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【CommunicAsia 2008】
サムスンの日本戦略を聞く

OMNIA
 CommunicAsia 2008では、端末メーカーとしてはサムスン電子が最大のブースを出展している。ブースに訪問した報道関係者に対しても積極的に対応するなど、日本向けのPRにも力を入れている。シェアを急成長させているサムスン電子にとって、日本市場とはどのような位置付けにあるのか。サムスン電子の日本輸出Group 無線事業部 情報通信総括 部長のOh ChangMin氏にインタビューをする機会を得た。

――せっかくですので、サムスンの展示ブースを回りながら、現在のラインナップなどをご紹介ください。

 まずこちらが発表になったばかりの「OMNIA」です。続いてこちらが2月のWorld Mobile Congressのときに発表した「Soul」です。特徴としては、本来カーソルキーがある部分がタッチパネルディスプレイになっていて、カーソルキーだけでなく表示が切り替わっていきます。弊社では“マジックタッチ”と言います。この機種はかなりの台数が売れているヒット商品となっています。

 その隣が昨日発表となったストレート型の「Soul b」です。SoulのDesignを生かした高級感のあるバータイプ端末となっています。スライドと折りたたみだけではなく、ストレートタイプでもいい結果を出したいと思います。


Soul
Soul b

902SC(左)とG810(右)
 そしてこちらのスライド端末が5メガピクセルカメラを搭載するG810です。似たハードウェアの前モデルG800がソフトバンクの920SCのベースモデルになっています。

――全然デザインが異なりますね。

 日本のニーズに合わせてデザインも変更しています。


E250の後継モデルとなるE251

サムスンはマーケットを6つのセグメントに分類
――世界市場でいちばん売れている端末とはどのあたりなのでしょうか。

 E250というモデルです。発表して以来累計3000万台以上出荷しました。

――サムスンのラインナップというのは、海外の市場ではどういった位置にあるのでしょうか。

 スタイル系、と認知されています。スタイリッシュな端末を中心に売れていましたが、最近はマルチメディア系、サムスンが「Infotainment」と位置付けている端末など、全カテゴリからヒットモデルを出しています。

 販売台数は増え続けていて、昨年は世界で1億6200万台を出荷し、シェアは2位となりました。今年は2億台を達したいと思ってます。また、サムスンは売上額を端末台数で割る、いわゆる端末の平均単価も海外市場ではトップレベルを維持しています。


――サムスン電子が日本市場に参入した経緯などについてお聞かせください。

 携帯電話に限らないでいうと、サムスンは1953年に日本オフィスを設立しました。日本には家電分野では世界でトップクラスのメーカーがたくさんあります。たとえばテレビ分野では、サムスンは欧米で高いシェアを持っていますが、トップメーカーがひしめく日本への参入は難しい判断でした。本気で取り組めばそこそこのシェアを取る自信はありましたが、そこまで開発リソースを割くメリットがあるかどうか、という問題があります。

 しかし、ソフトバンクがボーダフォンだった時代、ボーダフォングループに「日本市場にも端末を供給してくれ」と誘われ、彼らの日本市場への熱意に押されてサムスンは日本市場に参入しました。

 実は最初、日本市場には804SS(サムスン初の日本向け端末)ではなく、もっと違う端末を企画していました。厚みはあるけど幅や長さは非常にコンパクトで、世界初のHSDPAに対応した端末です。日本にはない新しい価値を提供できる、ということで開発を進めました。しかし開発を進めながら日本市場をリサーチしたところ、画面が大きくてボディが美しい端末が好まれるという傾向を知りました。開発中だった端末は、機能面は良くても、そのままでは日本の消費者の目にはとまらない、ということで、2005年9月に方針を転換し、2006年3月に804SSを発売しました。実に6カ月で作ったことになりますね。これが当時としては薄型な14.9mmの端末でした。

 当時の日本ではサムスンの知名度はあまりありませんでしたが、この端末は2色あわせて約13万台が売れました。これは良くやった、と考えています。日本には優れたメーカーがたくさんいますが、海外メーカーでもがんばれば、良い物を作れば消費者は興味を持ってくれる、と確信しました。まだフラッグシップとは言えませんが、次はフラッグシップと言えるようなものを提供したいと考えています。


――サムスンは世界市場でいろいろな方向性の端末を出されているな、と感じました。現在の日本市場にない端末を導入する予定はありますか。

 サムスンでは、日本のメーカー同様に、最初から日本のニーズに合わせて端末を企画する、ということもやっています。一方で、海外で売れた実績のある端末を日本で売るというのも悪くはないと思います。しかし、たとえば先ほどの「Soul」は、海外ではヒットしていても、日本ではディスプレイが小さいよね、という評価を受けてしまいます。それでも良い、という人もいますが、やはり日本向けのアレンジは必須です。パケット定額やプッシュメールなど、ベースとなるニーズは100%満たす必要があります。海外モデルをそのまま出す、というのはあり得ないと考えています。

