イー・アクセス決算、春の新端末からソフトバンク網対応へ
エリック・ガン氏 |
イー・アクセスは、2012年度第2四半期(2012年4月1日~9月30日)までの業績結果を発表した。
■業績
第2四半期の業績は、売上高が前年同期比12.3%増の1084億6500万円、営業利益が35.8%減の86億1000万円、EBITDAは7%減の299億円、経常利益が57.1%減の30億7500万円、四半期純利益は47.5%減の37億1200万円となり、増収減益となった。
営業利益とEBITDA、経常利益、純利益がいずれも前年同期を下回る結果となったが、イー・アクセスの代表取締役社長エリック・ガン氏は、業績が下降していたモバイル事業は第1四半期で底を打ったとの見方で、概ね計画通りであるとした。
なお、減益となった要因についてイー・アクセスでは、ブランディング費用や顧客獲得費用、自社販売チャネル強化に伴う人件費など、販促費や営業費用が嵩んだことや、ADSLの固定通信事業の売上げ減などを挙げている。
2012年度の通期の業績予想は、売上高が2500億円、営業利益が260億円、経常利益が150億円、純利益は135億円。イー・アクセスは10月1日にソフトバンクとの経営統合を発表し、年内にも株主交換によりソフトバンクの完全子会社となる見込みだ。株式交換後に通期の業績予想が変更される場合があるとしている。
■契約数、MNP、ARPU、解約率、顧客獲得費用
イー・アクセスでは、2011年12月より電気通信事業者協会(TCA)に毎月の契約者を公開することを取りやめている。毎月の純増・純減という指標が通信事業者の好不調の判断材料になりにくくなったためだ。その代わり、四半期毎の決算説明会では契約数を明らかにする形をとっている。
2012年9月末で、イー・モバイルの契約者数は425万8900件となり、第1四半期(413万7800件)から12万1100件の純増をとなった。単純計算で、月平均で4万400件弱の純増となっている。イー・アクセスでは2013年3月末までに450万契約を獲得したい考え。
なお、MNPの転入出について、第2四半期は4000件強の純減となっている。具体的な数については非公表。
EMOBILE LTEについては、3月15日のサービス開始から累計で52万契約を獲得したという。
【訂正 2012/11/13 11時45分】
記事初出時、「MNPの転入出について、ガン氏は差し引き0件であるとしたが、広報部はこれを否定」と記載しておりましたが、その後、MNPの数について4000件強の純減であることが明らかにされました。訂正いたします。
利用者1人あたりの月間通信収入を意味するはARPUは2710円で、第1四半期と2011年度第4四半期の2680円から30円回復した。通期予想は2800円。
毎月の解約率は、第1四半期の1.45%から8ポイント上昇し、第2四半期は1.53%までふくらんだ。イー・アクセスでは解約率が上がった要因について、2年前の音声通信契約者向けのキャンペーンの影響としており、2年明けのユーザーの解約が増えたと説明している。
この音声キャンペーンを考慮しない場合、解約率は1.32%になるという。ただし、第1四半期の音声解約者を抜いたデータは公表されておらず、単純比較はできない。解約率の通期予想は1.6%。
このほか、第2四半期の顧客獲得費用は1万3000円で、前年同期の1万6000円より3000円下がっている。2012年度第1四半期と比較しても2000円の減少。通期予想は1万6000円となる。
■イー・モバイルのブランドは存続
イー・アクセスは10月1日、ソフトバンクと経営統合すると発表した。イー・アクセスの1株に対して、ソフトバンク株20.09の比率で株式交換が行われる予定。イー・アクセス株の最終売買日は12月25日のクリスマスで、翌26日にイー・アクセスの上場が廃止される予定だ。
上場廃止まで残すところあと数十日となったイー・アクセス。2003年10月に東証マザーズに上場して以来、およそ9年の年月を経た。ガン氏は、「毎年いろいろな発表をしてきたが、毎回来てもらいありがとう。(ソフトバンクとの経営統合は)うまくいくと思っている。引き続きサポートしてほしい」と、証券アナリストや報道関係者らに語った。
株主交換後は、イー・アクセス側から3名、ソフトバンク側から2名の役員を出す形で新生イー・アクセスが動き出す。イー・モバイルのブランドは当面継続する模様で、ソフトバンクグループとなったウィルコムのように、それぞれの強みを活かしながらブランド展開される見込みだ。
■ソフトバンク網との相互利用
ガン氏は、ソフトバンクとの経営統合のメリットについて説明する中で、イー・アクセスが利用する1.7GHz帯と、ソフトバンクの2.1GHz帯や900MHz帯が相互利用できる点をアピールした。
両社の通信回線は、相互にホールセール(卸売り)する形で提供される。日本通信などが展開する独自にサービス展開が可能なMVNO型ではなく、バックエンドの回線も含め各事業者のインフラを使う。
買収はソフトバンク側に有利に働くだけでなく、イー・アクセス側で2.1GHz帯や900MHz帯が使えるメリットもある。また、通信インフラの共同調達や、端末調達面で有利に働くことも考えられる。執行役員副社長の阿部基成氏は説明会後の囲み取材の中で、「これまで振り向いてくれなかったところも扉を開けてくれるかもしれない」と語っていた。
■春モデルからソフトバンク網に対応
春登場予定の新モデル |
イー・アクセスでは12日、2013年3月発売予定のEMOBILE LTE対応スマートフォンの開発を明らかにした。詳細は伏せられており、一部の仕様とメーカー(Huawei)が明らかにされた。
発表リリースにはない情報としては、この春モデルは、イー・モバイルの1.7GHz帯だけでなく、2.1GHz帯もサポートしているという。端末そのものは、LTEの「UE Category4」に対応しており、理論値ながら下り150Mbps対応となるが、発売時点でEMOBILE LTEの通信速度がそこまで拡張されることはないようだ。2013年3月の発売時点では、イー・アクセスのLTE網など、既存のイー・モバイル網に対応した形で提供される見込み。
ソフトバンクモバイルとの相互ホールセールは、2013年3月~4月頃に提供される予定で、現在ネットワークの検証作業などを進めているところという。
今回イー・アクセスの阿部氏は、既存のイー・モバイル端末において、ソフトバンクモバイル網が利用できるかどうかについて、「2GHz対応だとしても、おそらく難しいだろう」と語った。ソフトバンクと相互乗り入れ可能な端末は、12日に発表された春モデルからとなる模様だ。
このほかEMOBILE LTEのエリアについては、年度末までに人口カバー率70%に拡大する計画。社長のガン氏は早期に80%まで拡げると話した。
■1.7GHz帯の追加割当獲得は「計画通り」
なお、イー・アクセスの中期戦略では、1.7GHz帯の追加割り当てについて、積極的に獲得を狙っていくとされている。しかし、総務省会議では、ソフトバンクとの経営統合により、周波数の公平な割り当てに懸念が示されているという。
また、当初ソフトバンクの完全子会社になると発表されたが、その後、ソフトバンクの代表取締役社長が孫正義氏が、一旦完全子会社とした後、資本の割合を下げるオプションも検討していると語った。
見解を問われたエリック・ガン氏は、「この後どうなるかはソフトバンクの話」とした上で、イー・アクセスとしては、当初計画通り、1.7GHz帯の追加割当を獲得していく方針が示された。
2012/11/12 21:23