次世代デジタルラジオの進捗状況を紹介する説明会


 全国のラジオ事業者などが加盟し、VHFローバンドと呼ばれる周波数帯での携帯端末向けマルチメディア放送開始を目指す団体、VHF-LOW帯マルチメディア放送推進協議会(VL-P)は16日、最新状況を紹介する説明会を開催した。

携帯向けマルチメディア放送とは

 地上デジタル放送の本格移行により、アナログテレビで利用していた周波数帯が空くことになる。総務省では、携帯電話などで受信できる新たな放送サービスを「携帯端末向けマルチメディア放送」として、2012年7月以降、導入できるよう現在準備を進めている。

 空く予定の周波数帯のうち、730~770MHz幅は携帯電話などの通信サービス向け、715~725MHzはITS(高度道路交通システム)向けとなる一方、207.5~222MHzの14.5MHz幅と90~108MHzの18MHz幅は、携帯向けマルチメディア放送に利用される予定。このうち、207.5~222MHzは「VHFハイバンド(VHF-HIGH)」と呼ばれ、90~108MHzは「VHFローバンド(VHF-LOW)」と呼ばれる。

 「VHFハイバンド」は、ISDB-Tmm方式とMediaFLO方式が利用でき、今後参入希望を募って事業者が1つに絞られる見込みだ。

携帯向けマルチメディア放送では、放送としては初めて、認可制が導入される番組を提供するソフト事業者と、放送設備を運用するハード事業者が分かれる
技術としては3方式ISDB-TmmとMediaFLOに関する技術条件

ローバンドは先送り

開設指針案

 一方、VHFローバンドについては、3月上旬までパブリックコメントを受け付けていた開設指針案に含まれていない。VL-Pでは、総務省の放送政策課にその考えを尋ねたところ、ローバンド参入を希望する事業者の多くがラジオ放送事業者であることから、アナログ放送についても議論する必要があるほか、「内藤副大臣肝いりの『ラジオと地域メディアの今後に関する研究会』が開催中で今夏報告があがる見込み」(VL-P担当者)といった点が影響し、VHFローバンドでの利用方法を提示する必要があるのではないか、といった点から含まれなかったとした。

 VHFローバンドに関する話は含まれていないが、同案へのパブリックコメントとして、VL-Pでは2つの意見を提出した。1つは、VHFローバンドの利用が含まれなかった理由と今後のスケジュールを問うもの。もう1つが、周波数利用方式の観点からVHFハイバンドに導入される技術は1つの方式が望ましく、ワンセグやVHFハイバンド/ローバンド放送を安価な端末で受信できるよう、親和性を図った方式が望ましいとしたもの。1点目は、意見というよりも質問で、放送政策課からも「質問を受けているわけではない」と言われながらも、VL-Pとしては出さざるを得ない立場ということで、送ることにしたという。2点目のうち「親和性」という点については、MediaFLO側はISDB-Tsb対応チップの開発はたやすいと聞いていること、ISDB-Tmmとは類似の技術であることといったことから、どちらの方式であっても良く、技術的な要件を求めているのではなく、開設指針案に含まれていないローバンドを含めた環境作りを要望するもの、という意味だという。

 このほか説明会では、電波シミュレーションの結果やVL-P会員から寄せられたサービスイメージなどについて説明が行われた。電波シミュレーションについては、全国を7つのブロックに分けて、各地で同じ帯域幅を利用するといった前提に基づいており、ガードインターバル(電波が遅れて届くことでの干渉への対策手段)を126μsecにした場合、252μsecにした場合と2パターンが提示された。サービス内容に関して、携帯端末などでの利用されることを想定し、有料放送が成り立つのかどうか、権利処理をどうするのかといった課題がまとめられたほか、限定受信方式(CAS)に関して今後検討が続けられることなどが紹介された。

電波シミュレーションの結果集約したサービスイメージ

 

(関口 聖)

2010/3/16 18:38