「CA003」レビュー

トップクラスのスペックを備えた質実剛健なEXILIMケータイ


CA003

 auの2009冬~2010春モデルのなかでも、12メガを搭載したハイスペックモデルとして前評判の高かったのが「EXILIMケータイ CA003」だ。発売直前に、発売日が延期になるという憂き目を見たが、ようやく11月14日から順次、全国で発売となった。CA003は、EXILIMケータイとして基本的なスタイルを継承しつつ、画素数をアップ、さらにカシオイチオシの機能である「ダイナミックフォト」なども搭載されている。今回はそんなCA003の実機レビューをお届けしよう。

外観デザイン

 形状は従来のEXILIMケータイ同様に回転2軸ヒンジによるクラムシェルタイプ(折りたたみ型)。底面部分に12.2メガピクセルのカメラを内蔵し、コンパクトデジカメを意識したデザインテイストになっている。特に底面のデザインに注力しているようで、底面を一枚の電池カバーで覆うような設計になっている。他機種では電池カバーは本体の一部のみを覆うため、どうしても分割するラインができてしまうのだが、CA003ではそういったラインは一切ない。まるで「底面が正面」という作りになっている。

 レンズ周りにはシルバーのリングが配置されており、シルバーのリングとは別にホワイトとブルーグリーンの2色に発光し、メールや着信などがわかるようになっている。レンズ近くには「EXILIM 28mm WIDE LENS 1:28 f=4.6mm」といったように記載されているなど、本格デジカメを意識した見た目だ。

 本体側面にはカメラ撮影する際に構えた際に押しやすいように大きなシャッターボタンが端に配置されている。さらによく使う機能を設定できる「クイックキー」、「マナー/クリア」、「上下方向キー」、「決定」のボタンが並んでいる。

 テンキー部分は、ボタン部分の凹凸が少なく独特な押下感だ。横方向にボタンが段違いにレイアウトされているなど、見た目も個性的な印象がある。

 本体サイズは50×110×17.4mm、135g。ただ、実際に持ってみるとスペック以上にやや本体幅が広いような印象を感じた。比較的、角張ったデザインであるため、そんな印象を得るのかも知れない。本体カラーは「ターコイズグリーン」、「マゼンダピンク」、「ダークパープル」、「シャンパンゴールド」の4色展開となっている。


側面ボタン方向キーと数字キー

カメラ機能

 EXILIMケータイの最高スペックモデルだけに、まず気になるのがカメラ周りの性能だ。画素数は1217万画素、撮影素子はCMOSだ。広角28mm相当の撮影が可能となっている。「EXILIMエンジン for Mobile」という画像処理技術より、緻密な描写力を実現している。

 回転2軸の液晶ディスプレイを外側にひねると、カメラ機能が起動する。まず本体側面のどのボタンを押せば撮影できるのか、撮影画像はどうやって閲覧するかのガイドが表示される。ここでシャッターボタンを押すと、カメラモードに移行する。

 カメラ機能時、画面の右横にもボタンの操作ガイドや撮影画素数が表示されているのでわかりやすい。メニューボタンを押すと、画面下部に帯状にさまざまな機能メニューが表示されるので、本体側面の上下(左右)ボタンでメニューを選んでいく流れになる。昨今、タッチパネル機種が多いためか、左右ボタンでカーソルを動かしていくというのにはちょっと面倒くささを感じてしまう。

 通常の撮影は、シャッターボタンを半押しし、ピントを合わせ、さらに押下することで撮影できるようになる。オートフォーカスのモードはシングルポイント、9ポイント、笑顔、オフという4つから選択可能だ。

 撮影サイズに関しては最大が12Mサイズで、9M(ワイド)、8M、5M、3M、2M、1Mで最小は0.3Mサイズとなる。大きな解像度で撮影した後、メールに添付する際などに「壁紙(小)」、「壁紙(標準)」といったメニューが出てくるようになっている。


