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「Z4は現時点の完成形」、ソニモバ十時社長が語ったこと

 20日、日本国内向けの夏モデルとして「Xperia Z4」が発表された。国内ではどのキャリアから提供されるか明らかにされていないが、発表会の壇上に立ったソニーモバイルコミュニケーションズの十時裕樹代表取締役社長兼CEOは、「スマートフォンは、生活になくてはならず、いつも持ち歩くもの。幅広いユーザーとのタッチポイントであり、これからも事業の柱として発展させていく方針」と説明。一方で、グローバルでの展開、Zシリーズ以外のラインアップについて十時社長は明らかにしなかった。

高付加価値を創造するZシリーズ、「Z4は現時点の完成形」

 十時氏は、スマートフォン市場のなかでも高付加価値の提供が重要な領域であり、そのゾーンに向けて提供するのがZシリーズと位置付ける。カメラの進化、エンターテイメント性能の向上など、初代の「Z」から昨秋の「Z3」までの歩みを振り返りつつ、最新機種である「Xperia Z4」は“これまでの資産を継承し、さらに進化した1つの完成形”と紹介する。

目指したのは「カメラスマホをきわめる」

 「Xperia Z4」の開発において目指してきたのは「カメラスマホをきわめる」――ソニーモバイル シニアバイスプレジデントでデザイン・商品企画部門長の田島知一氏が、開口一番、語ったコンセプトだ。

 1/2.3型と、スマホとして大型のイメージセンサー「Exmor RS for mobile」を引き続き採用し、「ソニーの秘伝のたれ」(田島氏)という画像処理エンジンのBIOZ、そしてGレンズという組み合わせで、ISO12800という高感度撮影を実現。また世界的な“自撮りブーム”をさらに楽しめるよう、顔を認識して動物の顔を貼り付けたりできる「ARマスク」、ペイント風の写真にしたりできる「スタイルポートレート」といった新機能が搭載された。

 こうした機能は、高画質といった性能だけではなく、スマートフォンというコミュニケーションツールだからこそ搭載されたもので、ソニーモバイルとして新たなコミュニケーションを提案する機能なのだという。

Zシリーズを継承するオムニバランスデザイン、UIも

 Zシリーズでこれまで続けられてきた「オムニバランスデザイン」もまた、Z4に継承された要素の1つ。SIMカードとmicroSDカードを1つのスロットにし、防水対応のキャップレスUSBの採用、専用充電端子の撤廃、角の部分に透明樹脂と塗装した樹脂を重ね合わせる手法の採用などもあって、側面はよりシンプルに仕上げられた。

 同じデザインテイストのため、これまでの機種からの進化感については物足りない印象を与える一方、先述した専用充電端子やUSBポート、スロットなどの変更で、内部構造もこれまでから大きく刷新され、新たに設計されたものになっている。

 ソフトウェア面では、Android 5.0(Lollipop)のマテリアルデザインにあわせたユーザーインターフェイスに仕上げられた。たとえば、写真などのコンテンツを画面いっぱいに使って表現したり、スクロールなどの表現も、物の存在感を感じさせる動きにした。タスク切り替えでは、新たに使うアプリが下から出てくるアニメとし、逆にこれまで使っていたアプリから待受に戻るときにはアプリが下に消えていく、といったアニメーションで表現。使い始める物、使い終えたものを表現する形となった。

高付加価値モデルを重視

 このタイミングでの発表になった点について十時氏は、「今回はバルセロナ(のMobile World Congressでの発表)を見送った経緯があった。準備が整ったこと、夏モデルということで、これくらい前の発表が良いのではないかと判断した」と説明。国内で取り扱われるキャリアは明言せず、「追って、適切なタイミングで」と述べるに留まった。

 また「Xperia Z3」の発表から半年でフラッグシップモデルが発表されたことについて、「中期的には1年に一度に持っていきたいと思ってるが、個別のキャリアの考え、市場の動向で多少調整はある」と説明。また「Xperia Z4」は単なるハイエンドというよりも、高い付加価値を提供するモデルで、ソニーとしてはその領域にフォーカスするという姿勢であり、高付加価値モデルにおいてパーツの供給などへの懸念はあまりない、というのが現時点での見方だという。

 2年前には、NTTドコモが「ツートップ戦略」と題して、サムスンとソニーの機種が安価に提供された。その割賦を終えるユーザーがこの夏、次の機種を選ぶタイミングを迎えることについて十時氏は「日本は、ソニーモバイルにとって最も重要な市場。Xperiaのカスタマーベースは(ツートップの結果)拡大しており、Zシリーズの登場から時間も経過して、(Xperiaへ)買い替えるユーザーも増えている。事業としての効率性を考えると、新たなフラッグシップを常に楽しんでいただけるようコミュニケーションを図りたい」と語り、最先端機種の提供を重視する姿勢をあらためて印象付けた。

SIMロックフリーモデルへの考え、Windowsはノーコメント

 5月から導入されるSIMロック解除については、「今後どういう展開になるか、見定めが難しい。ただ、通信事業者とのビジネス開発はこれまでと変わらず進めていく」とする。

 SIMロックフリーモデルの投入を行うかどうか、十時氏は「グループ会社にSo-netがあり、すでにSo-net向けのXperiaも提供した。その延長線上で事業を展開する可能性はある。しかし通信事業者とのビジネスが非常に大きい。最重要視する方針に変わりはない(イオンでの反響は? という問いに)判断するにはちょっと早いかなと思う。MVNO/MVNE向けは徐々に拡大する可能性はあるのではないか。新規参入も多いと聞いており、増えていくのではないかと思う」と述べた。

 夏モデルが「Xperia Z4」だけになるのか、という質問には「それはまだ決めていない。基本的にはZ4を中心にやっていくことに変わりない」と含みを持たせた。

 海外メーカーを中心に格安な機種が続々と登場することについては「1つの市場だと思う。ただ、たとえば2020年を見据えた5Gなど通信インフラの進化などを具体的に、リッチなユーザー体験として、新しいデバイスは必要になると思う。そうした進化を踏まえて、物作りをしていきたい」とする。

 商品ラインアップについては、プロダクトポートフォリオの整流化は進めたいと述べる一方、Windows Phoneのような新たなプラットフォームへの取り組みについては、「この場でコメントするのは難しい」とコメントを避けた。

 このほか、これまでZシリーズは海外の展示会にあわせて発表され、グローバルでの展開を志向してきたが、「Z4」では3月のバルセロナでは発表されず、まず日本での展開だけ明らかにされる形となった。ソニーでは、モバイル事業の見直しを進めており、その路線に則った形とみられるが、報道陣からはグローバル展開への考え方については多くの質問が上がった。ただ、十時氏は、準備が整えば明らかにする、という回答に留まり、展開する市場が拡がるか狭まるのか、といった部分も含めて明言しなかった。

関口 聖