|
|
|
【CEATEC JAPAN 2006】
KDDI伊藤氏、ネットワークの進化とそのあり方を語る
|
|
|
|
|
4日に行なわれた基調講演には、KDDI代表取締役副社長の伊藤泰彦氏が「ネットワークと一体化する個人」と題した講演を行なった。同氏は、今後のネットワークインフラの姿を説明することで、KDDI、および日本のITインフラが目指す形を示した。
■ ネットワークとユーザーはどう変化しているか
|
KDDI伊藤氏
|
|
伊藤氏は「今起こっていることは?」という話題から講演をスタート
|
まず伊藤氏は、「今、何が起こっているか。皆さん同じだろうが、分からないことがあれば、すぐGoogleで調べる時代だ。先日、米国を訪れたが、現地の学生は“メールはもう古い”と言う。彼らは、SNSとGoogleを使いながら、ストリーミングビデオも楽しみ、そこで勉強をしている。かつては“1つのことに集中しろ”と言われてきたが、この風景には衝撃を感じていた。その後、帰国して娘の部屋を覗いてみたら、娘もまったく同じことをやっていた。ネットワークが進化したことで、個人の情報発信も活発になり、最近ではインターネット経由で映像を楽しむのも普及しつつある。そこで、今回の講演では個人とネットワークの一体化と題すことにした」と述べた。
同氏は、「KDDIでは、CDMA2000 1xEV-DO Rev.Aを導入にさらにブロードバンド化を図るが、ネット接続というだけであれば、国内の携帯電話約9,000万台のうち、8,000万台以上がネットにアクセスできる。固定網の動向を見ると、2005年3月にFTTHがDSL純増数を一瞬抜き、それ以降、FTTHが優勢になってきている。そこで流れているデータは、P2Pのトラフィックがかなり多い。KDDIのトラフィックデータを見ると、全体の8割がWinnyに代表されるファイル転送、1割がWebブラウジング、残り1割がストリーミングビデオ」と指摘した。最近では、“ネットワークただ乗り論”が話題を呼んでいるが、同氏は「今回はそこには触れないでおく」と述べるに留まった。
伊藤氏は、「そのストリーミングビデオ、最近はYouTubeだが、米国ではNBC自らがYouTubeに対して番組を提供すると発表した。日本の動向については今回は触れないが、そういう状況になっているということだ。携帯電話でもストリーミングビデオは結構深刻だ。ただ、映像が流れているというのは、面白いことなので今はそのままだが、いずれどうすべきか、考える必要があるかもしれない」と、慎重な姿勢を見せた。
「電車男のムーブメントが面白いと思ったが、それももう古い。最近はWeb2.0と言われるが、代表的なのはブログとSNS。ブログの市場規模はまださほど大きくなく、日本のネット広告の市場規模は、今年で約2,800億円程度と言われているが、米国ではネットとテレビの広告規模は、1.5兆円ずつと同レベル。ブログ市場も変化が見込めるのではないか。お金のやり取りも、今はエンドユーザーは消費者で、サービス提供事業者にお金を払う形だが、逆にエンドユーザーが情報発信することで対価をもらうことになる。その一例がアフィリエイト。お金の動きも両方向になってきている」と語った。
伊藤氏は「そういった動きに対しては、携帯電話がパーソナルゲートウェイになる。KDDIはRev.Aを導入予定で、固定・移動体どちらもWeb2.0に備えつつある。ちなみにWiMAXもやっているが、これはビット単価が1/10程度にできるのではないかと見ている」とも述べた。
|
|
KDDIのトラフィックを見ると、P2Pが占める割合は高い
|
PC・携帯ともにストリーミングビデオのトラフィックが伸びているという
|
■ ビジネスも“2.0”に
|
フリードマン氏の「The World is Flat」を引用
|
ここまでコンシューマレベルの動向について紹介してきた伊藤氏だが、ビジネスもまた新たな段階に入っていると指摘。同氏は、米国のコラムニストであるトーマス・フリードマン氏の著作を引用しながら、「ITの発展で、インドや中国など労働力の安価な国にコールセンターを設置しても業務は進められる。アウトソーシング、分業という流れがある一方、コストダウンを追求するため、広告の企画立案から制作まで1人で行なえるようになった話もある。これは垂直なモデルだ。通信業界は垂直統合と言われてきたが、一部分を分業にした“垂平(垂直水平)モデル”が可能ではないか。これは、今後に向けた大きなヒントだと思っている」と語った。
そこで垂平モデルを展開する上で重要になってくるのは何か、伊藤氏は「そのために我々はプラットフォームを作っている。プラットフォームという言葉は今後の重要なキーワードになる。ボイスを全てIP化し、MMD(MultiMedia Domain)などを載せて、さまざまな人が市場へ参加できる形にする。これは別の視点で表現すると、各種サービスがプラグイン、CDMAやWiMAXなどアクセス手段もプラグインと呼べる」とした。
これらの一環というGoogleとの提携については「当初は公式サイトへのアクセスが減るかと心配したが、実際にスタートしてみたら、公式サイトへのアクセスも増え、全体としては倍程度のアクセスになっている」と述べ、EZwebというプラットフォームにGoogleというプラグインを入れた結果、うまく働いた例との見解が示された。
|
|
ビジネスも新たなステージに入ったと分析
|
サービスや通信方式は、プラットフォームに対するプラグイン
|
■ 携帯で個人認証を
|
携帯電話を個人認証のツールにすべきと提言
|
|
テレビ・ラジオとケータイの融合が大きなビジネスになる
|
プラットフォームの重要性を繰り返し説明する伊藤氏は、「安心なビジネスができる場を提供して、IDの交換・個人認証かできる。そういうプラットフォームのビジネスが重要になる。これからは、テレビやラジオと携帯電話が連携していくことが大きなビジネスになると思うが、ここでは個人認証、個人の特定が鍵となる」と述べた。
同氏は「パソコンの世界は、OSもプロセッサも完全に米国にやられた。では日本はどこで生きていくのか。携帯電話は意外と日本の得意分野であり、結構戦えるのではないだろうか。端末を海外で売る、というのも1つの手段だが、コンセプトを構築するという形もある。その例が携帯電話を個人認証全てに使うということ。携帯電話が他人に使われるシーンはない。もちろん紛失した場合などへの備えは必要だが、家庭内のHDDレコーダーや冷蔵庫と携帯電話を連携させることができるのではないか」と語り、携帯電話の新たな役割を提言した。
続けて「世の中にさまざまなサービスがあるが、IDとパスワードを毎回打ち込んでいるとイヤになる。これは忘れがちなもので、私の場合、ネットバンキングなど、アクセスできなくなったために使わなくなったサービスもある。おまけに数カ月ごとにパスワードを変えろと言われるが、これはどんどん忘れてしまう。ある調査では9割のユーザーが同じIDとパスワードを複数のサービスに利用しているという。だが、個人認証の役割を携帯電話に持たせれば解決できる。家電との連携、ホームセキュリティなど、日本発のアイデアとして、携帯電話を中心にするのは自然なことではないか」と述べた。
伊藤氏は、「優れたプラットフォームを作ることさえできれば、携帯電話の個人認証、個人への紐付けは1つの例にすぎない」と語り、講演を終えた。
|
|
サービスごとに異なるID・パスワードを持つのは利便性に欠けると指摘
|
ID連携の必要性を訴えた
|
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
CEATEC JAPAN 2006
http://www.ceatec.com/
■ 関連記事
・ 携帯業界の今後を占うイベント、幕張で開幕
(関口 聖)
2006/10/04 20:01
|
ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|
|
|
|
|