撮影サンプル。4000×3000ドット。リンク先の画像は無加工

超解像デジタルズーム

 本体を横にして、側面のボタンを使って撮影する際はPCモードのみ。本体を縦にして、マルチキーの中央でシャッターを切る場合は撮影モードとして、PCモードと壁紙モード、ムービーを選択することができる。

 撮影モードについては「オートリサイズ」にしておくと便利だろう。ズームに応じて自動的にサイズを変更してくれる(9Mフルワイドは除く)からだ。「デジタルズームをしようとしたら、解像度が大きく過ぎて寄れず、設定の変更が必要だった」という手間を避けることができる。

 またズームでは「超解像デジタルズーム」というモードがあり、従来のデジタルズームではぼやけてしまうような被写体に対しても、超解像度技術によって、くっきりとした画像になってくれる。ただし、実際にデジタルズームをしてもくっきりとした画像になるには屋外など明るい場所でないと難しいようだ。また、手ぶれ補正モードとの併用はできないようになっているので注意が必要だ。

 通常は「オートベストショット」モードで撮影しておけば、シャッターを押すだけで、シーンを自動判別し、最適なモードで撮影をしておいてくれる。ほかにも、人物、風景、人物+風景、トワイライト、夜景、マクロといったモードが備わっている。

ダイナミックフォト、高速連写


ダイナミックフォトダイナミックフォトの作例。リンク先はGifアニメーション(約2.7MB)

 CA003のカメラ機能として売りとなっているのが「ダイナミックフォト」と呼ばれるものだ。10枚の連写画像の中から被写体をカメラが自動的に切り抜き、背景に貼り付けたりすることができる機能だ。すでに同社製のコンパクトカメラでも目玉の機能として搭載されている。

 まず、実際に動いているものを自動10枚連写(約2秒)で撮影したのち、切り抜くために動いているものを外した状態で撮影し、キャラクターとして保存。あとは別の背景画面に重ね合わせることで、合成写真が完成する。

 実際の作り方は、ガイド画面に沿って作れるので流れ自体の把握は簡単だ。しかし、綺麗に切り抜くための撮影方法などはあれこれ試行錯誤してうまくなる必要がありそうだ。特に最初の動きのあるキャラクターを撮影する際は、背景ができるだけシンプルな壁などを選んだ方がよさそうだ。

 また、面白い画像を作るには、ユーザーの創作力が試されるとも言えるだろう。作った画像はGIFファイルとして保存できるので、待受画面やデコメールの添付素材として活用できる。特にデコメールの添付素材は大きさも3パターンから選べるので、いろいろと使い勝手がありそうだ。


高速連写「パスト連写」機能で半押し状態から高速連写撮影ができる。

 カメラ関連ではもうひとつ高速連写として1秒間に20枚の速度で撮影できるモードが備わっている。撮影したものは20コマのサムネイル表示ができ、すべての画像もしくは1枚ずつの表示も可能だ。保存もまとめてもしくは選択して行える。さらにその状態からメニューを呼び出せばメールへの添付が行える。実際、撮影してみると20枚はあっという間に撮影が完了してしまう。狙っていた被写体が来る前に撮影が終わってしまった、ということもあるので注意したい。

 ほかにも「パスト連写」として、シャッターを半押しした状態から全押しまでの画像1秒あたり20枚の高速連写で撮影しておける機能を備える。シャッターチャンスを逃しそうな被写体のときに使うと便利そうだ。実際、撮影された20枚のうち、残しておきたい画像だけを選択して保存できるようにもなっていて便利だ(もちろんすべての画像の保存も可能)。

 高速で連続撮影した画像を楽しく表示できるのが「クイックフォトビューアー」という機能。画像を自動的にコマ送りで連続表示するので、微妙な違いを見ることができて面白い。これを手動で1枚1枚送っていくと、表示の切り替えの際に処理が追いつかず、一瞬、モザイク状となってしまうため、あまり実用的ではない。自動で再生するのがオススメだ。

