携帯向けプラットフォーム「LiMo」、中立性などをアピール
9日、Linuxベースの携帯電話向けソフトウェアプラットフォームを提供する団体「LiMo Foundation(リモ・ファウンデーション)」の記者会見が都内で開催された。チェアパーソンを務めるNTTドコモ執行役員 プロダクト部長の永田清人氏や、エグゼクティブディレクターのモーガン・ギリス氏から、LiMoの特徴や現状が紹介された。
■LiMo設立の経緯
LiMo Foundationは、2007年1月、米モトローラ、NEC、NTTドコモ、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、韓サムスン電子、英Vodafone Groupの6社によって設立された団体。現在、ボードメンバーの設立メンバーからはMotorolaは脱退しており、Orangeが参画している。
Linuxベースの携帯向けプラットフォームの開発、提供を行っており、今年5月には第2版(R2)がリリースされ、そのR2を採用したサムスン製携帯電話がVodafone向けモデルとして、先週発売されたばかりという。
LiMoの概要 | 2年前の設立から現在までの経緯 |
ギリス氏 |
LiMoを取り巻く環境と、特徴的な要素を紹介したギリス氏は、「現在の携帯電話市場は、グーグルやアップルのような新規参入があり、新たにノキアがサービスプロバイダーとしての展開を強め、競争が激化している。日本や韓国のように発展した市場を除き、多くの国の市場では、このような競争は、イノベーションを与える役割を果たし、健全なことだ」と指摘する。
ギリス氏は、競争相手として、アップルやRIM(Research In Motion)などが提供するプラットフォームを「垂直統合型の“ベンダー固有のアプリケーションプラットフォーム”」、Windows MobileやAndroid、Symbianを「複数メーカーが利用できるが中立とは言えない“1社に依存した端末プラットフォーム”」と定義し、LiMoについては「ガバナンスなどが公開された“どの会社にも依存しない端末プラットフォーム”」とする。これは、他社の在り方を否定するのではなく、LiMoはLiMoとして、他のプラットフォームとは異なる在り方を目指し、キャリアやメーカーにとっては、より自由に付加価値を創造できることを目指した結果という。
■中立性をアピール
各プラットフォームを大きく3つに分類 |
ギリス氏は、各プラットフォームの違いをキャリア、メーカーの視点で説明した。たとえば、AppleのiPhoneやRIMのBlackBerryは、多様性がなく、キャリア自身はデータを流すだけの“土管”でしかない。Windows MobileやAndroidは、メーカーやキャリアの立ち位置、あるいはユーザーとの関わり方が複雑になり、誰が何を提供するのか見えづらかったり、グーグル自身が市場のプレイヤーでありメーカーやソフトウェアベンダーにとっては競合相手になり得る。
これに対し、LiMoはキャリアやメーカーにとっては、基本的な機能を共有しつつ、メーカー独自の機能を搭載したり、キャリア独自のアプリ市場を設けるといったことを実現しやすい。ギリス氏は、この特徴を「LiMoは独立したプラットフォームで、中立だ」と説明し、2007年の設立当初から目指してきたものとする。ただし、最新のトレンドや機能、サービスをキャッチアップすることを考えると、他のプラットフォームよりもスピードで劣る可能性は否定できない。会見終了後、永田氏に尋ねると「スピード感と、端末のバラエティさのどちらを取るか、という考え方になる。市場には、どちらの考え方もあっていい。ただ、キャリアにとっては、アップル型/Android型と比べ、LiMo型のほうが注力しがいがある」と回答した。
通信事業者側の視点 | メーカー側の視点 |
このほか、ギリス氏は日本市場について「日本は5年前からプラットフォーム作りに取り組んでおり、だからこそ、これだけ大きなモバイルインターネットの利用規模となった。これは他の地域にとっては良いモデルとなっている」とコメントしていた。
ドコモの永田氏。今回はLiMoのチェアパーソンとして説明を行った |
アップルのApp StoreやAndroidのAndroid Marketのようなアプリケーション市場について、ギリス氏は、「アップルなどLiMoでは、少し考え方が違う。各メーカーが自分たちのストアを立ち上げるとユーザーにとっては選択肢が広がる一方、現在はアプリの数が多すぎる面もあり、統廃合が行われるだろう。そのあたりをきちんとできる企業が生き残るのではないか」と述べた。
日本における位置付けについて、永田氏は「これまで日本メーカー製の端末が多く登場し、LiMoの発展にも貢献してもらっている。グローバル市場へ打って出ることにも繋がる。まだ明らかにできないが、Vodafoneに続くオペレーターの話もたくさんある」と語り、国内だけではなく海外市場への展開に繋げられる存在とした。
■サムスン製のLiMo端末
サムスン製の「H1」 |
Vodafoneがスタートした新サービス「Vodafone 360」向けには、サムスン製端末の「Vodafone 360 Samsung H1」「Vodafone 360 Samsung M1」が発表されている。会場には、このうち、「H1」が用意されており、ユーザーインターフェイスなどを体験できるようになっていた。着信履歴や発信履歴は、画面奥から手前へ流れるように表示できるほか、メイン画面では、TwitterやFacebookといったWebサービスに対応したアプリケーションのショートカットアイコンや、気象情報を表示するウィジェットが並ぶ。メイン画面を表示した状態で、ディスプレイに触れて左右へ指を動かせば、画面が切り替わる。
ギリス氏は「日本や韓国では、サービスが中心的な役割を果たす(サービスセントリック)ことが深く理解されているが、世界的にはこれから移ろうという動きが出てきている。LiMoが今回、Vodafone 360に選ばれたのは、彼ら独自のブランド力とサービスを実装できるからだ」と指摘したほか、永田氏も「サムスンがLiMoを採用したのは非常に大きなトピック」と評価した。現在、LiMoのプラットフォームを採用した携帯電話は、H1とM1を含め、45機種を数えるが、そのうち34機種はNECとパナソニック モバイルコミュニケーションが手掛けたNTTドコモ向け端末。そういった意味でも、サムスン製端末が登場し、世界最大のオペレーターであるVodafoneで採用されたことは、LiMoにとって大きな一歩と言えそうだ。
背面 | 左側面 |
右側面 | 底面 |
発着信履歴 | Facebookアプリ |
メイン画面 | アプリのショートカットとウィジェットが同じ画面内で表示 |
2009/11/9 17:05