ACCESSが提供する組込機器向けブラウザ「NetFront」は、国内ではiモード端末などに搭載され、海外でも多くの採用事例を持つ。現在、携帯電話向け製品は「NetFront Wireless Profile」という名称で提供されており、最新バージョンは、RSSリーダー機能やポップアップブロック機能をサポートした「v3.3」だ。
BREWに対して、ACCESSは今後どのように展開していくのか。同社執行役員でマーケティング本部長を務める大石清恭氏に話を聞いた。
■ ACCESSの展開するBREW製品
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ACCESS
大石清恭氏
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――ACCESSが現在手掛けているBREW対応製品はどのようなものがあるのでしょうか。
大石氏
まずメールソフトとSMILプレーヤーですね。どちらもau端末に標準搭載されてきましたので、先日、KDDIさんが導入された「KDDI Common Platform(KCP)」に採用されています。また、BREW版の「NetFront」は昨年6月に発表済ですが、今回新たにサムスン製で欧州のT-Mobile向け端末「SGH-Z130」に搭載されることになりました。
「SGH-Z130」はW-CDMA/GSM対応端末で、そもそもサムスンさんと当社は包括契約を締結しています。プラットフォームありきというよりも、市場ニーズを踏まえて検討していただいた結果、当社の「NetFront」が選ばれたと考えています。これまで、さまざまなプラットフォームに対応すべく、必死になって開発を行なってきたことが実を結んだと言えるでしょうか。
――ACCESSにとって、クアルコム、あるいはBREWというプラットフォームはどんな魅力があるのでしょう。
大石氏
クアルコムさんは、チップセットも手掛けています。携帯電話というものを理解した企業のプラットフォームとして信頼性が高いのではないでしょうか。またBREWというレイヤーで、各機種の差違などを吸収できますので、ソフトウェア開発の面でコストダウンが期待できるところです。
■ 「NetFront」BREW版、日本市場に登場する可能性
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BREW版NetFrontが搭載されたサムスン製「SGH-Z130」。回線契約していないため、Webページは表示できない状態だった
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――今回、サムスン製端末に採用されることになった「NetFront」BREW版ですが、日本市場への展開についてはどのような考えなのでしょうか。また、BREWアプリとしてダウンロード配信する、あるいはKCPでの採用とでは、どちらが望ましいのでしょうか。
大石氏
日本市場については、キャリアさんの考えもありますが、もちろん検討しています。「NetFront」は、ボーダフォンの702NK向けや欧州で展開しているPocket PC版などをはじめとして、高い評価をいただいている製品です。単体ブラウザとして、エンドユーザーから見れば「ブラウザを取り替えたい」というニーズもあるのではないでしょうか。
ダウンロード版かどうか、という点では、どちらでも構わないですね。キャリアさん次第ですが、取り組みたいところです。これまでの流れでは、auさんに「NetFront」が採用されるかどうか、難しい面もありましたが、市場の要望や時代の流れというものもあります。いろんな局面から現状が変わっていくのではないか、と期待しています。
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実際にWebページを表示した場合のイメージ
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ACCESSのブースでもNetFrontをデモ
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■ NetFrontは他社に負けない
――他社製品と比べたとき、NetFrontの優位性はどこにあるのでしょうか。
大石氏
フルブラウザと一言で表現しても、既に、携帯向けにはさまざまな製品があります。HTMLをサポートする、あるいは携帯電話の画面用にWebページのレイアウトを変更する技術を搭載すれば良いのかと言えば、それだけではないでしょう。我々としては、エンドユーザーから見て、包括的な機能を備えた製品こそフルブラウザではないかと思います。
携帯電話用のフルブラウザを見た場合、携帯サイトに特化したWAPブラウザからスタートしたものやパソコン向けブラウザからスタートしたものがあります。WAPブラウザ起源のものは、HTMLなどはサポートしているものの、Dynamic HTMLなどの対応は困難さがあるでしょう。一方、パソコン向けブラウザが起源の場合、豊富な機能を備えていますが、実行ファイルの容量を小さくできるかどうかという点で苦労するのではないでしょうか。
「NetFront」は、元々インターネットテレビ向けに開発された製品です。インターネットテレビは、コンテンツが少なく、流行には至りませんでしたが、当時、開発をスタートした時点で「パソコンと同じようなコンテンツをサポートする」「組込向けにする」という設計思想がありました。この2つの思想が最初から入った製品ですので、現状変更する点がありません。ユーザーに選んでもらえる環境になるのであれば、他社には負けないと考えています。
そういう点からすれば、インターネットテレビが流行しなかったことは、一番の経験になったと言えるでしょう。
パソコンの世界で出ている機能はサポートするという方向で開発してきましたが、そういった智恵の部分と、実際に機能を搭載するという技術力の部分というノウハウは、他社との差別化に繋がると考えています。一方向だけではなく、幅広く情報を拾っていくということは、手間がかかりますが、「NetFront」の強みと言えるでしょう。
――ありがとうございました。
■ URL
ACCESS
http://www.access.co.jp/
ニュースリリース(ACCESS)
http://www.access.co.jp/press/050602.html
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(関口 聖)
2005/06/03 14:00
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