KDDIとテレビ朝日は、4月~9月に実施した、ワンセグに関する共同調査の結果を発表した。ワンセグそのものの利用動向や、携帯向けコンテンツへの影響などのデータが明らかにされた。
今回の検証対象となったのは、auの全ワンセグ端末。KDDIが保有する契約者情報や通信記録、テレビ朝日のBMLサーバーの通信記録といったデータを用いて、利用動向が分析された。また、ワンセグが販促媒体として活用できるかどうか、あるいは携帯向けコンテンツへの影響や、Eコマースへの効果、そして視聴頻度を向上させるための方法について検証が行なわれた。
■ 他社にも情報開示
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KDDI神山氏
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挨拶を行なったKDDIメディア本部 メディアビジネス部長の神山隆氏は、「携帯を片手にしてテレビを見るという生活行動が一般化しているユーザー、視聴者に対して、キャリアと放送局は、どういうことに取り組むべきか、あるいは作業すべきか。そういう観点から方向性を探る取り組みだと理解している。今回の検証は、携帯事業者と放送局が連携したもので、大きな意義があったと思う。またKDDIとテレビ朝日だけではなく、他キャリアや他の放送局、広告代理店にも今回のデータは公表しており、業界の共有財産として視聴者と向き合っていきたい」と述べた。
また、同氏は、「データ放送は、ショートカットとしての有効性が顕著に確認されたというのは予想通りだった反面、まだまだワンセグ端末が少なく、12月で全国エリアになったばかりと、まだ視聴時間が少ない。こういった現状から、効果を十分に活用するに至ってないという点が浮き彫りになってきた」と課題を指摘した。
■ ワンセグのユーザー層、見る番組、年齢別の傾向とは
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KDDI家中氏
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ワンセグの利用率は53%
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ワンセグそのものの利用については、KDDI メディア本部メディアビジネス部の家中仁氏が説明を行なった。
それによれば、ワンセグを月一回以上利用するユーザーは、全体の53%にのぼり、年齢層で分けて見ると、10大男性が60%程度に達して最高値をマークしたほか、ほぼ全ての年齢層で50%前後を記録、ほぼ全てのユーザー層でワンセグが利用されていることが明らかとなった。
テレビ番組には、さまざまな種類があるが、ワンセグではどのようなジャンルが視聴されるのか。家中氏は、8月の全国高校野球大会決勝戦を例に挙げて「決勝戦はまず日曜に行なわれたが、試合の結果、月曜日に再試合が開催された。再試合が行なわれた際のテレビ視聴数は、平日昼間の放送としては過去最高の数値を記録した。前日に行なわれた(最初に行なわれた)決勝戦よりも数値は高いが、これは日曜は宅内のテレビが利用できるのに対し、翌日は平日であり、外出先でワンセグを利用したと考えられる」とした。
また、災害時についてもワンセグの利用動向が高くなるとのことで、8月14日に発生した首都圏の大規模停電では、テレビ視聴は全国で通常の1.7倍に達した。年齢別に見ると、10代ユーザーは深夜にかけて視聴し、20代以降は20時台がピークという。この傾向について、家中氏は「10代だと自分のテレビを持っていないため、ワンセグケータイをプライベートテレビとして利用しているのではないか」と述べた。
視聴時間は、アンケート調査結果などを踏まえ、月間4時間程度との推定値が明らかにされた。固定テレビは1日3時間55分、1カ月間の視聴時間は約120時間に達する。家中氏は「ワンセグは月間7.3回利用されており、1回あたりの視聴時間は約35分で、月間換算で約4時間になる。視聴の中心は固定テレビで、ワンセグは補完的役割を果たしているのではないか。利用者層は幅広く、特に高年齢層に対しては携帯電話に触れる機会を増加させることに繋がっている。外出先のスポーツ視聴や災害時の情報収集といった使い方は、固定テレビではカバーしきれていなかった視聴機会と言える」と説明し、固定テレビとワンセグ双方の活用が事業化には必要とした。
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年齢や性別で見ても、ワンセグの利用動向に偏りはない
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アナログテレビ対応機種との利用動向比較
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スポーツや災害時に利用
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年齢層で見た視聴時間帯
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ワンセグは月間4時間ほど利用されている
