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モバイルビジネス研究会、イー・モバイル千本氏らが意見陳述

 総務省で6日、携帯電話を取り巻く市場環境について検討する「モバイルビジネス研究会」の第5回会合が開催された。今回は、新規事業者であるイー・モバイル、OSを提供するマイクロソフト、コンテンツプロバイダのぐるなび、端末販売・流通を手掛ける三井物産、端末ソフトウェア開発のACCESSがオブザーバーとして出席し、それぞれの立場から見た現状と課題を述べた。


千本氏「iモードもオープンに」

 イー・モバイルのプレゼンテーションは、代表取締役会長兼CEOの千本 倖生氏から行なわれた。同氏は、携帯業界の競争を阻む問題点が「市場シェアの硬直化」「料金の高止まり」「電波環境対策」の3つと指摘。2000年以降、携帯電話市場は大きく拡大したが、ドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイルの3社によるシェアは、途中で合併や買収などがあったものの、変化がないとしたほか、基本料も通話料も値下げされず、通話料は3分120円と、固定の15倍に及ぶとした。また、電波干渉は各キャリアの基地局で発生する問題を指した点で、大企業である既存キャリアと2社間で交渉を行なう現状では、恣意的な協議ではなく、公開されたルールが必要との認識が示された。

 またNTTドコモについては、NTT東西を上回る契約数を獲得している状況でありながら、さまざまな規制がかけられているNTT東西よりもはるかに緩い規制になっている、として、ドコモに対する規制を追加すべきとの考えを示した。またMVNO(仮想移動体通信事業者)の参入を促すべく、実際にネットワークを保有・運用するキャリアは回線卸売り料金の約款をオープンにし、低廉化を図るべきとした。ただし、千本氏は構成員からの質問に答える形で、MVNOに関する既存キャリアに対する規制は市場支配力を持つキャリアに対してのみ適用すべきとして、事実上、ドコモへの規制強化を主張する形となった。


イー・モバイル千本氏

イー・モバイル千本氏
 千本氏からは、競争を促進する施策として、MNP(携帯電話の番号ポータビリティ)に続き、メールアドレスやコンテンツのポータビリティも確保すべし、との提言も行なわれた。同氏は「ドコモユーザーはMNP導入後も簡単に乗り換えられない。であれば、iモードのアンバンドル化も考えるべき。iモードのコンテンツやメールを自由に他キャリアユーザーも使えるようにしよう」と述べた。ただしこれは、あくまでもイメージであり、現時点で何らかの検討を行なっているわけではないとのこと。

 販売奨励金について同氏は、「世界標準と異なるPDCを採用したために市場は悲惨な状況となった。現在は3Gで国際標準を取り入れたが、端末そのものは国際標準になっておらず、開発費が1台あたり3万円かかる。しかし(1台あたりの端末開発費は)海外ではたった6ドル。EM・ONEで採用したWindows Mobileのように国際的に採用されているOSによってコストダウンを図るべき」と述べ、まずは端末開発費の抑制を指摘。研究開発そのものは止めないが、開発費があまりかかっていない安価な端末を選べる自由があるべきで、そういった端末を購入すれば奨励金が少なく済むため、通信料を安くするというプランがあって良いのではないか、とした。

 千本氏は「日本の競争力は世界の先進国中で低い。コンテンツのオープン化、端末のオープン化を進めるべき」と語っていた。


マイクロソフト「慎重に進めるべき」

 マイクロソフト 最高技術責任者補佐の楠正憲氏は、キャリア向けソフトウェアやメッセンジャーアプリなどのコンテンツプロバイダという立場があることに触れたが、今回は主に携帯端末向けOSを供給する立場からの意見を述べた。

 まず奨励金については、ハイエンド端末に搭載されがちなWindows Mobileからすれば、都合が良い面もあるとしたほか、新技術の普及促進に役立っており、(新機能は)量産効果でローエンド端末にも導入されるとの影響を指摘。日本である程度ボリュームが出ることで新機能が広がっていくとのメリットを挙げた。一方、デメリットとしては、500ドルの端末を300ドル、100ドルに値下げしていく競争が端末メーカー間に進まないと述べた。海外では低価格端末の供給に向けた技術開発が進められているが、楠氏は「この分野は日本では進まないのではないか」との懸念を表明した。また、利用者間の不公平感をもたらしていることも否定できない、として「可処分所得の多い人が頻繁に買い替える、ということであれば、低い人が多い人にお金を出しているような状況とも言える」と述べた。

 SIMロックについては「欧州ではSIMロックに関する規制がよく機能している。日本でも3G導入時に実施していれば、もっと世界にメーカーが進出できたかもしれない」とする一方、「欧州と同じことを日本でやって、成功するかどうかは議論の余地がある。技術的にロックフリーな端末は実現できるだろうが、その場合、本当にニーズがあるか。また開発コストや各種サービスとの試験コストの増大に繋がる懸念もある」と指摘した。

