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「青少年ネット環境整備法」改正で何が変わる? SIMフリースマホもフィルタリング

 2017年の通常国会が終盤を迎えた6月16日、議員からの提案により「青少年インターネット環境整備法」の改正が可決された。改正のポイントは主に3つ。2018年6月までに施行されると見られている。スマートフォンを中心とするモバイル業界にも大きな影響があると思われるため、改正のポイントについて見ていくことにしよう。

利用率が上がらないフィルタリングサービス

 「青少年インターネット環境整備法」(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律)は、もともと2008年に成立したもので、18歳未満の青少年であればフィルタリングサービスの適用が義務付けられたものだった。

フィルタリングサービスの利用率

 ところがそのフィルタリングサービスの利用率は、なかなか拡がっていない。むしろ減少しているという状況だ。それもスマートフォンのほうが利用率は低い。一方、コミュニティサイト(出会い系サイト除く)をきっかけに犯罪被害にあった児童の数は増加傾向にある。つまりスマートフォンの広がりにあわせるかのように、フィルタリングの利用が減り、犯罪に遭う子供が増えている、と見なせる状況だ。

コミュニティサイトをきっかけに犯罪に遭う子供の数は増えている

 フィルタリングサービスが伸び悩む要因はいくつかある。店頭での説明が面倒に思われてしまうこと、あるいは設定の方法が煩雑になっていることなどだ。たとえば子供が使いたいサービスがフィルタリング対象であっても、設定次第でホワイトリスト(アクセスできる対象)に加える機能があるのに、その操作手順がわからず、それであればフィルタリングそのものを解除するという保護者もいる。

 また、スマートフォンが高校生に広く普及したものの、利用したいアプリがフィルタリング対象になってしまうことがあった。つまり利用実態とフィルタリングがミスマッチしていたわけだ。

 こうした状況は、2016年度、総務省で青少年のネット利用に関するタスクフォースで議論されていた。そこでの議論を踏まえて実施された対策としては、フィルタリング設定に「高校生プラス」という新しいモードを追加して、TwitterやInstagramなどへアクセスできるようにしたこと。大手キャリアが今春、フィルタリングサービスを「あんしんフィルター」という名前に統一したことも、その一環だ。

18歳未満かどうか確認、メーカーやOSにも影響へ

 最初にご紹介した「青少年インターネット環境整備法」の改正もまた、議員立法という形で、フィルタリングサービスの利用率をさらにアップさせるための取り組みのひとつ。

 主な改正ポイントは3つ。「利用者が18歳未満かどうか確認することが義務付けられた」「フィルタリングサービスを保護者か青少年に説明することが義務付けられた」「フィルタリングサービスを利用しやすいような環境を、端末メーカーに義務付けつつ、OS側にも努力義務を課した」というものだ。1つ目と2つ目は、店頭での取り組みで、これまでもやってきたことだが、あらためて「義務なのできっちりやりましょう」という形になる。

法改正の概要(衆議院での資料より)

 3つ目は「フィルタリング有効化措置、容易化措置」とも言われる。たとえばAndroidは、まったく素の状態だとフィルタリングサービスに関する機能はない。アプリなどをインストールするとしても、わかりやすい導線もない。ただし大手キャリアで扱われる機種は、ネットワーク側でフィルタリングサービスを用意したり、関連アプリがプリセットされているし、MVNOでもフィルタリングサービスをオプション、あるいは無料サービスとして提供していることでカバーされていると言える。こうした面で、Androidスマートフォンメーカーは、今後、対応する必要が出てくるだろう。

 一方、iOSは、ペアレンタルコントロールとして、利用できるアプリを制限することはできる。ただ、たとえばWebブラウザでフィルタリングを適用するには、「Safariをオフにしつつ、子供向けブラウザをインストールする」という手順が必要だ。これはある程度のITリテラシーがあればすぐできることだが、決してわかりやすい仕組みとも言えない。法改正を受け、iOSを提供するアップルには、何らかの改善が求められるだろう。

MVNOでの対応、どうなる?

 ここで気になるのは、MVNOのSIMロックフリー端末を販売する場面だ。既にMVNO事業者のなかには、フィルタリングサービスを提供しているところは少なくないが、一般的にMVNOのユーザーは回線と端末をバラバラに購入する可能性があるため、「使用者の確認義務や有効化がどこまで効果的にできるかが課題」(IIJのMVNO事業部の佐々木太志氏)ということになる。

 現在はまだ法改正が決まったばかりだが、今後、総務省から新たな条文に関する解説が提示される見込みで、それを踏まえて、実際の店舗やWeb販売時の手順に対応していくことになりそう。

 もっとも、MVNOの規模によっては、このあたりをきちんと対応できるところもあれば、その準備が間に合わない、あるいは準備をしない事業者すら存在する可能性がある。保護者としては子供でも安心して利用できるMVNOかどうかはきちんと知っておきたい。ちなみに、本誌では今年3月、子供のスマホ利用とフィルタリングサービスに関するまとめを報じているので、こちらもご覧いただきたい(※関連記事)

 総務省消費者行政第一課では、現在、内閣府や経産省の関係部署と協議を進めているとのことで、条文の解説は2017年度内に登場する可能性がある。法改正自体は、先述したように、フィルタリングによってネット上の有害な情報から子供を守る取り組みの一環に過ぎない。総務省のみならず大手キャリアやMVNO、端末メーカー、そしてOSを提供する事業者など、より手軽かつ安心して利用できる環境作りに期待しつつ、本誌では継続してそうした取り組みをお伝えしていきたい。