マイクロソフト、「Windows phone」発表会を開催
マイクロソフトは、スマートフォン向けのOS「Windows Mobile 6.5」搭載の新端末が各社から発表されたことを受け、11月12日に都内で記者向けに戦略説明会を開催した。特徴的な機能やユーザーインターフェースが解説されたほか、コンテンツストアの「Marketplace」に参加する各社も出席し発表や展示を行った。
マイクロソフトはWindows Mobile 6.5の提供と時期を同じくして、Windows Mobileに関連した製品を「Windows phone」と呼称しブランド戦略を開始しており、Windows Mobile 6.5に限らず、従来のWindows Mobile端末も含めて「Windows phone」というひとつのプラットフォームとして訴求を行っている。
■「コンテンツの楽しさが重要」
マイクロソフト代表執行役副社長の堂山昌司氏 |
登壇したマイクロソフト代表執行役副社長の堂山昌司氏は、携帯電話全体の出荷台数が減る中でも、スマートフォンの出荷台数は伸びているとし、「2009年はグローバルで約2億台のスマートフォンが出荷されるだろう。2012年には、3億5000万台に近づく」と、今後も市場が拡大していくという見方を示した。
堂山氏はマイクロソフトのビジョンとして、パソコン、モバイル端末、テレビの“3つのスクリーン(画面)”をクラウドサービスがつなぐという図を示すとともに、今回解説されるモバイル端末における「Windows phone」の特徴として、多種多様な端末が登場すること、ゲームなどアプリが充実することなどを挙げ、3つのスクリーンが連動し、グローバルに展開できるビジネスモデルを提供していくとした。また同氏は、「今回のWindows Mobile 6.5をきっかけに、コンシューマーユーザーにもWindows Mobileを楽しんでいただきたい」と語り、ビジネス向けに加えてコンシューマー向けにも注力していく姿勢を示した。
3つのスクリーンとクラウド |
堂山氏は「OSはあくまで技術。展開できるコンテンツの楽しさが重要で、Windows Mobile端末でしか楽しめない、そういったエコシステムを大事にしている」とパートナーとともに展開していく姿勢を強調。一方で、「権利も大事で、創造のサイクルを壊さないことが重要。誰かだけがもうかるのではなく、コンテンツを作った人がもうかるように、(技術とコンテンツの)両輪を大事にしている」とし、権利処理に配慮しながら発展させていく点も特徴に挙げた。
プレゼンテーションの中では、集英社と幅広く連携していく方針も発表され、Marketplaceで人気コミック「DRAGON BALL」の無料体験版が12月に配信されることも明らかにされた。Marketplaceを利用することで、世界市場での同時展開も可能になっている。集英社からは常務取締役の鳥嶋和彦氏が登壇し、「子供向けのコンテンツは、大人の事情に左右される。どうやったらこれを無くせるか考えてきた」とこれまでの考えをふり返るとともに、「漫画を世界で同時に楽しめるようにしたいと思った時、1社では難しいが、夢を共感してもらい、著作権に配慮してもらって、という先の答えが、マイクロソフトとの提携だった」と提携に至る経緯を語った。
■My Phoneの同期・SNSアップロードで新たなユーザーシナリオ
マイクロソフト モバイルコミュニケーション本部 本部長の越川慎司氏 |
Windows Mobile 6.5と関連したサービスの詳細は、マイクロソフト モバイルコミュニケーション本部 本部長の越川慎司氏から説明された。越川氏は冒頭、「エンドユーザーにとって、Windows Mobile 6.1であるか、6.5であるかはあまり関係がない。Windows phoneではコンシューマーユーザーに楽しんでもらえるようなものを提供する」と語り、コンシューマーユーザー向けでは「Windows phone」として訴求していく姿勢を明らかにした。
一方で、佐川急便で2万4000台ものWindows Mobile 6.5搭載端末が採用された事例を紹介し、「引き続きビジネス向けにも力は入れる」と強調した。また、Windows Mobileの開発部隊が日本国内に移り、日本のユーザーの声も積極的に採り入れながら開発を行っていることも明らかにした。
「Windows phone」でビジネスもプライベートもカバー |
