今週のケータイ Watchの読み方 (2012年5月18日)


ドコモとKDDIの新製品発表会の共通点


 

 5月15日にKDDIが、翌16日にはNTTドコモが夏モデルの発表会を開催した。機種数は違うものの、両社とも、先端層に向けたハイスペックな端末から普及モデルまでバリエーションを確保している印象だ。一方、発表会のプレゼンテーションではサービスの説明に時間が割かれるなど、スペック一辺倒のアピールから脱却したい意図がより鮮明に打ち出された。

 KDDIは、1月に発表し順調なスタートを切ったという「auスマートパス」など、一連のスマートパスポート構想を拡大。従来のアプリに加えて、音楽、動画という2大コンテンツを投入する。マルチデバイスでの利用を基本とする構想もそのままで、様子見になっているタブレットの展開も東芝製の1機種を加えて体裁は整えている。

 夏モデルの端末ラインナップについては、厳選した機種を揃えたという印象で、ハイエンドモデルの数が比較的少ない点は、残念に感じるユーザーがいるかもしれない。一方、LTEサービスの開始時期を当初の12月から前倒しするという方針が改めて示されており、11月、あるいは10月中のサービスインも考えられる。夏モデルのラインナップが厳選された背景には、現時点でチップセットの供給が不足気味であるという状況に加えて、LTEの準備のため、と考えることもできるかもしれない。

 通信方式の上では、CDMA陣営として、W-CDMA陣営と袂を分かってきたKDDIだが、LTEでの“合流”は大きな転換点となる。LTEのエリア展開の早さをすでにアピールし始めていることからも、気合の入ったスタートダッシュが期待されるところだ。

 

 NTTドコモは、いち早くLTE(Xi)を提供していることもあり、夏モデルの端末ラインナップはLTE対応端末を含め多岐にわたった。先に発表会を開催したKDDI同様、ドコモもサービスのアピールに余念がなく、スペック競争からの脱却は山田社長自らのコメントでも示されている。

 今後特に力を入れていくというクラウドサービスは、王道的なコンテンツの展開に先駆けて、「しゃべってコンシェル」に代表されるリアルタイム性の強いサービスを揃えている点が興味深い。一口にクラウドといっても、“倉庫”としての利用から“頭脳”としての活用までさまざま。LTEは通信速度に注目が集まりがちだが、低遅延という特徴も備えており、これをより活かせるのが、翻訳や通訳といったクラウドを“頭脳”として使う、リアルタイム性の強いサービスということになるだろう。


エンターテイメントの視聴スタイルを変えたい~au夏モデル発表会

ドコモ山田社長、「スペックではなく使い方で選べるスマホに」

 


ドコモ山田社長が退任


 

 ドコモの現社長、山田隆持氏について、5月11日に退任が発表され、現常務の加藤薫氏が新社長に就任する予定となった。

 山田氏は、それまでのドコモの社長像を覆す“喋れる社長”として、前線で奮闘した。端末紹介の際には、使用感などについて自らの言葉を添えて紹介したほか、質疑応答、決算発表などテクニカルな話題から財務に至るまで基本的にすべて対応した。取材する側にとっても「頼もしい社長」というイメージで、新しいドコモの在り方と変革の推進を、文字通り体現した人物となった。

 山田氏は、全国1社体制への移行といった社内の大事に加え、スマートフォンへの移行という市場の変化と要請、そして東日本大震災という災害への対応と、流れの速いIT・通信業界の中でも激動の時代を、力強く歩み切った。最後の檜舞台となった夏モデルの発表会では、別室での囲み取材が終わると、集まった報道陣から自然と拍手が送られた。

 任期の晩年には通信障害が増加し、良くも悪くも対応に注目が集まった。ただ、トラフィック増加への対策をはじめとする通信品質の確保は、ドコモだけでなく世界中の通信キャリアが直面、あるいはこれから直面する大きな課題だ。6000万のユーザーを抱え、最先端のサービスを提供するドコモは、必然的にそうした課題に世界で最初に直面することになる。日本においては通信業界に限ったことではないが、前例に乏しい先端市場で課題を解決していく姿勢は、今後さらに求められることだろう。

 稀代のビジョナリーであるソフトバンクの孫正義社長をはじめ、自らを「オタク」と称するKDDIの田中孝司社長も、商品ラインナップに積極的に関わり、プレゼンテーションではトップ自らの言葉でアピールする現代的なスタイル。“現場派”と言われるドコモ・加藤新社長の手腕に注目が集まる。


ドコモ山田社長が退任、新社長は加藤薫常務に

 

(太田 亮三)

2012/5/18 12:10