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総務省は14日、都内で「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第5回会合を開催した。各社から800MHz帯の取り扱いに関する主張が述べられた前回を踏まえ、今回は検討会構成員から疑問点を投げかけ、それに各社が答えるという形で進められた。
ソフトバンクBB代表取締役社長の孫 正義氏があらためて800MHz帯での新規参入を主張する一方、NTTドコモ代表取締役社長の中村 維夫氏やKDDI代表取締役社長の小野寺 正氏は「再編なくして800MHz帯での参入は不可能」と反論するなど、各社の主張はこれまでと変わらず、かみ合わない状況のまま、次回会合から構成員のみでの検討に入ることになった。
■ 孫氏と小野寺氏が激しくやり取り
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NTTドコモ 代表取締役社長 中村 維夫氏
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KDDI 代表取締役社長 小野寺正氏(左)
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今回の会合では、「周波数再編のプロセス」「マルチバンドについて」「新規参入の取り扱い」「既存事業者への周波数割り当て」と大きく分けて、4つのテーマに則って進められたが、基本的に各社の主張は従来通り。
ドコモとKDDIは「再編を待って800MHz帯の割り当てを決めるべき」、ソフトバンクBBは「2007年にもサービス提供を考えており、再編中に空いた帯域を新規事業者に割り当てるべき」としたほか、イー・アクセスは「1.7GHz帯で音声通話もサポートした全国展開でのサービスを2006年度に開始したい」との意向を示したほか、アイピーモバイルおよび平成電電は新技術による参入を求めている。
NTTドコモの中村氏は、そもそも再編終了時期が2012年となっているのは、携帯電話に近い周波数帯を使うアナログテレビ放送の終了時期にあわせたものであり、細切れで利用されている800MHz帯を整理整頓して、700MHz帯や900MHz帯の利用拡大を目指すものとあらためて説明。また同社の見通しでは、このままいけば2006年度にもドコモのサービス提供には80MHz幅が必要となり、現在2GHz帯で40MHz幅を割り当てられているものの、約2年後には周波数が足りなくなるという。
中村氏は、2012年までは、干渉を避けるために多くの800MHz帯では3G方式は利用できないとしたものの、一部については都市部だけに限定するといった形で利用できる可能性があるとした。また、PDC方式(ムーバ)のユーザーを無理矢理FOMAへ移行させることは非常に困難であり、ユーザーが自然とFOMAへ移行するよう、魅力あるサービスや端末を提供するしかないとも述べた。
一方、KDDIの小野寺氏も現行の800MHz帯ユーザーを他の周波数へ移行させるのは非常に困難との見解を示したほか、ユーザーの利用動向はデータ通信を多用する傾向にあり、ユーザーの絶対数は大きく変化する可能性は少ないものの、データ通信量が飛躍的に伸びる可能性があると語り、2005年度上期の時点では1MHz×2あたり約130万加入を収容できるところが、2012年度には約70万加入の収容になるとの見解を示した。
また、800MHz帯のうち、一部分を新規事業者に割り当てた場合、KDDI・ドコモともに3G方式を800MHz帯で提供できなくなることに加えて、再編そのものが進まなくなるとも指摘した。
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ソフトバンクBB代表取締役社長の孫 正義氏
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両社ともに、従来通り、総務省案の再編が終了しなければ、800MHz帯での新規参入は厳しいとの主張だが、ソフトバンクBBの孫氏は、既存2社は800MHz帯から撤退しつつ、1.7GHz帯や2GHz帯を使うことでスムーズに移行できるとのサンプル案を提示。また800MHz再編にあたっては、KDDIだけでも5,000億円という費用がかかるとされているが、孫氏は「新規参入がなくとも、再編は進められること。つまり新規参入と再編は関連がなく、新規事業者は再編費用を負担すべきとは考えられない」と語った。
この再編案に対しては、ドコモ・KDDIともに反発。特に小野寺氏は、「我々も似た案を慎重に検討したが、再編は容易ではない。既存ユーザーに迷惑をかけずにできるはずがない。実際にオペレーションしてみればわかる」と強く主張。孫氏は「ユーザーにしわ寄せすることなく再編できれば良いだろう。思想については異論はなく、きちんと解があれば良いと理解した」と切り返したが、小野寺氏は「我々がいかにも全てに合意したように言われているが、条件の良いところだけ取り上げた話には一切合意できない」と拒絶する姿勢を見せた。
マルチバンドについて孫氏は、「新規参入がなくとも、ドコモ・KDDIともにマルチバンド対応端末を出すとしている。マルチバンドの是非は当然のことであり、もはや議論することでもない」としたが、KDDI小野寺氏は「マルチバンドは再編のため、仕方なくやること。シングルバンドのほうがコスト面や運用面で効率的であり、マルチバンドより良いのは常識だ」と述べ、マルチバンド対応で全て解決するという孫氏の姿勢を批判した。
