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モデレータを勤めた東京放送(TBS) 技師長室 参与 清水孝雄氏
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千葉・幕張メッセにおいて開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2005」において、2006年4月1日から開始される移動体向け地上デジタル放送「ワンセグ」についてのパネルディスカッションが行なわれた。
まず、モデレーターとなる東京放送(TBS) 技師長室 参与の清水孝雄氏がワンセグの概要について説明。パネリストは、放送業界の代表としてTBS メディア推進局 1セグ放送開発部長の湯川哲生氏、通信キャリアの代表として、KDDI 技術開発本部 メディア技術開発部長の中村博行氏、コンテンツ業界の代表として、インデックス メディア・ソリューション局の大森洋三氏、メーカーの代表として、ソニー 技術開発本部 MT開発部 担当部長の小野正道氏、車載機メーカーの代表としてパイオニア モーバイルエンタテイメントカンパニー 川越事業所技術統括部 技術開発部デバイス開発一課・課長の市川俊人氏の5名。それぞれのプレゼンテーションを披露した後、パネルディスカッションが行なわれた。
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パネリストの面々
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■ 「動画の下のテキスト情報がワンセグの重要な点」
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東京放送(TBS) メディア推進局 1セグ放送開発部長の湯川哲生氏
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放送業界の代表としてプレゼンテーションを行なったTBS湯川氏は、「(動画の下に)240×480ドットの文字情報の表示領域があることこそがワンセグにおいて一番大事なこと」とし、「現状でワンセグはデジタルテレビと同じ放送が流れることが決まっているのでニュースの項目や速報のようなものをテキストで出していき、インターネット上にあるモバイルコンテンツへの誘導に結びつけたい」とまず抱負を語った。
ワンセグの利点について湯川氏は「見る場所を選ばない」「データ放送の機能によりインタラクティブなコンテンツが作れる」「テレビ+データ放送の形で視聴者に届けられること」の3点を挙げた。特に期待しているのは3点目だとし、「普通のデジタルテレビだとデータ放送はユーザーがボタンを押さないと見られないが、ワンセグははじめからデータ放送の部分が表示されるので、よりアクティブにデータ放送が視聴されるようになるだろう」と予測した。
こうした利点を踏まえ、湯川氏は、2004年に起こった新潟県中越地震の際、携帯電話で情報を得たり、家族に連絡しようとしても輻輳により通信、通話できなかったことに触れ、「あのとき、ワンセグのようなものがあれば、より詳しい情報をデータ放送で得ることができただろう」とした。
テレビ番組自体がワンセグによりどう変わっていくのかについて、湯川氏は「(視聴者の投票結果をリアルタイムで放送する)テレゴングや応援メッセージ、視聴者参加型のゲームなどがより簡単にできるようになる。これまでも電話でこうしたことが可能だったが、ユーザーにとってはわざわざアクセスする手間がかかっていた」と語ったほか、「番組自体は枠の制限があるが、データ放送の部分は自由。ローカル情報をきめ細かく提供することもできるようになるだろう」と語った。
さらにテレビ局側の見方として「固定テレビの番組視聴を喚起する使い方を考えている。ワンセグを見る時間は通勤通学や昼休みの時間帯だが、この時間帯に夜、帰宅してからゴールデンタイムの放送を観てもらうためのコンテンツを用意すると面白い。オンエア情報を携帯電話のスケジューラーに登録できたりすると、便利になるだろう」と述べた。
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ワンセグの視聴時間帯は通勤通学や昼休み時間に集中するという
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アクセスの面倒さから解放されるのもワンセグの利点という
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■ KDDI中村氏「アナログテレビ、FMラジオで経験を積んだ。準備はできた」
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KDDI 技術開発本部 メディア技術開発部長の中村博行氏
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KDDI中村氏は、冒頭、携帯電話加入者やARPUについてのデータを紹介。これらのデータから読み取れる重要なポイントとして「携帯電話業界は飽和しつつある」「ARPUに占めるデータの割合が高く、業界自体が飽和していても、その実情が変わってきている」「インターネット接続機能を持った携帯電話の普及率は日本は世界で一番である」の3点を挙げ、これらの状況を説明し、ワンセグ受信端末の開発の経緯を語った。
同社は、「2003年5月までが開発過程におけるフェイズ1」と位置づけ、無線LANやDDIポケット(現ウィルコム)のカード型端末を差したPDA型の端末を開発。この端末は2003年5月にNHK放送技術研究所で公開されることになるが、「2003年1月まではパソコンの中のエミュレータで表現していた」という。「いよいよ公開1週間前、KDDIの役員を前に、当時のNHK大河ドラマのワンシーンを視聴するデモを行なったが、不調で止まってしまい、なかなかセリフが出てこなかった」といった開発エピソードが披露された。
2004年5月に向け、フェイズ2が立ち上がるが、「2003年10月にMPEG-4で作ることを決めたが、12月にワンセグ放送の標準フォーマットがH.264になるという情報が入ってきた。路線変更できず、結局MPEG-4のまま公開することになった。そのときは参ったな、と思ったが、その端末が今、各地で展示されたりしているので決してムダにはならなかった」と語った。
そしていよいよ今回のCEATECで商用モデルの参考展示までこぎ着けたわけだが、中村氏は「コンテンツ作りではテレビ局にかなわない。放送事業者といっしょにコンテンツを作った経験がこれからワンセグが始まる中、いい経験になった」と振り返った。
