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クアルコム、仙台でフラッシュOFDMをデモ

クアルコムジャパンの川端氏
 クアルコムジャパンと伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、宮城県仙台市の東北大学において、フラッシュOFDMのデモンストレーションを行なった。

 フラッシュOFDMは、モバイル環境において高速通信を実現する通信技術。ブロードバンドに最適化されたIP特化型の通信技術となる。フラッシOFDMについて説明したクアルコムジャパンのワイヤレスブロードバンド推進室 ディレクターの川端啓之氏は、音声電話の「電話機→コードレス電話→携帯電話」という変遷と同じように、「有線LAN→無線LAN→フラッシュOFDM」という流れにあるものと説明した。

 なお、欧州ではT-mobileの子会社が商用化しているが、ワイヤレスブロードバンドを実現すると言われている技術にはこのほか、モバイル向けWiMAXやiBurstといった通信技術も存在しており、推進する団体や企業が国内での周波数獲得を狙っている状況だ。

 フラッシュOFDMの端末には2つのトランシーバーを搭載する。電波を片方のトランシーバーが受信中には、もう一方が絶えず電波を探し、基地局と基地局間をまたぐ、いわゆるハンドオーバーの際に、スムーズなアンテナの切り替えが可能となる。上りと下りで別の基地局から電波を受けるといったことも可能だ。

 フラッシュOFDMは、元々米ベル研究所が研究していたもので、1998年に発明された。2000年には当時のプロジェクトリーダーがスピンアウトし、フラリオンテクノロジーズを設立。同社は2006年にクアルコムに買収された。

 400MHz帯~3.5GHz帯に対応し、1.25~5MHz幅の一対のFDD無線周波数を利用する。広域をカバーすることが可能で、欧州ではより遠くへ電波を飛ばすことができる低い周波数帯を使って、ルーラルエリアなどをカバーしている。伝送速度の理論値は、下り最大15.9Mbps、上り最大5.4Mbpsとなる。

 QoSを実装し、通信事業者などがサービスレベルをコントロールしたり、効率的なアクセスが行なえる。休止状態(ドーマント)からの復旧が200~400ミリ秒と速いのも特徴だ。

 現在、開発されている端末は、PCカード型のフラッシュOFDM通信カードやデスクトップモデム型のほか、無線LAN搭載のフラッシュOFDM対応ブロードバンドルーターなどもある。このルーターでは、屋外フラッシュOFDMの電波を受けて、家庭内は無線LANでアクセスするというもの。携帯電話タイプもある。


フラッシュOFDMの位置付け 技術概要 デュアルトランシーバーでハンドオーバー

QoSを実装 効率的で無駄のない無線通信を行なう 休止状態からの復旧が早い

携帯電話型のプロトタイプ PCカードタイプ 無線LAN搭載ルータータイプ

デスクトップモデムタイプ PCカードタイプのノートパソコンに接続。現在はアンテナが大きいが、商用化の際は無線LANカードのような形状になる予定という

デモンストレーション

フラッシュOFDMでケータイ Watchにアクセス

基地局の直下だが、スループットは約2.5Mbpsとなった
 デモンストレーションのための実験基地局は、仙台市内中心部をカバーするように3機設置されている。東北大学片平キャンパス電気通信研究所の屋上、宮城県庁舎、ソフトバンクテレコム宮城センターに設置された基地局では、2GHz帯のそれぞれ1.25MHz幅(×2)を利用する。スループットは下り最大3.2Mbpsで、実測値では下り最大2.7Mbps程度になるという。バックボーンは通常のODNのもの。

 まず、基地局の直下にあたる東北大学の電気通信研究所において、静止時のスループットを計測。パソコンは無線LANでルーターに接続し、ルーターがフラッシュOFDMの電波を受けている環境では、gooのスピードで2Mbps程度となった。無線LAN搭載のルーターを利用することで、過疎地域などの有線通信が難しい地域でもブロードバンド環境が実現するという。

 なお、東北大学の屋上に設置された基地局設備は通常屋内で利用するタイプのもの。屋内用は携帯電話の基地局と同じコンポーネントを採用しており、ブレードを追加することで携帯電話の既存の基地局に組み込めるという。アンテナ設備についても携帯電話のものを利用している。

 デモでは、2台の車を使って移動する車同士でSkypeを利用したり、ストリーミング動画を利用するといった様子が公開された。ハンドオーバー時もスムーズなアクセスが可能だった。移動時に行なったスループットの計測でもほぼ2Mbps台をキープし、基地局から4.2km離れた地点でも1Mbpsを上回っており、ワイヤレス環境だがADSLのような通信が可能といった印象だった。なお、スループットに影響はあまり見られなかったが、直進性の高い2GHz帯を利用しているため、中心部のビルが多い地域では基地局の効率的な配置が必要になるようだ。


アンテナ特性の異なる3つの基地局で仙台市中心部をカバー 基地局ネットワーク構成 東北大学の屋上には、シェルに入った屋内型基地局を設置

東北大学屋上のアンテナは1セクターで120度の範囲をカバーする シェルの中には携帯電話とお案じコンポーネントの基地局がある

車間通信実験は、普通の乗用車で実施された 画面左がSkype、右上は現在掴んでいる基地局が表示される デュアルトランシーバーを搭載し、一方が基地局を探し、裏で掴んでおく

ハンドオーバーのタイミングやで電波の状況によっては、上りと下りで別の基地局を掴む場合もある Skypeの映像やストリーミング映像なども特に途切れることなく伝送された 基地局から4.2km地点では1.68Mbps程度だった

フラッシュOFDMは携帯電話以外の事業者が導入できる

 クアルコムジャパンの川端氏は、フラッシュOFDMの使い道として、「ナローバンドの帯域でモバイルが利用できる」と話した。同氏は、auのCDMA 1X WINのネットワークで利用されているEV-DOの違いとして、EV-DOは携帯電話に対するサービスであるが、フラッシュOFDMでは「3Gではないオペレーターや、IPだけのサービスをやりたい人たちが導入できる」とした。

 具体的な事業者については明言しなかったが、すでに動いている無線システムの置き換えといった需要があるとし、「レガシーネットワークをIPネットワークにできる」と述べた。防災無線やMCA無線(業務用無線)などでの引き合いがあるようだ。前述の通り、携帯電話との共通コンポーネントとなるため、基地局設備のコストも抑えられるという。



URL
  クアルコムジャパン
  http://www.qualcomm.co.jp/
  OFDMの概要
  http://www.qualcomm.co.jp/technology/ofdma.html
  伊藤忠テクノソリューションズ
  http://www.ctc-g.co.jp/
  東北大学
  http://www.ctc-g.co.jp/

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(津田 啓夢)
2006/10/31 20:58

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