 こうした見解を元に、楠氏は「販売奨励金とSIMロックについては、現状のビジネスモデルに加えて、奨励金なしという選択肢も用意することが重要。たとえば4G導入時にSIMロックの規制を導入したらどうか」と提案した。仮に奨励金を廃止した場合については、「端末コスト低減のために、海外メーカーのシェアが高まり、携帯市場そのものが縮小する可能性がある。携帯以外の商品でも奨励金はあり、家電量販店にとって重要な収益源だ。仮に規制するとしても、新たな規制法案ではなく、独禁法など既存の枠組みで対処すべき」と述べた。

 またドコモ・au・ソフトバンクのような垂直統合型モデルに加えて、水平分業型を促進するためにはMVNOが重要として、「1億人に達した携帯・PHS市場では、次に法人用途が期待されており、その分野でMVNOにチャンスがある」と述べた。

 さらに「日本メーカーの国際競争力が衰えている」との声については、「それが端末、部品、コンテンツ、ソフトウェアのどれを指しているのか非常に曖昧。日本の携帯電話が高機能化することで、コンテンツが成長した面もある。たとえばアップルのiPhoneの部品に日本メーカーの製品が採用されているかもしれない。グローバル化する中で、日本の何を高めるか、慎重な議論が必要ではないか。国際競争力は企業が自助努力すべき」と語った。


コンテンツ提供者のぐるなび

 ぐるなび取締役でマーケティング部門長の福島 常浩氏によるプレゼンテーションは、コンテンツプロバイダとして、そして消費者的観点からのモバイル市場への意見が語られた。

 同氏は「1989年に外食産業の広告モデルとして設立されたぐるなびだが、インターネットの中で現行のビジネスモデルを確立できた。ユーザー数の詳細は公表していないが、月間1,200万というユニークユーザーに対して、携帯電話はユーザー増加に貢献している。既にぐるなびでは全キャリアに対して同じようなサービスを提供している。ここに至るまでは、キャリア別の仕様の差違などもあって、時間差はあったが、“幹事が提案した宴会プランを飲食店側が落札する”といったパソコン向けサービスの携帯版の提供まで行なっている」と現状を紹介。

 携帯電話が普及した現在は「ユーザーが常時接続状態にある」として、さらなる市場拡大に繋がる一方、キャリアごとの仕様の差違が開発コストの上昇に繋がる一面があるとして、「携帯向けサービスでは、最終検証だけで億近いコストがかかる」とも述べた。

 仮にSIMロックが解除された場合、コンテンツプロバイダへの影響として、福島氏は「短期的には、検証作業が数倍~数十倍に膨れあがり、対応端末やキャリアを限定する形になる可能性がある」と予測した。

 また同社が会員ユーザーに向けて行なった調査を元に、ユーザー層は広く浅く使う「多機能ライト層」、通話が主な「単機能特化層」、音楽や映像、テレビに興味を示す「AV層」、常に携帯を使い続ける「常時利用層」と、大きく4種類に分類した。それぞれの割合は、多機能ライト層が29.5%、単機能特化層が56.9%、AV層が6.5%、常時利用層が7.1%とのことで、福島氏は「機能を使うユーザーと通話特化のユーザーは均衡している状態。個人の幅にあわせた選択肢が必要かもしれない」と述べた。


三井物産、オーストラリアでキャリアの流通部門を担う

 国内では、キャリアショップなど代理店事業を展開するグループ会社を持つ三井物産だが、今回の会合では、流通分野からの観点で意見を示した。

 海外の事例として紹介されたのは、オーストラリアでのケース。同国では、日本と同じような販売奨励金モデルが展開されているとのことで、同社では、豪州最大手のキャリアと契約し、キャリアの代理として端末メーカーから携帯電話を買い付けている。さらに流通部門も担っており、在庫管理も全面的に受託。キャリア内部に入って、その機能の一部を提供するというビジネスを展開しているという。

 また、座長からの質問に答える形で、日本国内での端末販売数シェアは7%程度であることが明らかにされたほか、同社のような立場では携帯電話市場全体に影響力を及ぼす位置にないと説明していた。

 海外企業と提携して、日本を含む10カ国でコンテンツサービスも展開している同社では、「海外は、先駆的なビジネスモデルが次々と出てくる日本市場を常に注視している」と感じており、日本市場は、キャリアの強力なリーダーシップの元で、メーカーの技術力や信頼性の高いネットワークがシンクロするからこそ、海外から注目されるような新たな形を生み出せる、と分析しているという。


ソフト開発のACCESS、「協調すべき点、競争すべき点に分ける」

 ACCESSのプレゼンテーションは、執行役員の楢崎浩一氏が行なった。同氏は「日本では、年間100種類もの新機種が登場している。2006年の出荷数は約4,800万台で、出荷単価は1台あたり3万6,000円。ただし、1機種あたりの開発費用は100億円以上かかり、開発期間は1年を超え、開発費用込みの端末価格は7~8万円と推測している」と、現状の携帯電話開発の分析を示した。