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ワンセグと固定テレビの活用が必要という
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■ ワンセグは効果的、今後の課題も明らかに
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テレビ朝日の西氏
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続いてテレビ朝日 編成制作局 編成部の西 勇哉氏は、ワンセグの事業活用について、販促媒体、デジタルコンテンツ、Eコマースの3点から検証した結果を説明した。
まずは、KDDIがスポンサーとなった番組「音魂」において、auのキャンペーンサイトへのアクセスさせることを目指し、どのようなやり方が効果的か、検証が行なわれた。空メールやデータ放送での告知と比べると、その後に行なわれた、LISMOのぬいぐるみプレゼントとテレビリンクの追加のほうが誘導数は増加したが、さらにワンセグのデータ放送の使い方を紹介する映像(インフォマーシャル)の放映で、アクセス数は増加した。
また、インフォマーシャル放映後に30秒だけリンクを設けていた場合と、90秒残していた場合を比べると、90秒間残していた方がよりアクセス数が多かった。これについて西氏は「ワンセングは販促媒体として見ると、ショートカットの役割を果たしているが、実際にユーザーが行動を開始するまでには、ある程度時間を要する。現時点での課題としては、テレビ放送でワンセグの利用を呼びかけること、そして時間で制約されるテレビCMに対して、データ放送はその制約を解消する手法が必要ということだ」とした。
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プレゼントやインフォマーシャルなどで誘導効果は高められる
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インフォマーシャル終了からユーザーが行動するまでタイムラグがある
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通販への影響も検証された
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視聴者のうち、KDDIのデータからワンセグ利用者は0.14%に過ぎないと推定されているが、Eコマースへの影響を見たデータは、通販サイトへの訪問者のうち、28%がワンセグ経由という。また購入者のうち8%がワンセグ経由とのことで、誘導効率が高いことが示された。西氏は「通販サイトに訪れたユーザーの中には、購入を決めていない“見込み客”も含まれている。今後は通販サイトで買う気にさせる演出が必要で、さらに“ワンセグであれば買い物できる”というイメージを広める必要がある」と述べた。
デジタルコンテンツへの影響は、6月のワールドカップ中継で検証が行なわれた。テレビ朝日の携帯向けスポーツ速報サイトへアクセスしたユーザーのうち、ワンセグのデータ放送を経由したのは約5%。視聴者数は全体の0.14%とみられ、通販と同じくデジタルコンテンツに対してもワンセグは誘導効果が高いとの判断が示された。
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ワールドカップ中継でデジタルコンテンツの利用動向を検証
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ワンセグからの誘導効果は高い
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■ ワンセグの視聴機会を増やす方策を
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「ドラえもん」で視聴そのものを喚起させる試み
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西氏は、ワンセグは、オンラインメディアへの高い誘導効果があるとする一方、視聴時間が少なく、強力な媒体価値を得ていないと指摘。そのため、9月1日には、視聴数を増加させる方策を実験したという。
実験は、「ドラえもん」など特定番組の視聴を促進させるもので、あらかじめEZチャンネルを使って、コンテンツを配信しておき、自動起動機能で、放送開始直前に動画を再生し、ワンセグを起動するよう呼びかけた。その結果、データ放送の利用者数は通常の2倍に達したという。
西氏は、「ワンセグの有効性が実証されたが、視聴時間の拡大など取り組むべき点がある。放送事業者だけではなく、通信会社をはじめ、関係各社との連携が必要だ」と述べ、今後もクロスメディアの連携を進める考えを示した。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
テレビ朝日
http://www.tv-asahi.co.jp/
■ 関連記事
・ KDDIとテレビ朝日、ワンセグでビジネスモデルを共同検証
(関口 聖)
2006/12/08 17:45
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