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【ITS世界会議 愛知・名古屋2004】
KDDI、NECと共同で3次元歩行者ナビをデモ
位置情報をBluetooth経由でケータイに発信するNEC開発の「インフォサイン」
開会式が行なわれた名古屋芸術文化センター近くの地下街「オアシス21」では、KDDI、NECが共同で開発した3次元歩行者ナビゲーションシステムのデモを行なっている。
このデモは、地下街やビル内などGPSの利用できない場所でも歩行者をナビゲーションするというもの。平面の移動だけでなく、フロア間の移動にも対応しているため、3次元ナビ、となっているわけだ。
デモでは、地下街の数十メートルおきに、緯度、経度、何階にいるかという情報をインプットしたNEC製の発信器「インフォサイン」を配置。Bluetooth搭載のA5504Tの上で実行する専用のBREWアプリを使うと、Bluetooth経由で位置情報を発信器から受信し、その情報を元にCDMAパケット網から地図をダウンロードする仕組みだ。通常のEZナビウォークでは、位置情報の発信元がGPS衛星だったわけだが、このデモではGPSの代わりに数十メートルごとに設置されたインフォサイン、ということになる。このインフォサインは、Bluetooth経由でケータイに位置情報を発信するだけなので、特にネットワークに接続するための回線を用意する必要もなく、電源さえあればどこでも設置できる。エリア拡大時のコストも削減できるとのことだ。
地図データなどは国土交通省によるもの。地図にはバリアフリー対策が講じられており、ルート検索時に、車いす使用者のために「付添いあり車いすの人」「車いすの人」という条件でルート検索することも可能だ。この場合、階段ではなくエレベーターやスロープのあるルートを選択してくれる。
ナビゲーションのスタート画面。EZナビウォークに近い
検索条件として、「付添いあり車いすの人」「車いすの人」という条件を指定することも可能
使用感自体はまったくEZナビウォークと同じだ。アプリケーションはBREWで記述されたものを使用している。通常のBREWアプリ実行中と同様に、ナビゲーション中の電話着信も可能とのこと。ただ、次のインフォサインのそばに寄るまで、情報は更新されないため、歩くスピードやBluetoothの電波状況、実際の道路状況の複雑さによっては曲がり角がどこだか、わかりにくい部分もある。地図を見ながら、音声を参考に、といった使い方が必要だ。A5504Tには電子コンパスがないため地図を回転できないが、インフォスポットから情報を取得するたびにルート順路に応じた向きに修正してくれる。電子コンパス、Bluetoothの両方が搭載された端末ができれば、地図の回転も可能になるそうだ。
感心したのは、地下から屋外に出たとき、位置情報の取得先をBluetooth経由の発信器から、GPSに自動で切り替わるようになっていることだ。こうなった場合、仕組み自体は完全にEZナビウォークと一緒になる。屋内から屋外への切り替えは、アプリケーションを実行し直したり、メニューからモードを選択するといった操作は一切必要なく、シームレスに利用できる。インフォサインや地図データなどの周辺環境はともかくとして、ソフトウェアとしては十分に開発が進んでいる段階であることを思わせる完成度だ。
地図を取得中。取得元がGPSではなく地図っぽいアイコンになっているところに注目
数十メートルおきに設置されているインフォサイン
スターバックス横のサインを10mほど前で読み取ると、ここまで地図が表示される
エスカレーター前のインフォサイン
エスカレーター利用時。高さの概念をナビが理解していることがわかる
屋外に出ると、シームレスに情報元をGPSに切り替える
今回のシステムの開発に当たったモバイルソリューション開発本部の宮本敦氏、グループリーダーの野村眞吾氏、岩田元希氏
今回のデモについて、KDDIモバイルソリューション商品開発本部 モバイルソリューション2部 1グループリーダー 次長の野村眞吾氏に話を伺ったので、ご紹介しよう。
――まず、今回のデモが実施されるに至った経緯を教えてください。
野村氏
私は一番始めのGPSケータイからずっと、ナビゲーション分野の開発に携わっています。当初はご存じの通り、現在地を測位するだけで時間がかかってしまっていた。自分でもわかっていますが、当然、そういった利用者の意見も多かったわけです。しかし、端末技術の進歩に加えて、BREWという仕組みができたのはやはり大きいです。EZナビウォークまでできあがった今、ようやく人々を驚かせることができたわけですから。でも、そこに満足しているかというと、まだまだなんですよね。一番の問題は、クルマの場合は、オープンエアな場所であることがはじめから前提になっているからいいのですが、人間は地下や建物の中をいったりきたりすることが多いことです。特に名古屋や大阪、東京も含まれるでしょうけど、大都市ではその傾向は顕著になります。そうなると、もはやGPSだけでナビゲーションするのは難しくなってしまいます。そこで、Bluetoothを使ったというわけです。
――なるほど。Bluetoothというと、いわゆるPAN(=Personal Area Network)での利用を思い浮かべるのですが、なぜ、Bluetoothなのでしょう?