 携帯電話開発は、低コスト化および開発期間の短縮に向けた技術開発が進められており、同社では数年後の3G端末は1台100~150ドルになると予測。そのうち、アプリケーションやミドルウェア、OSというソフトウェアが占めるのは10%程度になるとした。ソフトウェア分野の動向については、アプリケーションはキャリアの競争力を示す部分となり、OSやミドルウェアは端末メーカー自身の開発ではなく、アウトソーシングする形になるとした。また、調査会社が推定した、アップルの「iPhone」もほぼ同じコスト構造になっているというデータも示された。また、現状についても、ノキアは利益率が年々下がり、モトローラも業績の下方修正を発表しており、世界的に端末メーカーは厳しい状況にあるとの見方が示された。

 その上で、楢崎氏は「端末開発の健全な育成に必要なものは何か。現在、メーカーはOSやミドルウェアの共通化を進めるほか、たとえはカシオ日立、NECとパナソニックのように合従連衡している。海外でも当社が開発したALP(Access Linux Platform)を仏Orangeが採用した」と述べ、開発環境の共通化が進んでいると指摘した。

 このほか、SIMロックについては、米Cingularの料金プランを示して、「Treo 680という端末は、ロックされた端末は2年契約で199ドル、ロックフリー版が399ドル。差額200ドルが奨励金と言えるが、ユーザーに対して、明確に“割引は長期契約のみ”としている。このように、エンドユーザーが価格の差違やその理由を理解できるよう、きちんと説明する必要がある」と述べた。楢崎氏は「各社独自の部分は競争を行ないながら、それ以外の部分は共通化していくことで、健全な成長が図られるだろう」とした。

 また、構成員から、アプリケーション部分でキャリアが競争している点について説明を求められると、「たとえばノキアは2003年頃まで、世界各地で同じスペックの端末を販売していた。これは、SMSやMMSが利用でき、WAP1.0というブラウザ、ちょっとしたゲームができる程度のJavaという性能。当時、海外キャリアは自社の独自性がなければユーザーがすぐ他社に乗り換えるというリスクを抱えていたが、英ボーダフォンがVodafone live!というサービスで欧州を席巻し、キャリアごとの端末・サービスという状況が出てきた。データ中心の市場である以上、今後も自社独自のもの、という流れは続くだろう」と述べた。


3キャリアの見解

2時間以上かけてオブザーバーからの意見を聴いた第5回会合

2時間以上かけてオブザーバーからの意見を聴いた第5回会合
 これらのプレゼンテーションを受けて、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイルは、あらためて自社の立場を説明した。

 まずNTTドコモは、千本氏が主張した規制強化案について、「シェアと市場支配力は別の話ではないか。MVNOはあり得るが、現在のドコモはシェアや利益が下落し続けており、そこにNTT東西と同じ規制というのは受け入れられない。市場支配力がないということで、MVNO向け卸売り料金の公開や、サービスとしてメニューにするということが義務化されるのは反対する」と拒否する姿勢を示した。

 また「基本的にマーケット全体で何を目指していくのか、という政策論が欲しい。全てのプレイヤーを満足させる案はないだろう。奨励金は不公平かもしれないと認識しており、今後前向きに取り組んでいく。携帯市場は、キャリアだけではなく、パソコンで栄えてきたネットという市場も巻き込みつつある。かつての固定通信市場と同じようには見て欲しくない」とした。

 KDDIは、これまでの主張を改めて説明する形で「端末原価は、過去2年間で10%下がった。機能が向上しながらコストダウンできたのは、KCPなど仕様の共通化が効いているから。奨励金は課題・問題があるが、これまでの急成長を支えるという役割があった。ただ、ユーザーの不公平感は正しいと思っており、今後どう説明していくか検討している。SIMロックは奨励金とセットの問題で、現時点では選択肢を増やしていくと認識している。ただ、技術的な面や海外への流出といったことを踏まえて考えていきたい。MVNOについても、現状のKDDIのビジネスモデルでは限界があるため、うまくやっていきたいという考え。これは以前から変わりない」とした。

 ソフトバンクモバイルは「SIMロック解除は前向きに検討したい。ただ、ユーザーの選択肢を広げるという目的からすれば、全キャリアが同じように実施すべきで、そうすることで公平性が担保できる。奨励金については、既に導入した割賦販売で解決できたと見ている。MVNOは、多様なサービスに繋がるため、現在、協議を進めている」とした。

 座長を務める東京大学名誉教授の斉藤 忠夫氏は、キャリアごとにコンテンツの仕様が異なる現状を踏まえて、「かつて国内はNTTとKDDしかなく、日本国内で仕様を統一する機能がない。たとえばWiMAXの動向を見ると、韓国や中国にはフォーラムがあるけれども、日本にはなく、日本の仕様を統一するという話にならない。このあたりはちゃんとやらなきゃいけない」と述べ、国際標準だけではなく、日本での仕様統一も重要との見解を示した。

 次回会合は4月26日開催予定。これまではオブザーバーとしてキャリアなども出席していたが、次回は構成員だけの会合となる。



URL
  モバイルビジネス研究会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile/

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(関口 聖)
2007/04/06 20:38

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