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SIMカード無しで通信、TCLに「Soft SIM」を供給するKnowRoaming
2016年10月27日 21:42
“格安スマホ”や“格安SIM”の市場拡大に伴い、日本においても「SIMカード」の存在が広く一般にも知られるようになった。しかし、「コロコロと規格が変わる上、海外旅行の際に通信費を節約しようとすると、現地でSIMカードを調達し、挿し変えて使う必要があるなど、決してユーザビリティが高いとは言えない」。そう語るのはカナダ KnowRoaming社のCOO、Dominik Swierad氏だ。
同氏は、10月26日~28日にかけて千葉県・幕張メッセで開催されている「第6回 Web&デジタル マーケティング EXPO【秋】」に出展するために来日し、カナダパビリオン内でこうしたSIMカードの不便さを解消しようとして開発した「Soft SIM Platform」をデモしてくれた。
KnowRoamingは、SIMカードの上に重ねて貼るステッカータイプのローミング用SIMや主に法人向けのモバイルルーターなどの事業を手掛けてきたが、2016年2月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congressにあわせて、alcatelブランドを抱えるTCL Communicationに前述のSoft SIM Platformを供給すると発表し、注目を集めることになった。
Soft SIMは、その名の通りSIMカードの機能を丸々ソフトウェア(ミドルウェア)として実現したソリューションだ。単にそれだけではSIMカード以前の“ROM書き”同様の役割しか果たさないが、同社がステッカーSIMで提供している世界200カ国対応のローミングサービスがバンドルされる点が特徴となる。
これにより、海外旅行に出かけた際には現地SIMを調達し、端末に装着しなくとも、画面内のスイッチを切り替えるだけで容易かつ一般的な国際ローミング料金よりも安価に通信が可能となる。Swierad氏は、「Wi-Fiと同じ感覚でモバイルネットワークを利用できる」と表現する。
そう言いながらSwierad氏は、TCL Communicationが中国で販売しているハイエンドのAndroidスマートフォン「TCL 950」の画面を見せてくれた。「Virtual SIM: Enabled on SIM Slot 1」という記述とともに3Gでローミング接続されている様子が確認できるが、次の瞬間、同氏は側面のSIMカードスロットにピンを挿し、物理的なSIMカードが装着されていないことを示した。
ちなみに、現状では同社のローミングネットワークは3Gまでの対応となっており、日本をはじめLTEの快適さに慣れた地域の人々にとっては少し物足りなく感じるかもしれない。
日本ではalcatelの「IDOL 4」が11月に発売される予定だが、国内で販売される端末にも同様の機能が実装されるかどうかについては、同氏は「それはメーカー(TCL)が判断することで、我々からは何も言えない」と述べるに止まった。
それでも、「TCL以外に2社からSoft SIMに対応した端末が近々登場する」(Swierad氏)とのこと。さらに同社では、スマートフォン以外にもターゲットを拡大し、自動車や各種センサーなど、各種IoTデバイスへの実装も目指すという。
【お詫びと訂正】
初出時、Dominik Swierad氏の役職をCEOと記載しておりましたが、正しくはCOOです。お詫びして訂正いたします。