■ 議論の修正を求める声も
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ボーダフォン代表執行役社長兼CEOの津田 志郎氏
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ボーダフォン代表執行役社長兼CEOの津田 志郎氏は、これまでと同様に「検討会の内容が800MHz帯の取り扱いに偏ってきている」と指摘し、議論の修正を促した。その上で同氏は、既存事業者の中でも800MHz帯を利用していないこともあり、まずはドコモやKDDIと同じ競争条件になるように周波数の割り当てを求めていくとしたほか、昨今のユーザー数の伸び率が低調なことを理由に、周波数が割り当てられないとなれば成長が制限されることになるとして、公正な競争環境の実現を訴えた。
同氏は、ボーダフォンは、国内事業者の中で唯一国際的に展開している企業であり、ローミングサービスなどを考えれば、1.7GHz帯が割り当てられれば、エンドユーザーにとっても有益ともアピールした。また津田氏は「既存事業者に800MHz帯を割り当てられていたのは、独占するためではなく、低い周波数帯のほうが技術的に実現しやすかったから。また、可能であれば800MHz帯を割り当てて欲しいが、現実を見れば困難」として、総務省案を支持する姿勢を見せた。
検討会の構成員からは、「今回の主題は、周波数の利用拡大だ。かなり議論が矮小化している気がする。孫氏の主張に納得できる部分もあるが、ユーザーの便益を高めることも考えなければならない」と述べ、各社が2GHz帯を有効利用する方針があるかどうか、疑念を呈した。
また他の構成員からは、「余りにも800MHz帯へ興味が行き過ぎているのではないか。移動体通信では、5GHz以上の帯域は使いにくいと言われるが、2GHz帯は非常に良い周波数と考えられる。確かに800MHzのほうが浸透率は良いが、技術である程度解決できるのではないか。孫氏からも1.7GHz帯でどうすれば800MHz帯と同じことができるか、提案してもらえるとありがたい」との意見が出された。
これを受けて、孫氏は「基本は800MHz帯。有利な周波数ということは明白だ。新規事業者は、既存事業者と同じ条件でなければ勝てない。800MHz帯と1.7GHz帯を既存事業者と同じようにセットで持ちたい。そうすることで、すぐに緊迫した競争状況を作りたい」と述べ、同社の方針を再度繰り返した。
■ オープンな議論を求める孫氏
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イー・アクセス 代表取締役COO 種野 晴夫氏
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このほか、孫氏は検討会の内容をオープンにするように求めた。これは傍聴者に対して、録音が禁止されていることを指摘したもので、同氏は「国民の資産を扱う会合にも関わらず、なぜ録音を禁止しているのか。そのまま公開されるほうが誤解を招かずに済む」と述べ、インターネットでの生中継をするよう求めた。報道関係者や各社関係者で占められた傍聴席だが、同氏は「物理的な制約があるならば、無料で福岡ドームを貸し出す」とも述べ、透明性の確保を訴えた。
これに対して検討会側は「既にこのルールで運営しており、各社から提出されているデータもこの場だからこそ出ている企業秘密のものもある」といった理由を挙げ、孫氏の主張は受け付けるとしたものの、従来通りのスタイルを続けることを示唆した。
また12月6日にソフトバンクBBが800MHz帯での無線局免許を申請し、総務省が受け付けたことについて、イー・アクセス 代表取締役COO 種野 晴夫氏がその意義を尋ねる場面もあった。総務省側は、「適正な形にまとめられた申請であれば受理するということ」と語り、申請の受理は、ソフトバンクBBの申し出通りに800MHz帯での免許を与えることではないとした。
これを受けて孫氏は「ではこの検討会で議論された内容は、どのような形になるのか。最終的に誰が新規参入を決定するのか」と質問すると、検討会側は「あくまで検討会では、意見をまとめて総務省へ提出するだけ」とし、総務省側は「これまでの議論や検討会の意見を踏まえて、総務省が決定する」と説明した。
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平成電電代表取締役の佐藤 賢治氏
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アイピーモバイル代表取締役の杉村 五男氏
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■ URL
携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/keitai-syuha/
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・ 800MHz帯を巡る論議、ソフトバンクBB対ドコモ・KDDIで白熱
・ ソフトバンクBB、800MHz帯で携帯電話の免許申請
(関口 聖)
2004/12/14 20:21
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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