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シンビアンの久氏
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会場は満席となった
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7月17日、シンビアンのカンファレンスイベント「Symbian Summit Tokyo 2008」が開催された。メインセッションには、シンビアンやNTTドコモ、富士通、シャープ、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズらのキーパーソンが登場した。
シンビアンの代表取締役社長の久晴彦氏は、毎年行われている「Symbian Summit Tokyo」への事前登録者が1500人を超え、年を追って参加者が拡大している状況を説明したほか、国内のSymbian OS採用携帯電話が、88機種、累計で3800万台になったとした。
「Most widely used software on the planet、我々は、世界で一番広く使われるソフトになりたい」と語り、企業各社に対して、Symbianのプラットフォームを利用して、「世界で一番のゲーム」「世界で一番の携帯電話」を目指して欲しいと述べた。
■ CEO ナイジェル・クリフォード氏の講演
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ナイジェル・クリフォード氏
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続いて登壇したのは、英SymbianのCEOであるナイジェル・クリフォード氏。同氏は、10周年を迎えたシンビアンについて、「もっとも優秀なOSを出そうと思って10年、パートナーの皆さんの努力もあって市場のリーダーになれた」と話した。
「スマートフォンの市場を創出し、発展させ、成功に導いてきた」とこれまでを振り返ったクリフォード氏は、現在、シンビアンのエコシステムにおいて何十億ポンド(1ポンド約211円)の資金が動いているとした。さらに、「顧客に満足度を提供できなければなんの意味もない」と話し、顧客ニーズに従った製品をこれまでも、そしてこれからも提供していくと述べた。
また、世界がこれからも変わり続けるとし、これから携帯電話を体験する世界の10億人のユーザーは、コンピュータやインターネットというものを、まずモバイルを通じて体験することになると語った。
同氏は先日発表されたSymbian Foundationについて、「大胆なビジョン」だと述べ、「この世界の中でもっとも使い易いプラットフォームを提供する。これからの10年も大変エキサイティングなものになる」と意欲を見せた。
シンビアンは2008年第4四半期にもノキアに買収され、2009年上半期にSymbian Foundationが設立される予定。2009年内にSymbian Foundationの最初の発表があり、2年後にはオープンソースとしてプラットフォームが公開される。
■ Symbian Foundationについて説明
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ヨルゲン・ベレンス氏
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英Symbianのマーケティング担当取締役副社長のヨルゲン・ベレンス氏は、SymbianがPSION社のPDA向けOSからスタートしたことなどこれまでを振り返り、現在の端末はコンピュータ化が進んでいると話した。また、ソフト開発においては、あらゆるものを想定しなければならないと述べ、Symbian Foundationを設立し、オープン化を行うのもそのためだとした。
オープンなモバイルのプラットフォームにおいて、Symbianはシェア60%と市場のリーダーとなっている。世界で累計2億台のSymbian OS端末が投入されており、世界で販売される端末の7%がSymbian OSと説明した。
シンビアンのロードマップとしてベレンス氏は、SMP(対称型マルチプロセッシング)について言及。2007年もプロトタイプ版を開発、2008年により安全性を高めたもの、2009年に最適化を図り、2010年にも携帯電話にSMPを実装するとした。
このほか、Symbian Foundationについて語り、「シンビアンとSymbian Foundationは違うもの」と述べた。現在のライセンスであるバージョン9.5はシンビアンが責任を持ってサポートするとした。
Symbian Foundationでは、2009年3月頃からv9.4の提供が開始され、さまざまなモジュールパッケージとして入手できるようになる予定。団体は「Feature roadmapping council」「Architecture council」「Release council」「UI council」の4つの会議で構成され、ボードメンバーは定期的に再選される。
Symbian Foundationの発表以降、ベレンス氏の元にはさまざまな質問が寄せられるという。同氏はSymbian Foundationはまだ設立されていないことや、参加する企業が迅速に開発できるようになることなどを語った。
■ ドコモ辻村氏、「ケータイの今とこれから」を語る
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辻村氏
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シンビアンのキーパーソンたちの講演終了後、NTTドコモの代表取締役副社長の辻村清行氏が「ケータイの今とこれから」と題して講演を行った。
携帯電話市場について説明し、世界の契約者数は約33億人、販売数で11億台が流通しているとし、年間で20%以上の成長を遂げているという。国内では、約1億人、販売数で5000万台、成長率は5~6%とした。また、国内の市場の特徴的な部分として携帯電話を使ったインターネットの利用率を高さなどをあげた。