 連続撮影やパスト連写など興味深い機能があるものの、通常撮影から切り替えるにはメニューを呼び出し、カーソルを動かして決定キーを押下するという作業がやや面倒に感じられてしまった。他機種であれば、タッチで簡単に切り替えられるので、シャッターチャンスを逃さないという意味で有用だろう。この機能切り替えにスムーズさに欠けるところが残念な点ともいえる。

 一方で、3.3インチの有機ELディスプレイを採用しているためか、夜景などを撮影し、ディスプレイに表示した際はかなり彩度の濃い画像を楽しむことができる。同じく12メガの他機種で撮影した際にはやや色味が薄かった被写体も、CA003であれば高コントラストの鮮やかな色味になった。このあたりは好みに寄るだろうが、覚えておいた方がいい違いだ。


撮影サンプル。4000×3000ドット。リンク先の画像は無加工撮影サンプル。4000×3000ドット。リンク先の画像は無加工


撮影サンプル。4000×3000ドット。リンク先の画像は無加工シーンに応じた撮影モードが用意されている

そのほかの機能

 CA003はハイスペックモデルに位置づけられることもあり、auが提供するEZ・FMといったサービス以外にはほとんど対応する。国際ローミングはCDMAエリアのみ、「着うたフルプラス」「au Smart Sports」、「EZ ニュースEX」、Bluetoothによるワイヤレスでのヘッドセットも利用できる。
 
 普段、使う上で活用したいのが本体側面の「クイック」ボタン。クイックを押すことで、上段部分にいま使っている機能、中央は普段よく使う機能が並ぶメニューが登場する。「クイック」ボタンがやや押しにくい場所にある点は気になるものの、使いこなしようによっては、かなり便利になりそうな気がした。

 細やかな機能として面白いのが旅先で役立ちそうな英語関連機能だ。「しゃべるモバイル辞典」では、「英会話とっさのひとこと辞典」などに収録されているフレーズを音声として再生ができる。旅先で困ったとき、いきなりCA003を取り出して、相手に音声ファイルを聞かせるのか、という疑問はわくが、ちょっとした暇つぶしに英会話の勉強をするというのには使えそうだ。

 同じくグローバル機能としてあるのが、テキストリーダー。日本語や英語をカメラで撮影すると、その文章を翻訳してくれるというものだ。撮影時、画角に文章を収めつつ、くっきりと写るようにもしなくてはいけないため、難易度は高いのだが、撮影さえちゃんとしていれば、かなりの割合でしっかりと翻訳してくれる。こちらも本格的に海外で実用性があるかは未知数だが、それなりに遊べる機能にはなっている。

 CA003では、編集機能に対応したPCドキュメントビューアーを内蔵している。メールに添付されたWordやExcelファイルを閲覧するだけでなく、ちょっとした編集作業ができるようになっている。ただし、文章中の文字に対して、始点と終点を設定して、そこを書き換えるといったように使い勝手としては、決していいほうではない。外出先でファイルを確認し、どうしても必要な時に一部の数字や文字を変更するといった修正程度の用途として割り切った方がいいだろう。

 このほか、カシオファンにとって気になるのが「アデリーペンギン」の存在だが、今回は80パターン以上の動きが入っており、いろいろと楽しむことができる。

端末比較

 auの全ラインナップで見てみると、気になるのが他機種との比較だ。同じく12メガの「SH003」と比べると、au Smart Sportのフィットネス機能はモーションセンサーに非対応、Run&Walkではカロリーカウンターと体組成計連携に非対応という点が見劣りしてしまう。当然のことながら、タッチパネルではないという点もマイナスだろう。

 一方、ミドルクラスとなる「CA004」とスペックで比較すると、大きなところでは8メガという画素数と画面サイズ(3.1インチ)、着うたフルプラス非対応という違いがある。画質よりもできるだけ出費は安価に抑えたいのであれば、CA004が選択肢になるだろう。

 とはいえ、auラインナップのなかでは12メガというトップクラスのスペックを備え、従来からのカシオユーザーには安心して使うことのできる質実剛健なマシンに仕上がっていると言えそうだ。

 



(石川 温)

2009/12/10 12:00