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NECは、埼玉県児玉郡にあるFOMAやPDCなどの国内向け携帯電話の生産拠点「NEC埼玉」を報道関係者向けに公開した。同工場が報道関係者向けに披露されるのは初めてのこと。端末のほか基地局なども生産しており、普段なかなか見られない端末の裏側の工夫を紹介しよう。
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NEC埼玉の外観
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工場内には建物全体の模型が展示されていた
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■ 基地局の生産ラインを見学
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基地局の生産ライン
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まず訪れたの基地局の生産ライン。基地局の生産は、プリント基板に電子部品などを実装しパネルを作成し、パネルをサーバーなどを入れるラックのような外装パーツに実装、その後、エージングなどの動作テストに入る。埼玉工場の生産ラインは、一つの生産ラインが1カ所に固まって作業を行なう方式となっている。
基地局は全て受注生産となり、その都度注文内容が異なる。1つの基地局を1人で作る場合もあるとのこと。通常は1機の基地局を完成するのに3~5日かかる。組み立て工程は効率化が進んだため短期間で作成できるが、動作確認などに2日程度の時間がかかってしまうという。説明スタッフは、「今後の課題はいかに動作確認期間を効率化するか」と語っていた。
なお、2003年度のNECの基地局出荷台数は3Gを中心に約9,000台となっている。
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フロアにはさほど人はいない
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基地局の作成工程
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■ 作業効率を高めて基盤実装技術の不具合を抑える
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金属プレートの穴からクリームハンダが流し込む様子を説明
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続いて、SMTと呼ばれるプリント基板にチップなどを実装する部門が紹介された。小さな穴が空いた金属プレートにプリント基板を設置して、その穴からクリームハンダを流し込み、電子部品を置いていく。説明スタッフは、その工程をピザに例えて説明し、ハンダに熱を加えて溶かして部品を実装していく様子を、「釜にピザを入れてチーズが溶けていくようなもの」と表現した。
なお、この工程は全て機械で行なわれ、生産ラインは締め切られていた。部屋は内圧が高められており、ほこりなどの侵入を防いでいるとのこと。なお、2000年頃には100万におよぶチェックポイントのうち、10~15ポイント程度の不具合が発生していたが、見直しを図り現在では3~5ポイント程度まで不具合の発生を下げているという。
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こちらはガラス越しの見学となった
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SMTの作業工程
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■ 携帯電話の生産ラインは対抗バトルで競争
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携帯電話の生産ライン
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次に訪れたのは、携帯電話の生産ライン。組み立てと試験設備を兼ねており、ガラスの向こう側で生産スタッフが黙々と作業を行なっていた。従来、ベルトコンベアを使った生産ラインを採用していたが、現在では数人で構成される島が1つのラインとして機能しているという。ベルトコンベアの時代は180m程度のスペースを要したが、島を採用し、設備投資を抑えて効率化を進めた結果、現在では6m程度のスペースで端末を作成できるようになったとしている。
組み立てラインには、一定以上の部品をストックすることはなく、定期的に“ミズスマシ”と呼ばれる部品補給部隊が補充していくことで作業効率が高められている。スタッフによれば、1台の端末を作成するのに試験を含めて6分程度かかるという。こちらもほこりなどが入らないように湿度を高くし、内圧が高められているとのこと。
また、我々見学者通路の壁には「ライン対抗生産性バトル」とかかれた表が貼られていた。残念ながら撮影は許可されなかったが、従業員ごとに生産性を競わせ、それをポイント制にして表にしているという。個人ごとに細かく管理することで無駄を省き、端末の品質も維持しているとのこと。説明スタッフはこうした管理方法を「まち針管理」と呼んでいた。
なお、NEC埼玉では1日に2,000台、1カ月で100万台程度の端末を生産できるという。国内向けの端末を生産する工場だが、例外的にNECが中国市場向けフラッグシップに位置づけるカード型携帯電話「N900」はこの工場で作られている。細やかな技術力とノウハウが必要となるため、この端末は中国ではまだ作成できないとしている。
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端末の試験を行なっている
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こちらの従業員はN900iSを作っているようだ
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■ 懐かしのN端末から最新のタッチパネル搭載モデルを紹介
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発表されたばかりの「N620」
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最後に工場に入ってすぐ脇にあったショールームを見学した。ショールームには、歴代のNEC携帯電話が展示されており、中でも、1987年に登場した同社の国内向け市販モデル1号機「TZ-802B」や、1991年登場の初の折りたたみ端末「TZ-804B」、そして“折りたたみのN”が1997年に発売したストレート端末「デジタルムーバ N203 HYPER」など興味深い端末が展示されていたのが印象的だった。
ショールームには今回のために中国市場向けのモデルが展示されており、それらにさわることもできた。ペンダント型で鏡面ボディを採用したGSM/GPRS端末「N910」や、フラッグシップ機「N900」のほか、メガピクセルカメラ搭載端末「N830」、「N718」のほか、W-CDMA端末「616」や「313」が用意され、いずれも国内モデルとはとはことなったニーズを背景にした製品のせいか、新鮮な印象を受けた。
フラッグシップの「N900」は、同社のイメージ商品でもあるため、価格は中国で縁起のいい数字とされる8を採用して8,888元だという。ミドルクラスからハイエンドの端末のみを海外で送り出しているNECだが、ミドルクラスのモデルだと3,000元程度になる。
さらに、6月30日に発表されたタッチパネル搭載モデル「N620」も、開発段階のモデルが用意されていた。スタイラスによる手書き漢字入力が可能で、スタッフはMMSで手書き地図を送信できるとアピールしていた。同端末に数字キーは搭載されておらず、ディスプレイに表示されたソフトウェアキーをタップして電話をかける。
なお、今回の見学会とともに、NECのグローバル事業展開の発表も行なわれた。そちらのの模様は別記事を参照していただきたい。
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「N620」背面部
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漢字手書き入力に対応
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フラッグシップの「N900」
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コンパクトな「N910」
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国内向け市販モデル1号機「TZ-802B」
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折りたたみ端末「TZ-804B」
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ストレート端末「デジタルムーバ N203 HYPER」
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■ URL
NEC
http://www.nec.co.jp/
NEC埼玉
http://www2.dmcd.nec.co.jp/stnec/
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(津田 啓夢)
2004/07/02 22:47
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