ノキア・ジャパンが主催した開発者向けイベント「Forum Nokia: Mobile Buisiness & Technical Days」において、初日の15日、イー・アクセス 移動体事業本部 商品企画本部長 我妻 義孝氏が「日本の携帯電話市場とモバイルブロードバンドの将来性」と題したスピーチを行なった。スピーチでは「新規参入組」として来年以降の参入が期待される携帯電話事業についての戦略が語られた。
■ 「まだ市場は枯渇していない」
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イー・アクセス 移動体事業本部 商品企画本部長 我妻 義孝氏
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まず我妻氏が冒頭に引き合いに出したのは、日本のADSL料金の安さだった。「ADSLの通信速度あたりの料金はニューヨークの1/5。これをケータイの世界でも実現したい」という。我妻氏は、「移動体通信市場の規模は8.5兆円。固定ブロードバンドの約12倍だ。8,000万契約を超えた今、頭打ちだという見方もあるが、1億契約くらいは行くのではないかと考えている。新規参入組にも成長の余地はある」と分析。携帯電話事業の当面の目標は「1億契約になった暁に、その10%となる1,000万」を目指すという。
また、パケット定額制の現状についても触れ、「携帯電話での利用に限定された定額制では不満。逆にウィルコムは安いがスピードが遅く、セルラー技術のパケット通信では値段が高い。消費者が要求するサービスが実現されておらずバランスが悪いのではないか」と指摘。「現在は月間16MB程度の通信料だが、これが1~3GBに膨らんでいくだろう。その中で、我々はただ料金を下げることだけを目指しているのではない。機能にあったリーズナブルな料金を目指している」と語った。
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「新たな市場を創造すれば、1億契約は行く」と我妻氏
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携帯電話業界は、数年遅れで固定ブロードバンド業界を追いかけているという
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■ HSDPA、オールIPを採用~MVNO、組込にも注力
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最新技術の採用、リーズナブルな料金、新たなビジネスモデルの3つが重要だという
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講演はここから具体的な戦略についての話題となった。同氏は「モバイルでは固定で実現したことから数年遅れで実現している」とし、「我々が営業を始める頃には免許をいただいている時には、データ通信定額が定着し、FeliCa搭載や情報家電化が進み、デジタル放送にも対応しているだろう」と見通しを述べた上で、「まず重要なのがその時点で最新の技術を導入すること」とした。技術的には、下り3.6MbpsのHSDPA、HSUPA、通信網のオールIP化、WiFiやWiMAXとのデュアル化などをポイントとして挙げている。また、ADSL事業者として「固定とモバイルをうまく連動させていかなければならない」とも付け加えた。
さらに既存の事業者との差別化ポイントとして、「機能やデザインを選べるような環境を作っていきたい」と語り、カスタマイズ可能な携帯電話の登場も示唆。このほか、ポーダブルプレーヤーやデジカメ、携帯ゲーム機に向けた組込系の通信モジュールや、すでにニフティと協議に入っているMVNOに対する回線貸し出し事業にも取り組む方針だという。なお、その際には端末に「Powered by E-mobile」といった品質を保証するブランドロゴも加える考えだ。要約すると、通常の音声・データ端末、組み込み、MVNOを3本の柱とするようだ。
■ 「数よりも、利益を取れる体勢を」
飽和状態といわれる市場の中で事業をスタートするイー・アクセスは、2006年度中に全国主要都市からサービスインし、その後全国展開。人口カバー率は早期に95%以上を目指す。「既存のオペレーターと競合すると言うよりは新しい市場を開拓したい。数を取るより、きちんと利益を取れる体勢を作っていきたい」と意気込みを述べ、スピーチを締めくくった。
■ URL
Forum Nokia: Mobile Buisiness & Technical Days
http://www.nokia.co.jp/forum/about/event/techday2005/
イー・アクセス
http://www.eaccess.net/
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(伊藤 大地)
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