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【第8回ケータイ国際フォーラム】
ユビキタス特区の取り組みや、若者のケータイ行動を読み解く

 第8回ケータイ国際フォーラムで、総務省の実施しているユビキタス特区の実例を紹介する「ユビキタス特区サミット」が開催された。報告が上がった事例は横浜、島根、沖縄、福山、福岡、横須賀、札幌、名古屋、京都の9つ。KDDIが出資するメディアフロージャパンや、ソフトバンクグループのモバイルメディア企画も、このサミットに参加している。また、若者のケータイに対する考え方などを社会学的に分析する「ケータイdeディスカッション」も開かれた。


通信と放送の融合を目指した「ユビキタス特区」への取り組み

総務省の安藤氏
 ユビキタス特区サミットの冒頭では、総務省情報流通行政局、情報流通振興課課長の安藤 英作氏が基調講演を行った。安藤氏は「ICT産業は貿易に依存するというよりは内需に依存する。景気後退の曲面においては、ある意味日本の経済を支えている」と、特区で行っている実験の意義を語った。同氏によると、ユビキタス特区の位置づけ自体も、当初から少しずつ変わっているという。「元々は国際競争力の強化が目的で始めたが、今は地域活性化も重要になっている」とし、ユビキタス特区が、日本の経済や社会をよりよくするためのプロジェクトであると説明した。また、新たなユビキタス特区の募集は「選挙がなければ来月にもある」という。


 事例報告のパートでは、最初に、ソフトバンクグループのモバイルメディア企画が、横浜での実験内容を説明した。制度事業本部の千葉 武伸氏によると、同社は「UHFの周波数が完全に空く2011年の事業開始を見据えた実証実験を行っている」という。実証実験はVHF帯のハイバンドを利用し、放送局などが推進するISDB-Tmmの方式で行う。今年の3~4月頃には、横浜市神奈川区で開始する。この取り組みを通じて「リアルタイムのほか、蓄積型コンテンツも導入する。携帯電話の利用形態に合ったコンテンツを実証実験で確立していきたいと考えている」という。実証実験では、ソフトバンクのワンセグ端末2台、PCのUSBチューナー3台が使用される予定で、一般ユーザーへのサービス提供は行わない方針。


モバイルメディア企画の千葉氏 モバイルメディア企画の実験概要

 一方、KDDIが出資するメディアフロージャパン企画は、すでに沖縄で実験を開始している。同社 課長の門脇 誠氏は「地元の放送局や自治体にご協力いただきながら実験を進めている」と話した。具体的には「既存のチャンネルに影響がないよう細心の注意を払い、かつ事前の調査も行った。地元への周知や案内も徹底している」という。門脇氏によると、MediaFLOは「今までにない、次世代マルチメディア放送。エンドユーザーが見て『これはすごい』と思う、ライフスタイルを変えるようなもの」。同社では、リアルタイム放送はもちろん、クリップキャストやIPデータキャストにも力を入れていく方針で、門脇氏は「今の通信で実現できている着うたフルやビデオクリップなども、放送のインフラで実現できるようにしていきたい」と語った。ちなみに、同社はKDDIグループだが、MediaFLOはオープンなサービスにしていくという。また、端末の開発も進めているそうだ。会場では「2009年夏にはMediaFLOを実装したauの試験端末を用意し、実験を行う」と、今後の予定が明かされた。


沖縄で行っている実験の今後について

 同様に島根でも、MediaFLOを用いた実験が行われている。メディアスコープ 専務取締役、矢野 守氏によると、同社の実験は「産学公民が集まっている」という。“産”は同社やクアルコムジャパン、フェリカポケットマーケティングを指し、“学”は島根大学を、“公”は島根県や松江市を、そして“民”は地域の商店街などを指している。島根大学の学生が作ったコンテンツや、子育てをしている親に役立つ情報などを流し、次世代放送の可能性を探るのが同プロジェクトの役割だ。ただ、「20万人程度の規模での情報提供サービスには限界がある」との課題もあり、今後は、周辺の市町村を含め、60万人程度の規模にまで実験を拡大していきたいという。


メディアスコープの矢野氏 島根大学などで行った2008年の実験

社会学的側面から若者のケータイ行動を読み解く「ケータイdeディスカッション」

コーディネーターを務めた関西学院大学大学院の奥野氏
 「ケータイdeディスカッション」は、関西大学社会学部教授の富田 英典氏と武庫川女子大学情報メディア学科准教授の藤本 憲一氏が、「若者のケータイ行動」を議論するイベント。コーディネーターは、関西学院大学大学院社会学研究科の奥野 卓司氏が務めた。

 富田氏は“バーチャルとリアル”をテーマに、発表を行った。同氏はiPhoneアプリの「SekaiCamera」などを、「拡張現実」という概念で説明。バーチャルの情報がリアルと重なり合い、情報による“社会的な抹殺”が可能になることを、「攻殻機動隊」の「光学迷彩」になぞらえ「社会的迷彩」と命名した。ケータイサイト上でのいじめなどがそれに当てはまるという。対する藤本氏は、「若い人に寝床の絵を描いてもらう」という実験を披露。その結果から、若者が常に枕元にケータイを置いていることを指摘した。同氏によるとケータイは、「これを持っておくと一番安らぎ、自分を消し去ることができる」ものだという。

 このディスカッションはインターネットで中継され、滋賀大学宮田研究室が開発した「携帯電話対応コメントカード・システム」で、質問や感想がリアルタイムに寄せられた。中には「mixiの足あと削除機能は、藤本氏のいう『社会的迷彩』ではないか」といったバーチャルとリアルに関する鋭い指摘もあり、会場では活発な議論が交わされた。


関西大学の富田氏 武庫川女子大学の藤本氏

会場にはさまざまな質問や意見が寄せられた

■ フォトギャラリー



URL
  第8回ケータイ国際フォーラム
  http://www.itbazaar-kyoto.com/forum/

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(石野純也)
2009/03/12 12:18

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