KDDIは11日、報道関係者を対象に、法人向けソリューションの事例紹介を行なう会合を開催した。12月8日に発売されたばかりの「E03CA」を活用する事例などが紹介された。
■ E03CAの特徴とは?
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E03CA
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E03CAの概要
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防水および耐衝撃性能を備えるE03CAは、ヤマト運輸で採用されることが明らかにされているが、そのヤマト運輸では、かねてより携帯電話を業務に活用してきた。宅配業務を展開する同社だが、荷物の受け取りから配達までの流れを見ると、拠点間の移動時に課題があり、配達が完了したかどうかは判明しても、いつ届いたかデータとして分からないなど、リアルタイムでのステータスを把握することが実現できていなかった。そこで、2005年6月に導入されたドライバー向けシステムでは、まず携帯電話とハンディターミナルをBluetoothで接続し、配達が完了したかどうか情報収集する仕組みを作り上げた。
2005年11月に導入されたシステムは、携帯電話とペン型バーコードリーダーを使ったもので、荷物のバーコードを読み取って、配達センターから荷物が届けられる部分の状況管理に利用されている。どちらのシステムも、配達に関する部分だが、集荷については、料金の計算など携帯電話にとっては負荷が大きい処理が必要となるため、基本的にハンディターミナルのみとなっていた。また、携帯電話は基本的に通信手段として活用されるに留まっていた。
しかし、今回発売されたE03CAでは、集荷までカバーする予定で、通信に加えて業務そのものに関する処理を行なう。また配達に欠かせない住所や郵便番号は、各15万件ずつ、計30万件に及ぶ巨大なデータベースだが、これまではハンディターミナルに格納されていた。E03CAでは30万件のデータをそのまま登録し、業務に活かせるようになっている。
プレゼンテーションを行なったモバイルソリューション事業部の阿部正吉氏によれば、従来までの法人向け携帯電話と、E03CAの大きな違いは、システム管理者がE03CAに対して、アプリケーションのインストールやバージョンアップ、削除を一括で操作できるという「ビジネスアプリ管理サービス」とのこと。同機能の搭載で、セキュリティ面でも法人顧客が安心して利用できるようになったようだ。
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防水・耐衝撃性脳を備える
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大容量バッテリーを採用
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E03CA導入に関するヤマト運輸のリリース
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2005年6月に導入されたシステムの概要
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こちらは2005年11月にスタートしたシステムの概要
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配達に関しては、郵便番号・住所といったデータベースが必須だ
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■ GPS、アルコール検知、簡易BREWアプリ制作ツールなど
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バイクにGPS対応携帯電話を載せて、走行ルートを測った
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auでは積極的にGPSを活用してきたが、法人でも活用されている。まず運送会社から求められた事例は、「1つの地区を複数のドライバーでカバーしているが、人によって効率が違う。どういうルートを通っているか、測定したい」というもの。そこで同社では、システムを提案するために、GPS対応の携帯電話をバイクに装着し、走行ルートを測位した。3秒ごとに測位したという90分間のデータが披露されると、地図上をバイクのアイコンが移動し、時に休憩を入れてアイコンが停止する様子を示しながら、走行ルートを調べるというニーズに対応できることを示した。また陸地からほど近い範囲であれば海上でもGPS測位ができるとのことで、船のルートを測位したデモも披露された。
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アルコール測定器(左)と携帯電話(右)
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このほか、観光会社や輸送業からニーズが高まっている製品として、飲酒しているかどうかアルコール測定が可能なシステムも紹介された。ここで用いられる測定器は、据置型アルコール測定器を350社に1,200セット販売しているという東海電子が制作したもので、携帯電話と連携する機器であることから「ALC-Mobile」と名付けられている。
使い方としては、BREWアプリを起動してALC-Mobileに息を吹きかけると、そのデータを管理側に送信するというもの。息を吹きかける際には携帯電話のカメラも起動し、顔写真を撮影するほか、GPSの測位も行なわれる。飲酒運転の撲滅というよりも、運転手に意識させることで、抑止効果を狙うほか、導入側にとっては法令遵守効果、利用者から安心感を得る効果などが見込める。
既に30社、400セットほど販売されているとのことだが、価格は89,000円程度で他社より高いという。同社では、「他社より高い分、測定器の性能は高い。タバコの煙や口臭の物質には反応せず。エタノールだけ検出する。誤作動・誤検出がない製品としてアピールしている」と説明している。
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測定したところ
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エタノールが含まれる洗口剤を使ってから測定すると、検知されて赤で表示され、警告音が鳴る
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スピーディな提案が実現できるというケータイ・カスタム・キット
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また7月に「WIRELESS JAPAN」で披露された簡易BREWアプリ制作ツール「ケータイ・カスタム・キット」も紹介された。XMLで動作を記述して、シンプルなBREWアプリをスピーディに制作できることが大きな特徴だが、同社モバイルソリューション商品開発本部の江口 和幸氏と阿部氏は「法人向けには、個別のケースに対応する場合とASPを提供する場合があるが、多くの顧客は具体的な要求は固まっていないものの、とりあえずスタートしたいと考えている。またSIベンダーにとっても、ソリューションを提案したくとも活用できる道具がない状況だったりする。そこを解決するためにケータイ・カスタム・キットの提供を開始した」と説明する。
その場でガスメーターの検診を行なう業務を想定した簡易アプリのデモが披露されたが、それはおよそ一日で制作できるという。また出退勤をアプリで登録する勤怠管理アプリの場合は30分程度で制作できる。
阿部氏は「最近は分厚い資料ではなく、A3用紙に提案事項をまとめて1枚の資料だけで営業しているが、それとケータイ・カスタム・キットがあれば、顧客の目の前でデモシステムが作れる。提案できるスピードが速くなり、顧客は実際に体験して判断できる」と、利便性の高さを説明していた。
■ これまで、そして今後のトレンドは?
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企業のニーズは、コストダウンや効率化から、売上拡大・セキュリティなどにシフトしてきたという
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阿部氏は、2005年までの法人からのニーズは、「コストダウンと業務の効率化が多かった」と語る。しかし、2006年春からは、売上の拡大や顧客満足度の向上、コンプライアンス、セキュリティといったニーズが高まってきたという。
同氏は、「E03CAになって、ようやくPDAと同じ程度のことが処理できるまでたどり着いたと思う。ヤマト運輸のように、ハイエンドな法人ユーザーからのニーズに応えるのが今後の流れになるだろう」と語っていた。
物流関連では、RFIDの発展を指摘する声もあるが、阿部氏は「たとえばヤマト運輸では、メール便だけでも30億個取り扱うと聞いているがRFIDタグが1個10円としても、全ての荷物につければ300億円必要になる。RFID対応の携帯電話であれば、もっと進化するだろうが、現状ではコスト面で実現は難しい」と述べた。
■ URL
KDDI 法人向けサービス案内
http://www.kddi.com/business/
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(関口 聖)
2006/12/11 18:34
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