【WIRELESS JAPAN 2011】
KDDI雨宮氏、スマートフォン時代のコンテンツ戦略を語る


KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏

 「WIRELESS JAPAN 2011」の26日の講演には、KDDI 新規事業統括本部 新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏が登壇し、「KDDIのコンテンツ戦略~Smart Phoneでのビジネス拡大にむけて~」と題した講演を行った。

 雨宮氏はまず、フィーチャーフォンの販売台数の落ち込みを補う形でスマートフォン市場が拡大している様子を紹介し、MM総研のデータを引用しながら、「2010年度の予測は675万台だったが実績は855万台だった。2015年度には5000万台以上と予測されているが、もう少し早まる可能性はある」として、予想を超える早さでスマートフォンの拡大が進んでいくとの見方を示す。また、同社の「IS05」が女性比率55%というデータを紹介し、「普及層に広がりつつある」とユーザー層が拡大しているとし、全体として「トレンドはスマートフォンにきている」とまとめる。

 KDDIの全体的な戦略は、田中孝司社長から度々語られているように、販売の中心はスマートフォンに移行し、日本定番機能搭載モデル、グローバルモデル、WiMAX対応モデルという、ユーザー層に応じたラインナップを揃えていくというもの。雨宮氏は2011年夏のスマートフォンのラインナップを紹介しながら、Facebookとのコラボレーションによる機能・サービスや、「3M戦略」などを解説した。

ユーザー層の拡大

コンテンツのクラウド化が進む

 本題となるKDDIのコンテンツ戦略ではまず、オープンプラットフォームの可能性に言及する。Androidを採用することで、グローバル市場も視野に入れた上でさまざまなデバイスに向けてビジネス展開が可能になるとし、「Androidでは、携帯だけでなく、セットトップボックス(STB)、家電などさまざまなプレーヤーが入ってくる。マルチベンダーとなることでマーケットも大きくなる可能性を秘めている」とし、KDDIとしてもAndroid搭載のSTBを開発中で、さまざまなデバイスを投入する方針を示した。

 スマートフォン時代では「コンテンツのクラウド化」も進むとし、ストリーミングを使ったクラウド型ビジネスモデルが拡大すると予測する。同氏はその要因として、「ネットワークの性能が格段に向上している」ことを挙げ、違法コピー対策など権利を守ってサービスを提供する上でも「クラウドは理想」とする。

オープンプラットフォームの可能性コンテンツのクラウド化が進む

 ビジネスモデルの面では、「キャリアのポータルがすべてかというと、必ずしもそうではない」と語り、課金プラットフォームと強固に結びついたキャリアのポータルサイト経由でコンテンツを利用するといった、これまでのビジネスモデルは「大きく変化する」と語る。これは、スマートフォンでは、ユーザーがコンテンツを利用する際の「接点が格段に変わってくる」ためで、従来型のモデルでは限界があるという。また、端末もスマートフォンに加えてタブレット型、あるいはテレビと接続するタイプなど、機能・画面サイズも異なる端末が(同一のプラットフォームを採用して)出てくると予測し、「こういう端末を含めて、サービスを考えていくのが重要になる」とした。

 KDDIではこれらの展開を踏まえた上で、Androidマーケットでも利用できる「auかんたん決済」を提供。IS03のユーザーは8割以上がau one IDを取得するなど、キャリアの課金プラットフォームがユーザーに支持されている様子を紹介した。また、課金方法は今後も拡充する予定で、月額課金のほか、期間限定・回数制限・制限なしの3種類から選択できる「機能課金」を、5月末までに提供を開始するとした。

コンテンツ利用におけるキャリアポータルの役割は変わり、ビジネスモデルも変化課金方法は月額課金や「機能課金」も導入予定

 同氏は、LISMOにおいても、前述のようにクラウド化したサービスとして「LISMO unlimited」や、LISMO WAVEにおける「Musicclips」、「LISMO Book Store」「GREEソーシャルを活用したアプリマーケット」などの新サービスや取り組みを紹介し、これらをユーザーとの接点を強化する施策として推進していく方針を示した。

 ソーシャルマーケティングでは、端末のアドレス帳を利用する新たなアプリを開発する方針で、リアルとソーシャルをつなぐプラットフォームとして発展させるという。加えて、Androidアプリを配信するau one MarketではAPIを公開し、外部アプリからコメントや説明、評価といった情報を参照できるようになる予定。広告配信プラットフォームも「mediba ad Network Smartphone」を新たに開始した様子を紹介した。

 同氏はまた、「Android マーケットは初心者がいきなり入っていくのはハードルが高い。日本人向けなのがau one Marketで、さらに進めていきたい」と語り、Android市場の活性化策として、アプリ掲載数や競争力のあるアプリの獲得を積極的に進めていく考え。加えて、Android分野に特化した投資不ファンドを設立したことや、開発支援策として「KDDI∞Labo」を開始したことも合わせて紹介した。

LISMOもクラウド化アドレス帳を利用しリアル・ソーシャルを融合
au one MarketのAPIも公開Android分野に特化した投資ファンドなども設立

 

大震災とコンテンツの利用傾向

大震災が示唆したコンテンツ進化の方向性

 雨宮氏からは最後に、東日本大震災の影響についても語られた。同氏は、震災発生時に「モバイルインターネットが力を発揮した」とし、「特にメール・通話だけでなく、SNSによるコミュニケーションが使われた」と傾向を分析。さらに、今回の震災と、阪神大震災と当時の携帯電話の利用傾向を比較。「現在は1人1台の時代になっており、大規模な停電は想定外だったが、そういう時も役に立った。今後は、クラウドが拡大することで、データの消失を避けるために、ユーザー自ら必要なコンテンツをデジタル化し、クラウド化することも、もっと増えるだろう」と予測する。さらに、ワンセグや緊急地震速報など日本独自の機能が再評価されたこともあわせて示したほか、「ライフラインとしての増強に各社ともに力を入れ、さらに進化していくだろう」と、インフラとしての基本に立ち返って増強が図られるとの見方も示した。


 




(太田 亮三)

2011/5/26 17:38