野村氏
たしかに技術的な側面では、Bluetooth、RFID、無線LANといろいろ方法はありますよね。ただ、Bluetoothに関してはすでに搭載されているケータイがあるということで、今回のデモに採用することにしました。ほかのものももちろん、いろいろな技術開発に取り組んではいますが、Bluetoothはハンズフリーやモデムのダイヤルアップに使うだけではもったいないかなという気持ちもあります。ただし、我々がBluetoothで行く、ということを必ずしも意味するわけではありません。次世代に何が来るのか、それは市場が決めることです。なにが標準になってもいいように、準備をしている、というのが正しい言い方でしょう。
――今現在、EZナビウォークというサービスは、競合他社に同様のサービスがなく、非常にその分野では先をいっている印象を持っていますが、今回の取り組みもまた、今後のサービスに直結していくものと捉えていいのでしょうか?
野村氏
今回はNECさんと国土交通省さんの協力を得てできたデモですが、基本的にはEZナビウォークの延長線上にあることだと思っています。次に何が求められるのか、といったら、地下や建物の中のどこにいるのか、さらに、何階にいるのかという情報になってくるのではないでしょうか。それではいつになるのか、と聞かれると、まだまだ研究している段階、ということになってしまいますが……。しかし、EZナビウォーク自体はまだまだ位置情報サービスのはじまりにしか過ぎないと思っています。今後は、位置情報がどうした、という段階を過ぎて、取得した位置情報をいかに活用するか、といったことが重要になるはずです。使い勝手の面にもそれは言えます。実際に利用されている方はわかると思いますが、現在のナビウォークだとルートから現在位置がいきなりそれたり、動作が安定しないことがたまにありますし、まだまだ改善の余地はあります。
――EZナビウォークはカーナビとして使えるか、というテーマを追求していたユーザーも居るようですが(笑)。
野村氏
画面が小さいので、そのまま利用するとなると、技術的な面より安全面で問題がありますね(笑)モニターに出力するというのなら別ですが……。ただ、EZナビウォークという技術は十分にそのポテンシャルを持っています。カーナビとの最大の違いはやはりジャイロの有無でしょうね。今のカーナビでは自車位置の測定に関して、ほとんどGPSに頼らず、自分がどれくらい動いたかをジャイロで定めることにより、安定したナビゲーションが可能になっています。今、EZナビウォークは電子コンパスの採用で、地図を回転するところまで来ました。次は加速度センサーなのかな、というのはありますね。次、となると、屋内、地下の問題と、ジャイロということになるでしょう。地図をダウンロードする速度は、今回の実験ではBluetooth搭載、ということで1Xの端末でしたが、WINの2.4Mbpsを使えば当面は問題ないでしょうね。
――今後のカーテレマティクスの話題ですが、カーナビなどに直接、通信モジュールを搭載される流れになるのでしょうか。それとも、ケータイがカーナビを補完するような図式になるのでしょうか?
野村氏
それはどうでしょうか。通信事業者としては、契約者数を稼ぎたいですから、ケータイとカーナビは個別に課金ができたほうがいいと思うでしょうね。ただし、ユーザーとしては複数の通信端末を持っていても、契約自体は一本にまとめたいと思うのが当然です。しかし、カーナビ自体に通信モジュールは含まれるようになるでしょう。そのほうがより多くの可能性が生まれると思います。契約の問題は(技術ではなく)サービス側で解決すればいい問題ですから。
――今後の見通しをお聞かせください。
野村氏
今後は、「どこでも」使えるナビゲーションとして、さらに利用範囲を拡げていくことが目標です。これまで培ってきたGPS、そして高速通信のWIN、BREWの3つが揃ったので、今後も発展させていきたいですね。
――ありがとうございました。
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URL
ニュースリリース(KDDI)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2004/1014b/
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KDDIとNEC、Bluetooth対応端末で地下街もナビできるシステム
(伊藤 大地)
2004/10/19 23:02
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