辻村氏は、今後のモバイルの方向性として、ブロードバンド化、リアルとサイバーの融合、グローバル化の3つのキーワードを示した。通信速度が向上につれて動画サービスの拡充といったブロードバンドコンテンツが見込めるとし、今後は動画のダウンロードだけではなく、動画をアップロードする流れも増えてくると予測した。
また、固定通信と移動通信の高速化のグラフを紹介し、固定と移動の通信速度の差は約10倍で、現在の固定通信の速度に移動通信が5年後に追いついている状況を示した。
このほか、おサイフケータイ、DCMXなどを説明する中で、マクドナルドとの新会社を設立し、おサイフケータイを使ったクーポンの発行や、少額決済のマーケティングなどを紹介。こうした仕組みについて「マクドナルドだけしかできないわけではない。1回の支払いが少なくても効率的なマーケティングツールになるのではないか」と話した。
さらに携帯電話でパソコンサイトを検索するユーザーが増えているとし、「携帯電話では検索結果が100万件あってもしょうがない。せいぜい2~3つ出せばいい」と話した。さらにインターネットの活用が増えていることから、辻村氏は最近の状況を「ケータイのインターネット化ではなく、インターネットのケータイ化と呼んでいる」と述べた。
グローバル展開については、Symbian Foundation、LiMo Foundation、グーグルが中心となっているAndroid、Windows Mobileなど複数のオープンなプラットフォームが発表されている中で、オペレーターズパックを用意すると語った。各プラットフォームの上に、iモードやおサイフケータイといったドコモ仕様にできる機能を用意し、開発メーカーが国内外に端末を提供しやすい状況を作るとした。2009年後半にはこうした端末が登場すると語った。
さらに辻村氏は、今後の携帯電話について語り、「iPhoneのようなタッチパネル方式が入ってくるだろう。海外のようにBluetoothを介したハンズフリー通話なども増えてくるのではないか」と述べた。
■ 富士通やソニー・エリクソンの考え
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富士通の佐相氏
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ソニー・エリクソンの竹内氏
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富士通のモバイルフォン事業本部 経営執行役 モバイルフォン事業本部長の佐相秀幸氏は、同社の携帯電話開発の取り組みを説明。営業部門、事業部門、製造部門を切り分けて展開しており、「ここ数年、富士通のケータイが変わってきたなと少しだけ自負している」と語った。また、開発手法として、「TPS、いわゆるトヨタ生産システムを導入している」と述べ、効率的な開発・生産体制を整えているとした。
Symbian Foundationについては、「携帯電話の技術は日進月歩で、下回りの基盤を自社だけでやるのはもはや耐えられない。そうした中でSymbian Foundationが時代の流れだ。パソコンと同様に発展するのではないか」と語った。同氏は富士通の過去のパソコンを紹介しながら、携帯電話も同じようにオープン化に向かうとした。
また、ソニー・エリクソンのオープン部門 ソフトウェアプラットフォーム部統括部長である竹内正樹氏は、スウェーデンの本社と共同でオープンプラットフォームを手がけているとし、オープンなソフトが今後非常に重要な役割を担うと述べた。日本の拠点とスウェーデンの本社が共同開発を行う理由として、日本が高い技術力を持った重要な市場であると語った。
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富士通の講演では、なぜかシンビアン久氏の似顔絵が披露された
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■ シャープ新井氏、携帯ユーザーは二極化
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新井氏
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シャープの通信システム事業本部 副本部長で、パーソナル通信第一事業部長である新井優司氏は、「携帯電話の進化と今後の展望」と題して講演を行った。
新井氏は、国内の携帯電話市場が成熟し、ユーザーの二極化が進んでいると話した。割賦販売やMNP、成熟期入るといった要因により、ユーザーの意識が変化し、「長く使うなら良い物」と考えるユーザーと、「必要な機能がついていれば値段が安い方がいい」と考えるユーザーに分断されているとした。
また、携帯電話のこれまでのトレンドを紹介し、カラー液晶の搭載やiモードの登場、カメラ付き携帯電話や写メール、カメラの高画素化、W-CDMAの拡大、ワンセグ対応など2007年までの流れを説明した。
「iPhoneは無視できない存在」と語った新井氏は、iPhoneがひょっとしたら大きな携帯電話のトレンドになるかもしれないと話す。iPhoneによってUIを見直されることになると予測した。
シャープでは、ユーザーと端末の設定となる部分を全てUIと称しているという。数字ボタンなどのキーやカメラ、タッチパネルといった入力系のUIのほか、スピーカーやバイブ、イルミネーションといった出力系のUI、端末の形状などもUIだと説明した。新井氏は、「デバイスの進化を交えながら、UIは進化し高度がを続けていく。その中で、ユーザーが高度な機能をいかに簡単に使いこなせるようにするかがシャープの使命だ」と語った。
こうした新たなUIの提案として、発売されているシャープ製端末が紹介された。SH906iでは、携帯電話の縦画面の文化と、映像などのヨコ画面の文化を融合しようという提案だと語った。このほか、光TOUCH CRUISERの搭載やモーションコントロールセンサーの採用なども語られた。
■ URL
Symbian Summit Tokyo 2008
http://www.symbian.bz/summit2008/home/
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(津田 啓夢)
2008/07/17 21:41
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