プライベートでの利用におけるWindows Mobile 6.5の特徴としては、「使いやすさ」という面で、アイコンの大型化やタッチでのスクロール操作など、タッチ操作を中心にした改善点を解説し、T-01Aでデモを行いながら「サクサク動く」軽快な操作性をアピールした。搭載されるブラウザ「Internet Explorer Mobile」にも触れ、Flashを使用したMSNのWindows 7特集ページが見られる様子などが紹介された。
越川氏が「非常に重要」というクラウドサービスについては、「我々のクラウドサービスをもっとも実現しやすいのがモバイル端末」として、「My Phone」を紹介した。同氏は、写真や連絡先の自動的なバックアップや同期だけでなく、それらを利用してWebサイトからすぐに共有できる設定にしたり、SNS上に投稿したりできる機能をデモを交えて解説。これらの同期・アップロードという流れを「新たなユーザーシナリオのひとつになる」と語り、単なるバックアップにとどまらず積極的に活用できるサービスとして解説した。
■MarketplaceはWindows Mobile 6.xで展開
「Windows Marketplace for Mobile」(Marketplace)については、Windows Mobile 6.5搭載端末が登場する12月上旬からサービスが提供されるとし、端末上からだけでなく、パソコン用の専用Webサイトで管理・購入が行える仕組みも紹介。越川氏は「どういうもの(アプリ)が出てくるのかが重要。国内だけでなく海外にも展開でき、パートナーとガッチリ手を組んでいく」とパートナー各社と協力して提供していく姿勢を示した。
なお、会場にいたマイクロソフト モバイルコミュニケーション本部 シニアプロダクトマネージャーの伊藤哲志氏に取材したところ、アプリの購入については、Windows Live IDに登録したクレジットカードで決済を行う仕組みで、初めて購入したアプリは24時間以内であれば登録を取り消し、返金を受けることが可能という。返金時の手数料はマイクロソフトが負担する。同じアプリの場合、2回目の購入では、購入・登録を取り消しても返金は受けられない。返金処理は端末からではなくMarketplaceのWebサイトで行う。
すべてのアプリについて、1回の購入で、異なる5つの端末までインストールできる権利が付属しており、これらはMarketplace上で管理される。端末からアプリをアンインストールすると、インストールできる権利が復帰する仕組みで、例えば1つのゲームアプリを購入し、自分が持つ2つの端末にインストールしていた場合、残り3つの端末までインストールできることになるが、1つをアンインストールすると、残り4つの端末までインストールできるようになる。前述の返金処理を行うと、これら5つのインストール権利をすべて失う。
また、Marketplaceを端末上で利用するためのクライアントアプリは、Windows Mobile 6.0およびWindows Mobile 6.1向けにも、12月をめどに提供される予定。マイクロソフトからダウンロードの形で提供される見込みで、同アプリをインストールすればWindows Mobile 6.0/6.1搭載の端末でもMarketplaceを利用できるようになる。
なお、Marketplaceのクライアントアプリは、端末のOSやタッチパネルの有無などを判別しており、仕様により利用できないアプリはリストに表れない仕組み。国別の展開については、アプリ登録者が提供したい国を選択する仕組みで、国別に登録審査が必要になる。
マイクロソフトの越川氏は質疑応答の中で、先行するiPhoneにおけるApp Store、Android端末におけるAndroidマーケットとのアプリの数の差を問われ、「数を追求することは考えていない」と回答。「我々の戦略として、著作権、(アプリの)挙動を含めて、良質なモノを選んでいく。しかし、創造のサイクルを止めるようなことはしない。Marketplaceへの登録には年間99ドルが必要で、完全に自由ではない。一定の品質を保ちながら、数ではなく質を目指す」と語り、難しいかじ取りが求められるアプリの審査・配信体制における同社の姿勢を示した。
このほか会場にはMarketplaceに参加を表明したコンテンツプロバイダーが出席しており、それぞれアプリやソリューションを紹介していた。
会場に展示された最新の「Windows phone」ラインナップ | 登壇したコンテンツプロバイダ各社 |
■ウィルコムの「HYBRID W-ZERO3」も
2009/11/12 19:56