EMAが2009年度上期の認定状況を説明、東京都への意見も解説


 モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)は、2009年度上期(2009年4月~9月)における認定サイトの状況を紹介する説明会を開催した。

 EMAは、2007年暮れ~2008年前半にかけて、青少年の携帯電話向けコンテンツ利用動向について議論が高まったことを受け、当局による公的な権力による規制ではなく、民間主導で携帯コンテンツの健全化をはかるべく、2008年4月に設立された団体。SNSなどコミュニティサイトについて一定の基準による審査を行っている。通常、フィルタリングサービスのユーザーはコミュニティサイトへアクセスできないが、EMAの認定を受けたサイトにはアクセスできる。

 今回発表されたのは、2009年度上期における運用管理体制の状況。2009年9月末時点で認定を受けたサイトは36サイト。このうち認定取り消しは2サイト、認定終了は1サイトになる。認定サイトの総会員数は述べ6926万7572人、1日あたりの投稿数は3812万1925件(全サイトの1カ月あたりの投稿数から算出)となった。前期(2009年3月末)時点と比べ、認定サイトは12、ユーザー数は約2089万人、投稿数は約829万件増えたことになる。このほかサイト内で不適切な投稿などをチェックするサイトパトロールに携わる人員は計1128名(担当者893名、主任202名、最高責任者33名)となった。

認定サイトの規模サイトパトロール人員も増加

 不適切な投稿への対応数(1日あたり)については、強制退会が2890件、一時利用停止・その他が5629件、削除投稿が3万21件、注意・警告が5233件となった。前期と比べ、一時利用停止・その他という対応が他の手法より増加率が高くなっており、この点についてEMAでは「サイトの健全化のためには、運営側だけでなく、ユーザー同士が自発的に認識していくことが望ましい。ユーザーと運営側が共同で環境を整えていくという意味では、いきなり強制退会、というのではなく一時停止、という段階を踏んだペナルティは、今後も増えていくのが良い傾向ではないか」としている。

 このほか、啓発・教育活動については、EMA提供のコンテンツ「ケータイ・インターネットの歩き方」がバージョン2となり、現在バージョン3の策定が進められている。コンテンツ閲覧数は、約132万5000回(認定制度開始からでは累計約203万回)に達した。大手SNSのページビュー(PV)などと比べると少ない数値に思えるが、EMAでは「現実に6000万ユーザーを対象にした啓発プログラムを実行するのは困難。また強制的なプログラムではなく自発的に閲覧するものといった要因がある。ただ、よく利用する人と初めて利用する人に対する啓発プログラムは分けていく必要があるだろう。ワンクリック詐欺のような課題はきちんと情報が伝達されれば社会問題にならないが、携帯電話に収録されている個人情報の扱い方、メールでどうやり取りするか、といった部分は家庭や学校など、地域での取り組みが必要」と指摘し、EMAの取り組みだけではなく、保護者や青少年、教育機関、行政、店舗などが連携して取り組んでいく必要性をあらためて説明した。

不適切な投稿への対応件数啓発プログラムの閲覧数

 

東京都青少協への意見

 会見後半は、東京都青少年問題協議会が発表した答申素案に対して、EMAが提出した意見についての解説が行われた。

 東京都青少年問題協議会では、11月26日に第28期委員に対する諮問に対する答申素案をとりまとめ、12月10日まで意見を募集していた。答申素案は携帯電話フィルタリングサービスと児童ポルノに関する対策がまとめられており、今回EMAではフィルタリングサービスに関する部分について意見を述べている。EMAでは「青少年問題協議会とEMAは目指す方向はほぼ同じ。ただ、今回の案は事実誤認に基づく内容や、根拠がない形での文言が含まれており、補足したいと思い、意見を出すことにした」としている。

 答申案は今後、都条例のベースになると見られ、フィルタリング部分の項目を見ると、青少年ユーザーは原則的にフィルタリングを解除できないようにし、解除の申し出があったとしてもそれを受け入れる理由を限定し、簡単に解除できない制度を取り入れることや、フィルタリングの水準に関して条例への規定を盛り込んだり、第三者機関へ要請などを行ったりするよう提言している。

 EMAでは、同案に含まれる文言のうち、事実と異なる記述を具体的に指摘したほか、一部の文言について「誤解を招くような表現がある」「前提となる事実を誤認している」などとして、文言を修正するよう求めている。

 今後の展開についてEMAでは「東京都は各所から寄せられた意見をとりまとめ、あらためて発表するようだ。それを待って、今後必要な情報を提供したい」とする。なお、他の自治体では、埼玉県が東京都と同様の取り組みを行っているとのことで、インターネットユーザー協会(MIAU)が意見書を提出している。

 



(関口 聖)

2009/12/16 16:52