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iPhoneをMVNOで安定して使う新手法? IIJが解析結果を報告
(2015/7/27 18:35)
インターネットイニシアティブ(IIJ)は26日、同社ユーザー向けのイベント「IIJmio meeting 8」を開催した。その中で、MVNOのSIMカードをiPhoneで利用する際の挙動を解析調査した結果が報告された。
7月13日には、IIJの堂前清隆氏が同社公式ブログに投稿した「auのネットワークを使ったMVNOでiPhoneが利用できた」という報告が話題を呼んだが(関連記事)、今回のイベントでは、その検証過程の詳細が明らかにされた。プレゼンテーションを行ったのはIIJmioのサービス開発を担当するエンジニアの大内宗徳氏。
iOS8のiPhone 5s/5cでドコモMVNOを利用した際の問題
大内氏によると、iOS8.0以降では、VoLTE非対応のiPhone 5s/5cやiPadシリーズでNTTドコモのネットワークを使ったMVNOのSIMカードを利用した場合に、LTEに接続するまでに時間がかかるなどの問題が確認されていた。
この問題を回避する方法として、大内氏は「データ専用のSIMを使わず、SMS対応SIMか音声通話対応SIMを使うこと」と、「iPhone向けの新しい構成プロファイル(設定ファイル)を用いてAPN設定を行うこと」の2点を挙げた。
この結論を導き出すために、IIJでは、iPhoneの通信チップが行っている基地局との通信を解析し、問題が発生する原因を分析したという。
通常、スマートフォンが3GやLTEのネットワークで通信するためには、ネットワーク側と何度かの情報のやりとりを経て接続するプロセスを行う。このネットワークへの接続のプロセスの中では、最寄りの基地局に端末の居場所を知らせる「位置登録」と、データ通信を行うためのサーバーとの接続を確立する「データ通信接続の確立」の、大まかに2つの手続きを行っている。
この2つの手続きは3GとLTEではそれぞれ別の方法によって行っており、どちらかのネットワークで「位置登録」と「データ通信接続の確立」の両方が行われることで、そのネットワーク上でデータ通信が利用できるようになる。接続を保ったまま、3G/LTE間でネットワークを切り替えることができる。
IIJでは、iOS端末でドコモ網を利用したMVNOでLTE接続に時間がかかる問題の原因を、以下のように分析している。
3Gを利用して位置登録を行う場合、LTEが利用可能な端末で、データ通信のみのSIMカードを利用していると、LTEで位置登録を行うように案内される。
LTEで位置登録を済ませた端末は、ネットワークに対し「データ通信接続の確立」を要求する。その際、本来はMVNOのSIMカードを利用していると、MVNOの提供する認証サーバーに対して接続要求を行うが、iOSでは、ドコモが提供している認証サーバーに接続要求を行うようになっており、LTEでの接続に失敗するという。
LTEに接続に失敗した端末では、一時的にLTEでの接続能力を無効化し、再度3Gでの接続を試みる。LTE接続が無効化されているため、今度は3Gでの位置登録が成功し、データ通信接続の確立も問題なく実行される。
その後、LTE接続能力を回復させると、3GからLTEへの切り替えが行われ、LTEのデータ通信が利用可能になる。LTE接続能力の無効化から回復までは約12分に設定されており、その間、3Gのみしか利用できなくなっている、というのが、IIJの分析の内容だ。
一方で、同様の端末でSMS対応や音声通話対応のSIMカードを使った場合、この問題は発生しないという。これは、SMS対応や音声通話に対応しているため、当初から3Gでの接続が完了し、すぐにLTEに切り替わるからとしている。
問題を回避する構成プロファイル
IIJの堂前氏の7月13日の公式ブログでの投稿には、ドコモiPhone 5s/5c向けに通信の安定化をさせる構成プロファイル(iOSの設定用ファイル)を試験的に公開している。現状ベータテスト版として、利用は自己責任となっているが、この構成プロファイルを利用した場合、安定してLTEに接続できるようになるという。
このプロファイルはAppleがiOS7以降から新たに追加した接続設定項目を利用して、IIJがカスタマイズして作成したもの。問題が発生しているiPhoneで、このプロファイルを利用すると、LTE接続の要求時にIIJが用意した認証サーバーに接続要求を行うようになり、LTEが無効化されることなく、接続が確立される。
なお、iPhone 6ではこの問題は発生しないという。iPhone 6では、ドコモ提供のVoLTE通話用のデータ通信サーバーにまず接続し、その後IIJの認証サーバーに接続する形となるため、データ通信で安定して接続できるためとしている。
iPhoneでau系MVNOが利用可能に?
IIJの発見した手法でカスタマイズした構成プロファイルを利用すると、従来非対応とされてきた、auのネットワークを利用したMVNOのSIMカードを、iPhoneで利用できるようになる可能性があるという。
au系のMVNOでは音声通話は3Gを、データ通信はLTEのみを利用できる。IIJの推測によると、auのネットワークを利用したiPhoneでは、LTE接続で、MVNOの認証サーバーではなく、auの認証サーバーに転送されてしまい、LTE接続に失敗し、3Gでのデータ接続が利用できず、接続ができなくなっている状況だという。
IIJの手法でカスタマイズした構成プロファイルを利用することで、LTEでの接続が確立し、利用することができるようになるという。ただし、この方法では、通信が不安定になる問題が発生する場合があるとして、検証が必要との結論となっている。
イベントの会場では、IIJが法人向けに提供しているauのネットワークを利用したMVNOのSIMカードで、iPhone 6 Plusの通信を利用しているところがデモンストレーション展示されていた。
なお、KDDIのネットワークを利用したMVNO「mineo」を運営するケイ・オプティコムは、新構成プロファイルを用いたiPhoneでの動作状況を検証しており、同サービスの公式ブログにてその経過を報告している。