「F-01B」レビュー

タッチ対応の防水ハイスペックモデル


F-01B

 「F-01B」はPRIMEシリーズにラインナップされるドコモの冬モデル、2軸回転スタイルの富士通製FOMA端末だ。主な特徴としては「タッチパネル」「12メガカメラなどのハイスペック」「防水」の3つが挙げられる。今回はこの3つのポイントを中心にF-01Bをレビューをお届けしよう。

完成度の高いタッチインターフェイス

折りたたんだ状態でタッチ操作できる2軸回転デザインを採用する

 F-01Bのディスプレイは静電容量式のタッチパネルを搭載し、操作は指のタッチで行えるようになっている。一方でカーソルキーやテンキーも搭載していて、普通のケータイと同じような操作もできる。タッチ操作が不要というのであれば、これまでの富士通端末と同じように操作が可能だ。しかし、タッチによるインターフェイスがF-01Bのひとつの特徴でもあり、その完成度の高さは見逃せない。

 富士通のタッチインターフェイスは、基本的にキー操作時と同じメニューを指でタッチする仕様になっている。タッチしやすいよう、メニューの各項目は大きめにデザインされている。それもメインメニュー画面だけではなく、画面下のソフトキー表示部やサブメニューなど、さまざまなところが大きめに表示され、指でタッチしやすい。待受画面をタッチすると、タッチ専用のランチャーメニューも呼び出せるが、これもなかなか使いやすい。

 また、メニュー操作中などにはピクト行の下に戻るボタン(←)と終了ボタン(×)が表示されるため、「タッチで操作できるけど、クリアキーを押す必要あり」などという無粋さもない。待受画面では画面下にメニューボタンと通話ボタン、メールボタン、検索ボタンなど、ハードウェアキーの代わりになるアイコンボタンも表示される。

メインメニュー。カーソルキーでもタッチでも操作できるタッチ操作専用のランチャーメニュー。タブをタッチすると展開する形式待受画面。ハードウェアキーの代わりになるアイコンが画面下部にある

 タッチ向け表示は大きめになっているので、F-01Bは画面が狭く感じられるのでは、とも思ったが、実際に使ってみるとそんな印象は一切感じない。というのも、F-01Bの画面解像度は960×480ドット(16:9ではなく2:1)と広く、画面サイズも3.4インチと大きくなっているのだ。このおかげで、画面にタッチ向けのアイコンが表示されていても、むしろ画面には余裕があると感じられた。

手書き文字入力画面

 さらに、F-01Bは文字入力もタッチで行えるようになっている。それもソフトウェアキーボードではなく、手書き文字入力が可能となっている。この手書き文字入力システムは富士通のノートパソコン「LOOX」などに搭載されているものを応用したもので、これが異常と言えるほど完成度が高い。とくに驚かされるのは、その認識率の高さだ。

 F-01Bの手書き文字入力では、前後の文字から正しい文字を推測してくれるため、とにかく認識率が高い。富士通では「走り書きでも認識可能」と言っているが、実際にかなり汚い文字や書き間違えですら正しく認識してくれた。しかも絵文字まで認識可能で、認識精度はかなり高いと来ている。側面キーを押すことで強制認識させ、次の文字に進める、というのも素早い文字入力ができて好印象だ。

 ただ、メールなどの長文入力をするならば、素直に端末を開いてテンキーで文字入力する方が、片手だけでできるし、テンキーに慣れている人ならばそっちの方が速いだろう。そう思うと手書き文字入力を使う機会もそれほどないのかもしれないが、しかしそれでも静電容量式のスタイラスを用意してでも活用したいくらいの優秀さでもある。

 F-01Bのタッチパネルのインターフェイスは完成度が高い。しかしこのタッチインターフェイスにiPhoneレベルの快適さがあるかというと、残念ながらそこまでは達していないと感じた。F-01Bはキー操作との両立しているタッチとしては完成度が高いが、最初からタッチオンリーでデザインされたiPhoneとはやはり比較できない。F-01Bはキー操作をメインにしつつ、必要に応じてタッチを併用する、といった使い方が便利だろう。

カメラ面も対応サービス面もセキュリティ面もハイスペック!

カメラの撮影サンプル。最大解像度だと1MB以上になる側面キーはヒンジ寄りで、横に構えて右手で押す位置ではない

 まずカメラには今シーズン最大級の解像度となる約1229万画素のCMOSを搭載している。記録画素数は4000×3000ドットだ。画像処理エンジンは富士通製の「Milbeaut(ミルビュー)」のケータイ版、Milbeaut Mobileを搭載する。このMilbeaut、実は別名で某大手カメラメーカーのデジカメにも搭載されているという実績のあるエンジンである。

 カメラの機能面では、最近のトレンドは一通り押さえていて、感度は最高でISO25600、レンズは28mm相当の広角仕様となっている。暗部だけを明るく補正する「局所コントラスト補正」や個人認識してピントを優先させる「サーチミーフォーカス」などの機能もある。ハイスペックかつ高機能なカメラなので、ケータイのカメラとしては不満を覚えることはないだろう。

 ただ、側面キーは横に構えると右手で押せない位置にあり、普通のカメラのように構えて撮りにくい感じになっている。利用者が普通のカメラに慣れているかどうかによるが、個人的には残念なポイントだ。

