インタビュー
1億DLのフィットネスアプリ「Runtastic」に聞く
1億DLのフィットネスアプリ「Runtastic」に聞く
ドコモと組んだ理由、これからの進む道
(2014/12/11 06:00)
手がけるアプリの合計ダウンロード数は1億、全世界のユーザーは4500万人。東京はグローバルでトップ3に入り、ランニングとともにロードバイクの人気が高い――フィットネスアプリ「Runtastic」は、そのジャンルで最大手とされる。
NTTドコモが12月10日より提供する新サービス「Rutastic for docomo」は、オーストリアのリンツに拠点を置くRuntastic(ランタスティック)社のアプリをベースにしている。
共同創設者で、CEOのフローリアン・グシュヴァントナー氏と、同じく共同創設者でCTOのクリスティアン・カール氏に、「Runtastic」のルーツ、社内でのユニークな取り組み、そして今後について聞いた。
ルーツは学生時代のプロジェクト
グシュヴァントナー氏
Runtasticは、5年前にスタートした企業です。複数のアプリを15カ国語で展開し、ユーザーはハブとなるポータルサイトで一括して運動した記録を管理できます。
最初はランニングアプリだけでしたが、その後、ロードバイクやウォーキングのアプリをリリースしました。僕らの本社があるオーストリアでは、冬になると外でランニングする、という環境ではありませんから、室内でできる筋トレ用アプリを提供しました。これからはトラッキングだけではなく、ユーザーが目標をどう達成できるかサポートする方向です。
カール氏
Runtasticは我々2人を含めて、4人でスタートしました。そのうち2人が学生のときに始めたトラッキングのプロジェクトに取り組んでいました。そのプロジェクトではセーリングボートやラリーカートがトラッキングの対象だったのです。ところが、それでは市場が小さい。マネタイズ(収益化)のためにランニングはどうか、時期としてもiPhoneのようなスマートフォンが登場してきたころにあたり、そこでランニングアプリを開発、提供することになったのです。
グシュヴァントナー氏
ちなみに、セーリングボートやラリーカートのアプリは今も手がけていません(笑)。
シンプルさのためのマルチアプリ、国による違いも
グシュヴァントナー氏
フィットネスアプリの使い勝手、ユーザビリティはとにかくシンプルであることが重要だと考えています。スクワットなら、スクワット専用アプリにする。そうすることで、誰もが使える、計測できるというシンプルな形になります。そしてソーシャルメディアを通じて、運動の結果をシェアする機能も欠かせません。やはり何か自分にとって良いことをした、というときには周囲に知らせたくなります。そうした流れがスムーズになることが重要です。
国によって利用傾向に違いはあります。たとえば中国は屋内向けのトレーニングアプリが飛び抜けて人気です。大気汚染が影響しているのでしょうか。日本は、ランニングと同じくロードバイクのアプリが人気ですね。
トップであり続ける秘訣
グシュヴァントナー氏
マルチアプリ展開、ローカライズといった部分は、競合他社もキャッチアップできるのではないか、と思われるかもしれません。
我々は常に“最先端”を提供しようとしています。たとえばiOS、Androidで何らかの新機能が追加されれば、いち早くキャッチアップします。形だけならマルチアプリ展開は簡単ですが、それを有効に機能させるのは難しい。アプリを用意するだけではなく、計測データを集約できるハブの機能が肝なのです。
それから、毎月1回、「Day Of New Idea」、略して“DONI(ドニ)”という取り組みを行っています。その日だけ、スタッフは、通常行っている業務をしてはいけない、というルールで、部署を超えてチームを作り、情報を集めたりブレストをしたりして、その日の最後には1チーム3分間のプレゼンテーションを行うのです。そこから出てきたアイデアで、実際に開発、導入したものもありますよ(と言って、自身の名刺でARを楽しめる様子を披露)。
ウェアラブルで計測するデータを
グシュヴァントナー氏
米国では2年ほど前から、ウェアラブルデバイスが人気になってきていますが、欧州や日本は最近そうなってきたようです。
ただ、ウェアラブルデバイスを身に着けて、睡眠効率や歩数を計測する、という行為よりも、そのデータを持つ意味とはいったいどういうことなのか。そのあたりを突き詰めていけば可能性は拡がります。そうなると、体に関するデータを記録する専用デバイス自体に意味は無くなり、腕時計やスマートフォンに組み込まれていくことになるのではないでしょうか。
今回、ドコモさんとの協業で用意される“hitoeウェア”(導電性高分子を繊維にコーティングして心拍を計測できる)もそうで、一般的なウェアラブルデバイスとは全く異なった形状です。ウェアラブルデバイスに左右されるよりも、活用方法の展開というべきでしょうか。
ドコモと協業した理由
グシュヴァントナー氏
ドコモさんは、日本における携帯電話業界のリーディングカンパニーであり、彼らの事業規模が今回の提携の決め手になったことは確かです。今年の5月に初めて、ドコモ側から訪問を受けて顔会わせしましたが、その後、とてもスピーディでした。多くのオファーをいただきますが、一般的に大手企業の手続きは時間がかかるものでしょう。今回は本当に早かった。8月には合意していましたから。
この規模での取り組みは、他国でも例がなく、当社としても初めてのことです。まずはプロジェクトの成功に注力し、他国での取り組みは今後の課題です。ここで言う“成功”とは、ユーザーが増えることはもちろん、ハードウェアの提供、アプリの提供など、そういったところまでコラボレーションが充実していけるかどうか、コラボレーションの成否としての指標になるでしょう。ハードウェアの拡大について、その内容はまったく話し合っておらず、今後については言及できませんが、hitoeウェアではじまり、当社が欧州でリリースしているものを対象にするのか、あるいは全く異なるものにするのか、話し合いの結果によって変わってくるでしょう。
(編集部注:ドコモ側は今回の提携で、Runtasticの技術力、シンプルなUIを高く評価したのだという)
Runtasticの未来
グシュヴァントナー氏
ユーザーにとって、たとえば1日の歩数がどれくらい効果があることなのか、解釈の仕方がわからない、といったことはあるかもしれません。体格や年齢、性別といった要素ではなく、運動量を目安に、「これくらい動いたら、こうなるよ」とベンチマークを提供するのは1つのアイデアです。ただ、情報を提供しすぎることは混乱を招きかねません。
ユーザーがRuntasticを利用することで、運動のデータが記録されるわけですが、そのデータを第三者に提供したり、第三者を経由して何かを行う、といったことは考えていません。ただ、同じような属性のユーザーのデータを比較して、「こういうキャラクターのグループで、こういう運動をこなすと効果的な結果が得られた」といった客観的なデータが獲得できれば、「同じような属性」「同じような目標」を達成したい人に向けて、「○○すると成功する確率が高いですよ」とアドバイスすることで活用したい。自分のデータを外部のサービスで活用したい、という場合は、ユーザー自身のオプトイン(同意)をもとに対応していきたいと思います。この取り組みは2015年から進めていきます。