――日本向けのアレンジで苦労されている点はどのあたりでしょうか。

 いくつかあります。まずはボディや機構ですね。カラーなどについては、日本の美意識は世界とは異なった方向で非常に高いです。たとえば日本ではLEDイルミネーションを装飾的に使うのが一般的ですが、世界で見ると、こうしたイルミネーションは日本だけの特徴です。

 あとはユーザーインターフェイス(UI)です。キー配置をあわせる、というのは実はハードウェアメーカーにとっては簡単なことです。それよりも、細かいユーザビリティの面が苦労しています。いまになってみれば納得するのですが、最初、日本のユーザー調査をしたとき、文字入力中に頻繁に使うキーがカーソルキーよりも上にあるだけで、「キーが遠い」という意見をもらって驚きました。あとはキーストロークやキーの堅さ、レスポンス、かな漢字変換など、そのあたりのソリューション確保なども苦労しました。

 ケータイはただの電子機器ではありません。文化とも言えます。その文化を理解しないと良いものは作れません。サムスンは欧米の携帯電話文化も分析をして、主にハイエンド端末ですが、アメリカと欧州を中心にトップレベルになっています。日本においても日本向けの端末を作り、サムスンがどういう会社であるかをユーザーに定義してもらえるようになりたいと考えています。


――日本の市場というのは、そういった苦労を乗り越えて参入する価値のある市場なのでしょうか?

 毎年5000万台という日本の携帯電話市場は、単一の市場と見れば大きいものです。しかし、通信方式が事業者様毎に違ったり、特有のサービスも全然違うので、1つのメーカーがフォローできる市場は限られてきます。数の問題もありますが、端末開発に必要なリソースの問題もあります。日本市場向けの端末開発は、欧州向けに比べてだいたい3倍以上のリソースが必要だと考えています。

 しかし、そのような日本市場になぜサムスンを含めた海外メーカーが参入するのでしょうか。それぞれのメーカーの思惑があると思いますが、サムスンにとっては、世界中でも日本の市場だけにあるユーザーのニーズ、デバイス、ソリューションのレベルなどが、見方によっては非常に魅力的に映ります。日本は挑戦したい、と思わせる市場です。

 たとえば821SCでは日本の企業に蒸着塗装をお願いしました。これまで、こうしたハードウェア関係を日本にお願いするとは考えたこともありませんでしたが、こうしたチャレンジが資産になります。こうしたソリューションを日本から学び、その先進性を海外に持ち込めるのは大きなメリットです。

 ワンセグもそうです。ブラジルがワンセグと同じISDB-T方式を採用しましたが、いまのところワンセグ端末を南米で展開できるのはサムスンだけです。

――日本でソフトバンク以外のキャリアに端末を供給される可能性は?

 たとえばLiMo関連でドコモとはグローバルでは連携していたりします。auにもRev.Aのネットワークなどで関係があります。

 しかしサムスンは、ボーダフォンにより日本市場に参入できました。ソフトバンクに変わったあと、サムスンの日本事業がどうなるのかと心配もありましたが、がんばって続けることができました。ここまでやってこられたのは、ソフトバンクのおかげでもあります。

 サムスンにとってソフトバンクはお客さんではなくパートナーというイメージです。大切なパートナーとの義理があるので、ソフトバンクを優先しています。

 また別の観点では、ほかのメーカーとの関わりもあります。サムスンにとって、ほかの端末ベンダーはデバイスを買っていただけるお客さんでもあります。これもサムスンにとって大きなビジネスです。そうしたお客さんのビジネス領域を侵害したくない、という考え方もあります。

 しかし一方で、日本参入によって良い関係も築けたと思います。たとえばソフトバンク向けに薄型端末を作ったことで、日本の他のメーカも薄型をやるなど、市場に良い影響を与えることができました。こうした関係が維持できれば、とも思っています。


――海外では比較的単価の高い端末が多いようですが、日本でもその路線で展開されるのでしょうか。

 フルスペックモデルだけではありません。プリペイド端末のようなものもやります。サムスンの定義する6つのセグメントに端末を提供する、というのがいまのサムスンのテーマです。安くデザイン端末を作れることも見ていただきたいところです。

 ハイエンドはサムスンがいちばん得意とする分野です。一方、ローエンドも作るのは難しくありません。ただ、日本ではその中間は難しいところですね。なかなかたくさん買ってもらえる端末が作れません。

――国内では、ここのところ御社の端末が登場していませんが、次はいつ頃に出るのでしょうか。

 そこは事業者さん次第なので、なんとも言えません。秋冬以降に楽しみにしていてください。

――本日はお忙しいところありがとうございました。



URL
  サムスン電子
  http://www.samsung.com/jp/
  CommunicAsia 2008
  http://www.communicasia.com/

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(白根 雅彦)
2008/06/19 20:08

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