富士通、美容・ヘルスケア事業者向けサービス「肌メモリ」


 富士通は29日、美容・健康関連のサービスを提供している事業者に向けたスマートフォン用クラウドサービス「肌メモリ」の開始を発表し、説明会とデモンストレーションを開催した。

 「肌メモリ」は、スマートフォンのカメラで撮影した画像を富士通独自の技術で解析し、肌の色、シミ、毛穴それぞれの状態をデータ化してクラウドに蓄積、それらのデータをもとに測定対象を評価するもの。このシステムとデータ基盤を活用したスマートフォンアプリをサービス事業者が開発し、エンドユーザーに対する販促活動の一環として提供することなどを同社は想定している。

アウトカメラを使うため、1人の場合は鏡も必要

 肌を撮影するのに必要なものは、400万画素以上のカメラを備えたスマートフォンと専用アプリ、そして同社が開発した「カラーフレーム」と呼ばれるホワイトバランスを機械的に確認するための特殊な穴開きカード。このカラーフレームを肌に当て、専用アプリのカメラ映像内に表示される赤枠内にカラーフレームのマークが収まるように撮影する。一般的なスマートフォンのインカメラは画素数不足で使用できないことが多く、アウトカメラを用いることから、他人に撮影してもらうか、鏡でスマートフォンの画面を確認しながら撮影することになる。

 撮影画像は画像解析によりモノクロもしくはグレースケールの画像に変換され、肌の色、毛穴の大きさと数、シミの大きさや色の濃さなどを認識、データ化してクラウド上に保管する。デモンストレーションでは、同社が用意したサンプルアプリで実際の撮影から測定、結果表示まで一通り行うことができ、星の数で評価された解析結果を確認できるようになっていた。

カラーフレームはカード型、ポストカード型、動物などをかたどったかわいらしい形などにもできる
富士通がテスト開発した測定用サンプルアプリ初めに測定したい項目を選ぶ
次に撮影箇所を選択撮影は赤枠内にカラーフレームを収めるように
撮影写真が測定に適した画像かどうか、白飛び率やピンボケ率で判断できる毛穴の測定結果
シミの測定結果
肌の色の測定結果

測定機器のある店舗に行きにくいユーザーにも

富士通 コンバージェンスサービス本部 シニアディレクターの徳永 奈緒美氏

 発表会では、同社コンバージェンスサービス本部の徳永氏が、今回の「肌メモリ」を提供することになった背景を説明。「企業に情報システムを提供するのが我々のメイン事業だったが、ICT(情報通信技術)によって住みやすい、安心できる社会を実現し、個人にも貢献していきたいという思いがあった。スマートフォンの機能が進化して、人のさまざまな活動データをネットワーク経由で集めることも簡単になっている中、4兆円といわれる美容・健康市場がますます大きくなっていることもあり、そこに富士通としてICTによる新たな価値を創造できるのではないかと考えた」という。

 化粧品売り場などにも肌状態を測定する専用機器はあるものの、「消費者からすると、そんなにしょっちゅう店舗に足を運べるものではない。店員を前にすると、商品を買わないといけないのでは、というプレッシャーもあって気軽に測定しに行くわけにもいかず、いつでもどこでも気軽に測定できるようにしたかった」と話し、「肌メモリ」で実現するサービスの手軽さや気楽さをアピールした。

 想定されるエンドユーザーの活用方法としては、主に女性が、1日ごとあるいは時間帯ごとに自身の肌状態をチェックし、ユーザーが日々の美容・健康管理に役立てられるようにする、というもの。他人の肌状態と比較する機能も見込んでいる。サービス提供事業者としては、「肌メモリ」の仕組みを自社の製品・サービスに取り込んだり、ユーザーの肌の状態に合わせた自社製品のリコメンドや、ソーシャルメディアとの連携によるキャンペーン情報の拡散、クーポンの配布といった展開も考えられる。

 富士通が提供するのは、あくまでもクラウド上の画像解析を含むサーバーシステムとデータ基盤のみ。エンドユーザーが使用することになるスマートフォンアプリはサービス事業者が開発し、専用のカラーフレームはサービス事業者の店舗で配布するか、雑誌の付録などにして提供することを想定している。基本的には、クラウドサーバーは同社が全て管理し、サービス事業者から集められたデータを日々蓄積することによって、データそのものの信頼性や解析精度の向上、同社の他サービスへの展開などにも活用される。複数のサービス事業者からのデータもひとまとめにして管理するため、肌に関する大規模なデータベースが構築されることになる。

エムティーアイが12月下旬にサービス、海外展開も

 サービス事業者が導入する場合の料金は、初期費用が50万円、運用費用が月額4万円~(ユーザー数に応じた従量課金制)。エンドユーザーが使用することになるサービスが有料になるか無料になるかは、サービス提供事業者によって異なる。「肌メモリ」の対応プラットフォームは当面はAndroid端末のみだが、2013年早々にiOS端末にも対応する予定だ。

料金表今後は同社が提供する既存サービスとも絡めて、多方面に展開
海外進出も現在検討中

 現在、同サービスを採用した実サービスの提供が決定しているのはエムティーアイ1社で、12月下旬から一部のエンドユーザー向けに開始するという。同社のAndroidスマートフォンARROWSシリーズなどへの専用アプリのプリインストールについても、関連部署と検討を進めている最中とのこと。

 なお、「肌メモリ」の開発およびサービス開始にあたって収集した肌データは、同社の女性従業員数百人から取得したもの。したがって、女性ユーザーが本サービスを利用する場合は高い精度で解析されるが、男性の場合は特に肌の色の評価が低めに出る傾向があるようだ。今後、実サービスが始まって男性の肌データも収集されるようになれば、男性ユーザーも客観的な肌状態を知ることができるようになるだろう。

 同社によると、同サービスの海外展開も模索中。人種ごとに肌の色が異なり画像解析ロジックにも影響があることから、まずは肌の色が近いモンゴロイド系である中国、韓国、東南アジアへの進出を足がかりにしたい考えだ。




(日沼諭史)

2012/11/29 16:52