カメラレンズの横にある黒いへこんでいる部分が指紋認証センサー

 カメラ以外のスペック・機能面は、ほぼフルスペックだ。最新サービスであるオートGPSなどにも対応する。もはや「何が対応していないの?」と探してしまうレベルだ。搭載機能の少なさに不満を覚えることはないだろう。ちなみにドコモのウェブにある詳細なスペック表によると、対応していない「×」の機能はFMトランスミッターと音声認識、チャットメールとなっている。

 従来の富士通製端末同様、プライバシー保護・セキュリティ性能も非常に高い。本体の背面には指紋認証センサーが搭載されていて、暗証番号の代わりに指紋認証が利用できる。microSDカードにロックをかけることも可能だ。ちなみに暗証番号を管理者向けと利用者向けの2種類設定する「親子モード」もある。

 プライバシー保護機能はなかなか凝っていて、特定の人物・グループをシークレット化しておけば、プライバシーモード中はそれらの人からのメール受信や不在着信を隠しつつ、かつ密かに電池アイコンを変えて持ち主だけに通知する、という「スパイですか!?」と突っ込みたくなるような機能もある。指紋認証はビジネスユーザーに最適な機能だが、一方で他人に知られたくない付き合いをしているヤンチャ坊主にも最適なわけだ。世間の女性には是非とも彼氏のケータイの電池アイコンにも注目していただきたいと思う。

サーチキーのメニュー

 テンキーの下には「サーチキー」があり、ネットやヘルプ、内蔵辞典、電話帳やメールの検索メニューを一発起動できる。何でも「ググる」ことから始めるようなネットの利用には便利だ。あと細かいところでは電子コンパスを内蔵しているのも地図が読めない人に嬉しいポイントだろう。

 画面はカタログには「フルワイドVGA」などと記述されているが、実際の解像度は480×960ドットと、いわゆる普通のフルワイドVGAより1割強ほど縦長になっている。むしろ「ハーフXGA」に近い。たとえばフルブラウザを横全画面で表示するときは、この横960ドットという大画面のメリットを享受できる。カタログなどではなぜかあまり強調されていないが、画面解像度でF-01Bを選んでも良いくらいのアドバンテージポイントだ。

幅960ドットのフルブラウザ表示。ケータイ Watchのトップページも余裕で表示できる

安心の防水・防塵仕様

端子類は充電・通信・イヤホン統合端子のみ。カバーには防水パッキンがある電池カバーも二重構造。microSDカードスロットは電池を外さないとアクセスできない
背面のミラー仕上げになっている部分に有機ELのサブディスプレイが隠されている。明るいところではちょっと見にくい

 タッチパネルとハイスペックだけでもおなかいっぱいになりそうなところだが、F-01Bは防水仕様になっている。普通、防水ケータイというとIPX5等級(3分間噴水に当てて壊れない)とIPX7等級(30分沈めても壊れない)だけのことが多いが、F-01Bは5と7に加えIPX8等級(水中でカメラが使える)までもフォローしている。ほかの防水ケータイも水中である程度は使えてしまうことが多いが、ちゃんとIPX8等級試験をフォローしているのが珍しい。

 さらに防水に加え、防塵のIP5X等級にも対応している。これは埃の中に8時間放置したあと取り出して壊れず使えるというものだ。普通のケータイも開口部はそれほど埃に弱いわけではないが、しかし等級試験をフォローしているのはやはり珍しい。

 防水ケータイというとサイズが大きくなりがちだが、F-01Bも重さ141gと残念ながらコンパクトモデルではない。本体の幅は51mmなので、手の小さな女性などが握ると大きく感じられるかもしれない。しかしそもそもフルハイスペックで3.4インチの大型液晶を搭載し、さらに防水だと考えると、かなり頑張っているとも言える。決してコンパクトモデルではないが、無駄に太っているわけではない筋肉太りだ。

「960ドット」「防水」「セキュリティ」が魅力のハイスペック端末

 PRIMEシリーズにラインナップされるだけあって、決してコンパクトなわけではないが、一通りの機能・サービスに対応している。カメラなどのスペックも全体的に高く、とくに横幅960ドットで使えるフルブラウザはF-01Bならではの魅力だ。ハイスペック志向の人も安心して選べるモデルと言える。

 「タッチパネル」はF-01Bの特徴のひとつではあるが、これはF-01Bを選ぶ根拠としては弱いと感じられる。F-01Bのタッチパネルインターフェイスは優秀だが、あくまでカーソルキー・テンキー操作がメインになると思った方が良いだろう。「タッチだけで快適に操作したい」というのであれば、iPhoneやHT-03Aをオススメしたいところだ。

 一方で「防水」「セキュリティ機能」といったF-01Bならではのポイントは魅力的だ。ハイスペックかつ防水、というモデルはそれほど多くないので、そこを目当てにF-01Bを選ぶのもアリだ。また、指紋認証なども富士通ならではのポイントなので、ケータイに絶対的なセキュリティ性を求めるビジネスユーザーにとってもF-01Bは選ぶ価値が高い。

 この冬にハイスペックなiモード端末を選ぶとき、「960ドット」と「防水」、「セキュリティ」のいずれかに魅力を感じるならば、F-01Bは選択肢の筆頭に入れるべきモデルだ。



(白根 雅彦)

2009/12/15 12:18