ニュース

料金・奨励金・SIMロック解除はどうなる? 総務省で検討スタート

 「奨励金は長期契約者にとって不公平になっていないか」「現在の料金は多様なニーズに合致していないのではないか」――総務省の「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG アドホック会合」の資料の冒頭に記された言葉だ。

 20日にスタートしたこの会合は、有識者が通信・ネット関連サービスの消費者保護に関して議論するもの。「ICTサービス安心・安全研究会」は2月に発足し、消費者保護関連の議論を行う作業部会(ワーキンググループ)が定期的に開催されてきた。そして別の会合である「2020-ICT基盤政策特別部会」を通じて浮かび上がってきた課題の一部が、このアドホック会合で取り上げられることになる。その検討課題とは「販売奨励金など」「SIMロック解除」「モバイルサービスの料金体系」の3つだ。

 本稿では、アドホック会合の資料で取り上げられた課題などを紹介する。

現状は……

 まず現状はどう分析されているのだろうか。資料では、日本の携帯電話サービスがNTTグループ、KDDIグループ、ソフトバンクグループの3グループに集約され、そのシェアが均衡しつつあると指摘する。また通信品質を左右する重要な要素の1つである電波(周波数帯)はもともと有限かつ希少なもので、新たに割り当てるには制約があるとする。2020-ICT基盤政策では「3社による協調的寡占」、つまり、競争相手が少ないため互いをあまり刺激しない状況にある、と有識者から指摘があり、今回の資料でも主な意見として紹介されている。

販売奨励金、キャッシュバックを問題視

 こうして、ある種の膠着状態になっている市場への刺激策として、3キャリアから回線を借り受けて独自サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)の拡大が期待される。MVNO全体の契約数は市場の9%(1375万、2013年12月末時点)だが、そのうち半数以上が携帯会社がグループ内で貸し借りするものであり、純粋なMVNOの市場シェアは4.4%(約670万契約)に留まる。そして、この春、問題視された過大なキャッシュバック、販売奨励金は、MVNOの市場参入を難しくさせて、モバイルサービス市場の健全な発展を阻む、との指摘が挙がっている。

 MNP利用時のキャッシュバックの高額化は、各社でiPhoneを取り扱うなど、3キャリア間の違いが少なくなってきたことが最大の要因で、長期契約者とMNPを頻繁に利用するユーザーの間で不公平感が拡大している、との意見が紹介される一方で、ユーザーにとっては低い負担で最新機種を手にしやすい、というメリットもあったとし、キャリア側からは既に適正化の方向にあり、抑制のためのルールが必要との声が挙がっていることに触れている。

 なお、販売奨励金は、過去にも問題視され、2007年の議論を経て、現在、端末代金と通信サービスの収益は切り離されている。

SIMロック解除、さらなる促進を求める声

 2011年から本格的にスタートしたものの、現実的に利用できるサービスはNTTドコモだけ、というのが国内におけるSIMロック解除の状況だ。SIMロックとは、A社が販売する携帯電話にはA社のSIMカードでしか利用できない、というロックのこと。現在はNTTドコモで2011年4月1日以降に発売された機種はいずれも解除可能だが、auは3Gの通信方式が異なることもあって他社のSIMカードが利用できない。またソフトバンクモバイルでSIMロック解除対応機種は3機種のみで、これまでの会見で孫正義社長は「ニーズがない」と繰り返しコメント。

 各キャリアから販売されるiPhoneは、いずれもSIMロック解除には非対応だが、2013年11月からはオンラインで、2014年1月からは実店舗でSIMロックフリー版が販売されている。キャリア版で適用される割引はアップルストアのSIMロックフリー版には適用されず、端末価格に大きな違いがある。

 その一方で、MVNOやドコモやソフトバンク、イー・モバイル、そしてMVNOではSIMカード単体を発売。国内ではいくつかSIMロックフリーのスマートフォン単体が販売されたり、SIMロックフリー端末とSIMカードだけのパッケージを組み合わせたセット商品も増えてきた。

 これまで総務省で進められた有識者会合では、SIMロック解除のさらなる推進を求める意見が挙がった。また主要国では、契約から一定期間後、SIMロック解除に応じるているところが多いものの、フランスや米国、韓国ではSIMロック解除に関する規制がある。特に米国では、かつて個人でSIMロック解除することは黙認されていたものの、2013年1月に米議会図書館が「デジタルミレニアム著作権法に違反する」と判断。これを受けてユーザーからの請願が活発になり、米大統領府やFCC(米連邦通信委員会)が活動。まず業界団体のCTIAがガイドラインを改訂し、解約金支払後など一定条件を満たせば解約時にSIMロックを無料解除できるようにした。また2014年2月、下院において「個人がSIMロックを解除できる法律(Unlocking Consumer Choice and Wireless Competition Act」が可決され、法律面での整備も進められた。

 参考資料として、ソフトバンクが買収した米スプリントのSIMロック解除サービスも紹介されている。それによれば、スプリントはサイト上でポリシーを公開し、ユーザーからの申し出があればロックを解除しているという。解除できるのは既存、あるいはかつてのスプリントユーザーで、分割払いでの支払いを終えるなど契約上の義務を果たしているなど、いくつかの条件がある。なお、スプリントの3G方式はauと同じ者で、ロック解除しても、米国内の他社のうちAT&TやT-mobileのネットワークは利用できない。なおiPhoneなどは対象外という。今後、2015年2月11日には全端末のSIMロックを解除する方針。

多様性に欠けるこれまでの料金

 「料金の高止まり」「多様なニーズに応じた納得感のある料金体系」などの意見がこれまで挙がっていた総務省での議論。

 アドホック会合の資料では、そうした意見を紹介しつつ、ユーザーの月間平均通信量が約2GBであり、その実体に応じたプランは限られていること、会計における通信費の割合が10年前と比べて増加したこと、各社のプランが横並びであること、LTEになって無料通話分がなくなったことなどを紹介する。なお、NTTドコモが6月より新たな料金プランを提供する予定で、通話定額やデータシェアが本格的に導入される。

 こうした状況下で、通信量や速度に一定の制約があるものの、料金面で割安なMVNOのサービスが拡がっていることにも触れる。MVNOからはさらにサービスを多様化させるため、あるいは通信サービスと端末を分離させてユーザーにとって選択しやすくするための要望が寄せられており、政策としての対応が今後の検討、と参考資料に記されている。

関口 聖