして活用されるなど、具体的に検討することが適当とされた。さまざまなプラットフォームにシームレスにアクセスできる環境作りに関して、総務省では、2007年度中にも検討を開始する方針だ。

 さらに、端末開発コストの低減策として、端末プラットフォームの共通化が必要とし、総務省側でも可能な範囲で積極的に支援していくとした。端末プラットフォームの共通化以外にもWeb記述言語の共通化などについても検証していく。


消費者保護

 消費者保護の観点からは、料金プランの比較等、情報提供サイトが多数存在している中で、料金比較手法の認定制度の導入について検討することが望ましいとされた。

 また、販売代理店のスタッフなどの資質向上についても言及しており、研究会メンバーからは販売店のスタッフだけでなく、コールセンターのスタッフの資質向上など、含みを持たせるようアドバイスがあった。


ロードマップ「モバイルビジネス活性化プラン」策定

 報告案の最後にはまとめとして、第1フェーズとして、端末価格と通信料金が区分された分離プランと、利用期間付き契約について、「2008年度を目途に試行的に導入する方向で検討することが望ましい」と婉曲に婉曲を重ねたような表現で示された。第2フェーズについても、2010年の時点でこうした販売モデルの有効性を検証し、全面的な導入を視野に制作の方向性を確定することが望ましいとされた。

 また、個々の施策を総合的にまとめて、着実に実施する必要があるとして、施策のロードマップ「モバイルビジネス活性化プラン」をとりまとめる方針。さらに、その進捗状況などを評価するために「モバイルビジネス活性化プラン評価委員会」設立し、透明性を確保していくという。

 今回の会合は、ほぼ報告書案の確認に終始した。研究会のメンバーらは、報告書案に概ね賛成の方向。会合で議論された細かい表現を修正した上で、総務省は6月中にもパブリックコメントを募集する方針だ



URL
  モバイルビジネス研究会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile/

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(津田 啓夢)
2007/06/26 22:52

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