最後に、ワンセグのサービスインに向けた意気込みについて中村氏は「FMケータイで放送連携モデルのさきがけをやっている。番組視聴のポータルになったり、集金代行を行なったり、とても良い関係を築けている。同じ考え方でテレビとも融合していきたい」とコメント。さらに「アナログテレビで経験を積んでいる。準備はできた」と自信を見せた。
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2003年5月の段階では、まだ電話機の形をしていなかったワンセグ端末
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「放送業界との密接な関係を保つことが重要」と中村氏
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■ インデックス大森氏「ワンセグによりコンテンツも盛り上がる」
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インデックス メディア・ソリューション局の大森洋三氏
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インデックス大森氏はワンセグについて「通常だとコンテンツまでたどり着くまでに、公式メニュー、カテゴリ、サイト、個々のコンテンツと多くのステップがある。かなり強いモチベーションがないと、なかなかユーザーにコンテンツまでたどり着いてもらえないが、放送を見てアクセスするユーザーには大きなモチベーションがあり、また手順も少ないのでインターネット側のコンテンツもさらに盛り上がることが期待できる」と予測。
しかし、その際のコンテンツの作り方は、放送コンテンツに頼ったものではダメだという。「魅力的な番組であればあるほど、ただそれをケータイコンテンツに置き換えても、番組で関心を持ってサイトに来た視聴者ががっかりするだけ。このタイプの無料サイトを、ワンセグにしたからといって有料サイトにすることは難しい。やはり、最後にコンテンツをダウンロードさせなければならない。“Fromテレビ Toコンテンツ”という発想が必要になる」と解説した。
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放送とただ連動しているだけでなく、コンテンツ自体に魅力が必要だという
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待受画面をうまく利用したプッシュ型の情報で視聴につなげる仕組みを紹介
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■ ソニー小野氏、ワンセグ受信モジュールをアピール
ソニー小野氏は、ITS世界会議で行われたデモの映像や、ソニーが開発したAVCエンコーダの試作機を利用して作成した動画を再生。1時間100MBの高圧縮率やその画質をアピール。ワンセグの実力をプレゼンテーションで示した。また、9月末に発表したワンセグ受信モジュール「SMT-VK1000」について触れ、その軽さ、小ささや省電力性についてアピールした。最後にワンセグのこれからの技術的課題として、感度や安定性の確保、モバイル機器での使い勝手、固定系との連携をどうするか、といった点を挙げた。
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昨年名古屋で開催されたITS世界会議でのデモの様子
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安定性や、携帯電話以外へのワンセグの応用が今後の課題だという
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■ パイオニア市川氏「車載機はHDとワンセグの両対応へ」
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パイオニア モーバイルエンタテイメントカンパニー 川越事業所技術統括部 技術開発部デバイス開発一課・課長の市川俊人氏
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パイオニア市川氏は、カーナビゲーションなど車載機へのデジタル放送の導入について、「消費者はハイビジョンテレビを車で見たいと思っている。一方で携帯向けのワンセグも受信したいというニーズが強く、この両方を満たすには車載専用の技術が必要になる」とコメント。これらのニーズを満たすために必要な技術として、「ダイバーシティ」「エラーコンシールメント(エラー訂正)」「HDとH.264の切り替え」などを挙げ、それぞれに技術的解説を付け加えた。
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固定向けデジタル放送とワンセグの双方に対応することが重要だという
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画像のかけた部分を、周りの画素や少し前の時間の画素を使って訂正する技術
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■ 早くも「録画・タイムシフト」について語られる
以上のプレゼンテーションが予定よりも大幅に長びいたため、時間が短くなってしまったパネルディスカッションだったが、来場者へのアンケートを元にした意見交換が行なわれた。ワンセグで見たいコンテンツとして報道やスポーツなどリアルタイム性の高いコンテンツが人気だった結果について、ソニーの小野氏は「テレビ向けと同じ番組が放送されるワンセグでは、端末に記憶媒体を積み込んで、録画したものを観る、タイムシフト的な要素が必要とされるだろう」と示唆。そうした技術的可能性についても「動画のファイルサイズは1時間でおよそ100MBなので可能だろう」とコメント。TBSの湯川氏もタイムシフトについて「番組がメモリカードに保存されて他の人に回す、といったことが起きては困るが個人利用の範囲内でできるよう、キャリアさんと話し合いたい」とした。
また、会場アンケートでは、「30,000円までなら端末を買う」とした人が多かったことについて、KDDIの中村氏が「確かにワンセグ端末はコストがかかるので心配な点だが、30,000円まで許容されるなら、かなり市場性があると感じた」と感想を述べるなど、さまざまな意見が交われた。
■ URL
CEATEC JAPAN 2005
http://www.ceatec.com/
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(伊藤 大地)
2005/10/06 21:31
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