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【WIRELESS JAPAN 2006】
クアルコム、MediaFLOをデモンストレーション

クアルコムブース
 クアルコムのブースでは、MediaFLOの実験放送や、標準化を進める無線ブロードバンド規格「IEEE802.20」、デュアルCPUを採用した新ベースバンドチップなどが披露された。

 MediaFLOは、同社が推進する携帯電話向けの放送サービスを実現する技術。先行する米国では、利用する周波数帯が決定し、2006年内にシステムが完成する予定となっている。国内では、周波数帯が決定されていないものの、KDDIとクアルコム、そしてソフトバンクがMediaFLOに向けた企画会社を設立している。

 ブースでは、エンコードしたコンテンツを元に実験的に放送波を発信し、MediaFLOのデモンストレーションを行なっていた。試作機に触ることも可能で、実験局では、8チャンネルの番組を15fpsで送信している。技術的には、30fpsの高品質が映像も配信可能という。なお実験局は、ブースの裏に設置された無線LANのアクセスポイントのような小さなアンテナだった。

 周波数効率の良さや、第2世代のチップ以降は対応する周波数帯が拡がった点など、導入する側に大きな特徴があるMediaFLOだが、ワンセグとどう違うのかという点も気になるところだ。本サービスのワンセグと実験段階のMediaFLOという違いはあるが、体験してみて最も感じる違いは、チャンネル変更の速度だ。ワンセグの場合、チャンネルを変更する都度5秒程度待たされるがMediaFLOでは、1秒強でチャンネルが切り替わる。番組をザッピングする際に大きな違いとなって現われそうだ。

 なお米国では、ベライゾンが商用サービスを展開するとアナウンスしており、6月には米国版MediaFLOの拠点となる放送局「Network Operations Center(NOC)」が公開された。周波数帯が決定されていない日本の状況では、まだまだ導入はこれからという印象だが、総務省の検討会でも引き続き審議されているとのこと。クアルコムでは今後も積極的に推進していく方針だ。


京セラブースでも展示していた試作機 各メーカーのMediaFLO試作機が用意されていた

デモの概要 実験用のMediaFLO基地局。画面右の傘でサイズがわかるだろう

クアルコム、802.20規格をアピール

 また、次世代無線ブロードバンド技術として、現在標準化が進められている「IEEE802.20」規格についても紹介していた。

 米クアルコムは、フラリオンテクノロジーズを買収し、クアルコムが「Pre802.20」と位置づける高速無線技術「Flash-OFDM」を獲得。802.20の標準化を進めている。その特徴は、1.25~5MHz幅の狭い帯域を利用して高速な無線ブロードバンド環境を構築できる点にある。現在独通信事業者のドイツテレコム(T-Mobile)が商用サービスを展開しているという。

 日本では、2.5GHz帯で無線ブロードバンドの導入が検討されており、その候補の1つがクアルコムの802.20となる。現在、東北大学と共同で実験を進めており、導入されれば、新幹線など高速移動する車内で無線LANが利用できるようになるという。

 説明員は、狭い帯域幅で導入可能で周波数の利用効率が高いという特徴を挙げ、「同時に何人も使っても、スループットが落ちていかない」と話していた。これは、電波の効率を高める上で、電波環境の良いユーザーを優先する仕組みを導入しているため。電波環境が悪く、10kbps程度しか出ない相手に数Mbpsを割り振るよりも、電波環境の良いユーザーに対してさらに高速なスループットを用意する方がモバイルでは効率が良いのだという。フラリオンの買収により、こうしたノウハウも獲得したと語っていた。

 このほか、モバイルWiMAXについても説明していた。それによると、クアルコムの技術検証の結果、モバイルWiMAXでは1つの基地局がカバーするエリア(セル)の端の方で著しくスループットが悪くなり、数kbps程度となってしまう場合があるという。PHSのように基地局間を狭くしても電波干渉が発生してしまう。説明員は、モバイルWiMAXとクアルコムの802.20について、「異なる性格のものになるのではないか」と語っていた。

 なお、802.20の作業部会では、審議は現在中断しているという。説明員は、その理由を「クアルコムが独占的に標準化を進めているという訴えがあったため」と説明。「標準化が終了したWiMAX側のメンバーが802.20委員会に増えた」ことも影響しているという。2006年内の標準化を目指す802.20だが、現在の状況では年内の成立は難しい見通しだ。


Flash-OFDM対応製品 ドイツでは商用化している

デュアルCPU搭載の「MSM7500」をデモ

 このほか、クアルコム初のデュアルCPUを搭載したベースバンドチップ「MSM7500」のデモンストレーションも行なわれていた。

 このチップは2005年に発表され、その後バージョンアップを重ねてきたもので、ARM11とARM926の2つのコアが搭載されている。ATIのグラフィックプロセッサ「IMAGEON」を装備し、3Dの描画性能が向上。携帯電話でより滑らかなグラフィックが得られるようになるという。ブースでは、リファレンスボードに設置されたMSM7500による、3D映像が確認できた。

 なお、現在サンプル出荷の段階とのことで、量産はこれから。MSM7500を搭載した携帯電話が登場するのは2007年以降になるという。


リファレンスボード MSM7500

3D映像 3Dの野球映像。バットの振りが滑らかな印象

KDDIが開発に着手する携帯電話端末の統合プラットフォームではMSM7500が採用される


URL
  クアルコム
  http://www.qualcomm.co.jp/

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(津田 啓夢)
2006/07/20 12:12

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